初代「ロードスター」のレストアサービスは、マツダの情熱とこだわりの塊だった!

新旧ロードスターのオーナーやスポーツカー好きならば、山本さんのお名前を聞いて、ピンときた方も多いはず。そう、山本さんは現行のND型ロードスターの生みの親であり、開発主査を務められた“あの山本さん”なのです。

山本修弘(やまもと・のぶひろ) 1955年生まれ。’73年、東洋工業(現マツダ)入社。ロータリーエンジンの開発を長年にわたり担当。「サバンナ RX-7」やル・マン24時間耐久レース用エンジンの開発を手掛け、’96年に2世代目ロードスター開発のアシスタントマネージャーに。3世代目ロードスターでは車両開発副主査を、現行の4世代目では開発主査を歴任。現在は、マツダの商品本部でロードスターアンバサダーを務める。

現行モデルの開発を指揮された山本さんですが、実はNDの誕生と初代NAのレストアサービスには、深い関わりがあるのだとか。

「NDの開発時には“モノの価値だけでなく、そのクルマと過ごす時間を楽しんでもらう”ことを念頭に置きました。そして、新車の販売だけでなく、お客さまとの絆を大事にしたいとも考えたのです。

私がロードスターに携わったのは、2世代目のNB型からですが、NAの誕生時、ロードスターが今のような特別な存在になるとは誰も予想できませんでした。オーナーの皆さんたちが各地でファンクラブを立ち上げ、NAを大切にしてくれています。各地のファンミーティングに足を運ぶと、『一生大切に乗り続けます!』といったうれしい言葉を掛けられると同時に、『オリジナルのNAに乗ってみたい』、『自身のNAをオリジナルに戻したい』といった声を聞くことが増えていました。一方で『部品が手に入らなくなったからクラブでつくります』というお話を伺うことも…。そうしたファンの皆さんの気持ちを大事にしたい、との思いから、実は6年前にNDの開発がスタートした際、NAのレストアサービスに関する事業計画も検討し始めたのです」

とはいえ自動車メーカーであるマツダが、レストアを請け負うのは簡単なことではありません。そこで山本さんは、ファンクラブやロードスターの専門店などにも協力を仰ぎ、レストアを希望するオーナーはどのくらいいるのか、どのようなパーツやサービスが望まれているのかなど、入念なヒアリングを行ったそうです。

「企業としてレストアサービスをスタートさせる以上、採算度外視ということはありえません。何より、そういったスタンスで臨んで、一旦、赤字になってしまったら、サービス自体が中止になりかねませんからね。そうならないために、調査や検討を重ねたのです。

そして、プロジェクトが本格的に前進し始めたのは、3年前のこと。商品本部にレストアチームができました。その後、2016年には経営陣の承認を得て、プランも具体的になっていきました。サービスの大きな柱は“マツダがお客さまの初代ロードスターを預かりレストアすること”、そして“NA用パーツの再供給”です。そのために、すべてのパーツの在庫状況や状態を調べたり、部品のサプライヤーさんに相談したりしました」

ビジネスであると聞くと、ドライな印象を受けるかもしれません。でも、ND開発の最前線に立ち、多くのファンが抱くロードスターへの愛情を知った山本さんは、その思いに末永く応えるために、ビジネスとしてサービスを成功させなければならないと実感。「赤字でもいいや」ではなく、長くロードスターを愛してくれるオーナーたちに、高い志を持ち、質の高いサービスを提供したいと決心されたのです。

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