マツダCX-3がディーゼルだけを選んだ理由:岡崎五朗の眼

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CX-3の価格は、237万6000円〜。これに対し「ちょっと高すぎでは?」という声がある。確かに、ほぼ同サイズの日産「ジューク」は、173万7720円〜購入可能。細かく見ていけば、装備内容やエンジンは異なるが、同ジャンル・同クラスの国産車どうしでこれほどの価格差が付くのは珍しい。なぜなら、ライバル車の価格を横目で見つつ、割高感が出ないよう装備や価格を決めていく、というのが、従来の国産車の売り方だったからだ。

その点、CX-3の価格を見ると、マツダはジュークをライバルとは見ていないように思える。もしライバル視していたら、少なくとも200万円を切るグレードを設定していただろう。ディーゼルエンジンよりコストの安いガソリンエンジンを搭載してエンジン代で20万円、加えて、装備の簡略化で20万円、と、合計40万円安いグレードを設定できたはずだ。にもかかわらず、マツダはCX-3の全グレードに、ディーゼルエンジンを搭載してきた。

これが何を意味するのかといえば、「価格勝負、台数勝負はもうしない」という、マツダの宣言にほかならない。無理して安く作って台数をさばくよりも、自社製品の魅力を理解してくれる少数の人に、適正な価格で買ってもらう。これが、2012年2月にデビューした「CX-5」以降、マツダが選択した新しいビジネスモデルだ。

もちろん、このビジネスモデルを成功させるには、他を圧倒する商品力が不可欠。そのためマツダは“鼓動デザイン”や“SKYACTIV”テクノロジーといった新機軸を掲げ、商品力に磨きをかけてきた。中でも、最近のマツダ車で最大の強みとなっているのが、クリーンディーゼルエンジンなのだ。

薄利多売からの脱却…。CX-3にディーゼルエンジンしか搭載されていない理由は、そこにある。

文/岡崎五朗(おかざき・ごろう)
モータージャーナリスト。青山学院大学在学中から執筆活動を開始。『GoodsPress』など多くの雑誌に寄稿するほか、テレビやWebサイトでも活躍。合理的なクルマの評価で絶大な支持を集める一方、クルマに対するエモーショナルなスタンスで幅広いファン層を獲得している。

(写真/&GP編集部)

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