ヨンヒャクが復権!? ”中免”で乗れる排気量のバイクが元気になっている理由

■バイクの基本を思い出させてくれるホンダ「GB350/S」

▲「GB350」

400ccクラス復権の大きな力となっているのがホンダの「GB350/S」。2021年に発売され、2022年には販売台数の首位に躍り出ました。スタンダードの「GB350」が56万1000円、スポーティバージョンの「GB350 S」が60万5000円とリーズナブルな価格も支持を集める理由のひとつです。

▲「GB350 S」

パワーユニットは348ccの空冷単気筒。ピークパワーは20PSと、数値的には決してパワフルではありませんが、乗ってみるとトルクが豊かで非力さを感じるシーンはありません。空冷シングルらしい鼓動を感じさせつつも、不快な振動が皆無なのは現代のエンジンらしいところです。クラシカルなイメージながら、ABSやトラクションコントロール、アシスト&スリッパークラッチなど、現代的な装備も与えられています。

実際に走らせてみて、胸が熱くなるのは単気筒らしい排気音。歯切れの良いパルス感がヘルメット越しにも耳に届き、アクセルを開けるのが楽しくなります。フロント19インチ、リア18インチホイールによるクラシカルなハンドリングの「GB350」も魅力的ですが、リアが17インチのラジアルタイヤとなる「GB350 S」はワインディングも楽しくなるハンドリング。どちらも、バイクの基本を思い出させてくれるマシンです。

 

■400ccらしい余裕を感じさせるカワサキの「エリミネーター」

▲「エリミネーター」

400ccクラスの注目度をさらに高めたのが、今年4月に発売されたカワサキの「エリミネーター」。ロー&ロングなシルエットのクルーザーですが、エンジンは同社のスポーツモデル「Ninja 400」と共通の水冷2気筒で48PSを発揮。フレームも同モデルから継承した鋼管トレリスタイプで、高い運動性能を誇ります。

▲「エリミネーターSE」

スタンダードモデルの価格は75万9000円で、ビキニカウルやフォークブーツなどに加えて、量産市販車では世界初となる前後カメラのドライブレコーダーを標準装備した「エリミネーターSE」は85万8000円。735mmと低めのシート高で、体格を問わず安心感のある足付き性を実現しているのも人気のポイントでしょう。

実際に乗ってみると、気負わずに乗れる扱いやすさを持っている一方、スポーツモデルと同じパワートレインを搭載しているだけあって動力性能も十分。ツーリングでの高速巡航でも余裕のあるパワーがあるのに加えて、車体もしっかりしているのでワインディングで積極的にライディングを楽しめる懐の深さを持っています。クルーザータイプでは、もっと排気量の大きなマシンもありますが、国内のツーリングであればベストバランスではないかと思えるバランスの良さも魅力です。

 

■クラス最強のハイパフォーマンスを発揮するカワサキ「Ninja ZX-4R」

▲「Ninja ZX-4R SE」

400ccクラス復権の決定打となりそうなのが、カワサキが7月に発売した「Ninja ZX-4R SE」と「Ninja ZX-4RR KRT EDITION」。このクラスでは久々となる4気筒エンジンを搭載したスーパースポーツマシンで、その昔“レーサーレプリカ”と呼ばれていた時代を知る人には心を踊らせるモデルといえるでしょう。

▲「Ninja ZX-4RR KRT EDITION」

新開発の4気筒エンジンの最高出力は77PSで、ラムエア加圧時には80PSを発揮。このクラスでは最強といえるパワーユニットで、かつての400ccレーサーレプリカと比較しても圧倒的な動力性能を誇ります。トラクションコントロールやクイックシフターといった現代的な装備も備え価格は「Ninja ZX-4R SE」が112万2000円、ハイグレードなリアショックを備えた「Ninja ZX-4RR KRT EDITION」は115万5000円となっています。

車体の基本設計は先駆けて発売された250cc4気筒の「Ninja ZX-25R」と共通のため、コンパクトでスーパースポーツとしては足付き性も良好。600ccや1000ccクラスのスーパースポーツと比較すると、気負わずに乗れる作りとなっています。それでいて、インライン4のエキゾーストノートと、このクラスとしては圧倒的なハイパワーエンジンのおかげで動力性能は十分以上。実際に試乗しましたが、大型のスポーツマシンを凌ぐほどのパフォーマンスに驚かされました。

*  *  *

スタンダードな空冷シングルマシンから、ハイパフォーマンスなスーパースポーツまで、選択肢が急速に充実している400ccクラス。日本国内の免許制度から生まれたカテゴリーではありますが、実際に近年のマシンに乗ってみると、公道走行を前提にするとベストバランスと思える完成度。今後のさらなる盛り上がりに期待したいところです。

<取材・文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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