ジムニー祭り絶賛開催中に、あえてパジェロミニってのはいかが?

■日常での使い勝手に配慮しオンロードでの性能をアップ

パジェロミニのデビューは1994年12月13日。パリ・ダカールラリーでも活躍したパジェロの性能を軽自動車に落とし込んだモデルとして登場しました。開発にはパリダカで表彰台にも上がった篠塚建次郎氏が深く関わっています。

パジェロミニはクロカンスタイルの軽自動車ですが、目指す方向はジムニーとは異なりました。ジムニーが山道などでの性能を高めて林業従事者やハンターなどから支持されたのに対し、パジェロミニは「アウトドアからシティユースまで、あらゆる生活シーンで楽しめるオールラウンダー」として登場たのです。

このコンセプトは当時の時代背景が影響しています。兄貴分であるパジェロが登場したのは1982年。この後、日本では、好景気に支えられた空前のレジャーブームが沸き起こります。冬は週末になると高速道路がゲレンデに向かうクルマで大渋滞。夏は20代の若者がこぞって海外旅行へと出かけます。

▲RVブームを牽引した初代パジェロ

そして1987年、NHKが連日パリダカの模様を中継。篠塚建次郎氏が3位入賞すると、パジェロをはじめとするクロカン4WDの人気が爆発しました。

しかしバブル崩壊とともに、人々は一気に節約志向に。レジャーも「安近短」が定番となり、ファミリーキャンプなどが流行します。パジェロミニはこのような志向に合わせる形で登場したのです。

ジムニーとパジェロミニの大きな違いは、ボディ構造です。ジムニーが初代から屈強なラダーフレーム構造を受け継いでいるのに対し、パジェロミニは快適性を重視したモノコック構造に。そのため、パジェロミニは雪道や未舗装路などの走行などは得意とするものの、ジムニーのように山の中に入っていって道なき道を進むというシーンまでは想定して開発されていません。

一方で兄貴分のパジェロを彷彿させる背面タイヤやレバー式の副変速機を装備。イージーセレクト4WDは走行中でも2WDと4WDを切り替えられるのがセールスポイントでした。また、パワーウインドウをはじめとする快適装備も充実しています。

実はこの頃、ジムニーも世の中のニーズが変わってきたことにより、オンロードでの快適性を高めることに注力していました。伝統のリーフ式サスペンションからコイル式サスペンションに変更されたのは1995年のことでした。

 

■高級感を高めてジムニーと差別化した最終型

▲写真は2002年9月デビューの03型

1998年10月、軽自動車はボディサイズを拡大して安全性を高めた新規格に。これを機にパジェロミニ、そしてジムニーもフルモデルチェンジを行います。

パジェロミニは丸目から異形の角目に変更(これは1999年にフルモデルチェンジを行うパジェロを先取りしたような雰囲気だった)され、上品な雰囲気が高められます。一方でアプローチアングル44度、デパーチャーアングル47度、ランプブレークオーバーアングル23度と、荒れた路面での走破性を高めたスペックが与えられました。最低地上高は195mmです。

トランスミッションは先代から継承された5MTの他、新開発の電子制御4ATを搭載(先代は3AT)。高速巡航時の静粛性や燃費性能が高められています。また、イージーセレクト4WD搭載車のほかに2WDも設定。「クロカンのスタイルは欲しいけれど乗るのは街中だし…」という人のニーズにもいち早く対応しました。

2003年9月のマイナーチェンジではスポーティグレードのVR-Sを追加。スペアタイヤケースやバンパーエアダムなどで走りの雰囲気を高め、インテリアには専用のレカロシートが奢られました。

2000年代、三菱は人気キャラクターなどとのコラボモデルを積極的に発売していました。有名どころでは阪神タイガースとコラボしたeKシリーズがあります。パジェロミニではスヌーピーとコラボしたスヌーピーエディションを製作。スペアタイヤケース、ホイール、シートなどにスヌーピーのイラストを施し、女性ユーザー獲得を狙います。

2008年9月には2度目のマイナーチェンジでフロントデザインを一層パジェロ寄りに変更します。エクステリアは2トーンカラーを取り入れ、インテリアにはシルバー加飾やメッシュタイプシートなどを採用。ジムニーよりも高級感を高める演出が施されています。

*  *  *

こうやってジムニーとは違う独自路線を進んだパジェロミニですが、販売面では陰りが見え始めます。一番の理由は世の中の低燃費志向。2009年からエコカー減税がスタートし多くの人が減税対象車を選ぶようになりますが、パジェロミニはエコカー減税に対応できなかったのです。

一方のジムニーもエコカー減税対象車ではありませんでしたが、業務需要やオフロード走行を楽しむ人からの需要があったため、安定した販売台数を維持します。

そして2012年3月、パジェロミニの生産終了がアナウンスされたのです。

時代の変化に取り残されたことを考えると不運ですが、新型ジムニーに注目している一般ユーザーの中で「ジムニーは納車待ちがすごいし、少し経つと乗っている人が街にあふれそうだな……」と迷っている人がいたら、パジェロミニを中古車で探すというのもおもしろい選択だと思います。

最終型パジェロミニの中古車は800台近く流通していて、モデル末期となる2010年~2012年式でも平均価格が100万円を切っています。走行4万km前後のものも見つけやすいので、今買ってもまだまだ長く乗れるはず。人とは違うモデルに乗りたいという人は、パジェロミニいかがでしょうか。

 


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(文/高橋 満<ブリッジマン>)

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