【トヨタ カムリ試乗】開発陣のこだわりを実感!走りもデザインも“熱い”秀作セダン

世界累計販売台数1800万台(※2016年12月時点。トヨタ自動車調べ)を超える、トヨタのグローバルミッドサイズセダン「カムリ」がフルモデルチェンジ。2017年1月に開催された北米国際自動車ショーでのお披露目に続き、7月10日に日本デビューを飾りました。

まず注目すべきは、その美しいスタイル。プラットフォームやパワートレーンなど、メカニズムのすべてをゼロからつくり上げることで実現した理屈抜きのカッコ良さ…。“ビューティフルモンスター”をコンセプトワードに掲げる新型カムリが前例のない変革に挑んだことは、躍動感あふれるデザインからもお分かりいただけることでしょう。

そこで、この新型カムリはいかにして誕生したのか、また、開発に当たってはどのような苦労があったのかを、チーフエンジニアの勝又正人さんにうかがいました。そして、カムリのターゲットカスタマーに近い、クルマに一過言持つ40歳代の筆者と『&GP』のスタッフが、実際に新型カムリをドライブしてどのように感じたかについてもご報告したいと思います。

■カッコいいクルマに仕上げるため、すべてをゼロから開発

2016年、北米において40万台弱の販売を記録した先代カムリ。日本では、セダンの人気凋落がささやかれる昨今ですが、累計販売台数からもお分かりのとおり、グローバルな自動車メーカーであるトヨタにとって、カムリは最も成功したモデルのひとつであるのは間違いない事実でしょう。しかし勝又さんは、かねてから「いいクルマだけど、ワクワクしない」という意見に危機感を抱いていたのだそうです。

そして「カムリを変えるためにはなんでもする」という決意が、前例のない変革につながったのだと語ります。

「まずは『カッコいいね!』といっていただけるクルマを目指しました。具体的には、車高が低く、エンジンフードも低く、タイヤがボディの四隅にあるというスタイルですね。従来は、ハードウェアによる要件が厳しく、デザイナーがフリーハンドでカッコいい画を描いても、構造の制約上『アレもダメ』『コレもダメ』となるケースが多くありました。その点、新型カムリは、すべてをゼロから開発できるチャンスを得られたので、デザイナー陣が夢に描いたプロポーションをハードウェアの新規開発で実現することができました。カッコ良くないクルマは売れませんが、他のクルマのマネもしない。とにかく、カムリというアイデンティティを追求しました。例えば、個性的なCピラーのキャラクターラインもデザイナーによるこだわり。あれがないとボリューム感が出てしまい、リヤ回りが重たい印象になってしまいます。今回の新型カムリは、そうしたディテールについても相当に意識しました」(勝又さん)

2016年春、トヨタは製品カテゴリーごとのカンパニー制を導入。開発における意思決定スピードを向上させるなど、早くも成果を挙げています。新型カムリではそれに先駆け、勝又さんは、カムリ関係者を率いて、“チームカムリ”としてデザインや生産といった部署の枠組みを越えて開発に当たったのだそうです。

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筆者近年のトヨタ製セダンというと、万人ウケするデザインのものが主流でしたが、今回のカムリは確かに目を惹くエクステリアだと思いました。

&GPスタッフ従来のカムリとは異なり、しっかりとした個性が感じられますよね。もちろん、何かの模倣ではないカムリだけのデザインということが、ひと目で分かります。何より「セダンを変えなければ!」という意気込みが、デザインからしっかりと伝わってきます。

筆者ミニバンやSUVの販売が多い日本市場では、その個性がひと際輝いていると思います。Cピラーのキャラクターラインやボンネットのプレスラインなど、「キレイだな」、「上手いな」というディテールが少なくない。一方、実車に触れると、デザイナーの意見はしっかり尊重されているけれど、居住性などセダンとしての本質は忘れられていないことが分かりますよね。

■TNGAの採用で“気持ちいい走り”も実現

セダンとしてのユーティリティに妥協することなく、クルマ好きをも納得させるカタチを手に入れた新型カムリ。その原動力となったのは、“TNGA”の採用にあると勝又さんは語ります。TNGAとは“トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー”の略であり、トヨタが取り組むクルマづくりの構造改革です。パワートレーンユニットやプラットフォームなどを一新し、全体最適を考えることで、クルマの基本性能や商品力を飛躍的に向上させることを目指しています。

「カムリは、初の“フルTNGA採用車”です。今回私たちは、デザインはもちろん、燃焼設計をゼロから行った高効率エンジン、新世代ハイブリッドシステム(THS Ⅱ:Toyota Hybrid System Ⅱ)など、すべてにおいてゼロからクルマをつくることができました。ただし、カムリにおける個別最適ではなく、今後の車種にも活かせるよう全体最適の観点も必要でしたので、その分、責任も感じましたね」(勝又さん)

今回のカムリでは、高い熱効率と高出力を両立した新開発の“2.5L ダイナミックフォースエンジン”と、進化を続けるハイブリッドシステムの小型・軽量・高効率化技術を組み合わせることで、優れた動力性能と低燃費を実現しています。

さらに、軽量・高出力化されたリチウムイオン電池と、小型化した冷却システムによって、ハイブリッドバッテリーをリヤシート下に配置することが可能に。これらにより、重量バランスや車両安定性を向上させています。新型カムリは動力性能もドラスティックな変化を遂げているのですが、開発に当たっては低重心化など、パッケージングについて徹底的にこだわったと、勝又さんは振り返ります。

「重心高を下げるに当たっては、既存の設計や部品といった“しがらみ”にとらわれることがなかったので、我々の理想を追求することができました。しかし、重心高を下げるといっても、単に、重い何かを下げればいい、という問題ではありません。すべての部品を低く最適配置しなおすことによって実現したものなのです。これは、幅広い部署の協力があってこそなのですが、“大きな組織”だった従来の開発スタイルでは、部署間の調整に時間が掛かり、実現が困難なこともありました。新型カムリでは、“チームカムリ”としての一体感を醸成するために、早い段階から関係者を巻き込むべく、開発初期の段階でクレイモデルを各部署に披露しました。やはりカッコいいデザインには、人の心を動かすパワーがあるんですよね。各部署の担当者一人ひとりが、このデザインを実現するために『やりましょうよ!』といってくれました。そうやって皆に一体感が生まれたことも、追い風になりました」(勝又さん)

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&GPスタッフ新型カムリの車内に収まって真っ先に感じたのは、先代モデルに比べてドライバーズシートのヒップポイントが低く、後方になったこと。これにより、ドライビングポジションがしっかりとれるようになりましたね。オルガン式のアクセルペダルや、自然な高さやポジションに配置されたシフトノブも含め、運転姿勢がピタリと決まる。これって実は、とても重要なことですし、運転席に収まるだけで『いいクルマだな』って直感的に感じさせてくれます。

筆者リヤシートの居住性についても、しっかりと考えられていますよね。パノラマムーンルーフ(G“レザーパッケージ”、Gにメーカーオプション)の付いた仕様でも、実際のスペースはもちろん、視覚的にもタイトな感じがありません。そして、ラゲージスペースは十分広く、トランクスルー機能も備えています。これは、ハイブリッド用バッテリーの小型化を追求し、搭載位置を工夫した賜物。セダンとしての本質を、しっかり追求していますよね。

&GPスタッフ実際に走らせてみても、ミニバンやSUVにありがちな腰高な印象を感じませんでした。市街地を軽く流すといったようなシーンでも、走る、曲がる、止まるのすべてが実際の車体サイズよりも軽快な印象でしたね。タイヤサイズはグレードによって3種類用意されていますよね。個人的には、Gグレードの17インチタイヤによる軽やかなで快適な乗り心地がいいな、と思いましたが、いかがでしたか?

筆者クルマとしてはごく基本的なことですが、例えば、ステアリングを切ったら、切った分だけしっかりと曲がる。このドライバーの“意のまま”、“自然”という感覚って、本当に大事だと思うんです。スポーティさを意識し過ぎて、過剰な反応を示すようチューニングされたクルマも少なくありませんが、カムリは人の感覚を逆なでしない。だけど、動きはしっかり俊敏。G“レザーパッケージ”では18インチタイヤもしっかりと履きこなしていて、足回りの動きもまだまだ余裕が感じられます。日本車でもここまでできるんだ、と感心しました!

■感性に響くスポーティさと心地良さ

ミドルクラス以上のセダンともなれば、実用性だけでなく、インテリア空間のデザインや質感もまた、多くのユーザーが関心を抱くポイントといえるでしょう。プレミアムセダンにも匹敵する個性をたたせたインテリアですが、その開発に当たっては、スポーティな空間に広がりを持たせるとともに、細部に至るまで質感を追求したそうです。

&GPスタッフS字のラインをモチーフとしたダッシュボードの形状は、写真で見ている時は奇抜な印象を受けましたが、実物を眺め、実際に触れてみると、抑揚が効いていていいな、と思いましたね。そして、金属のようにも、竹のようにも見えるデコレーションパネルの表現も新しい。トレンドを追うのではなく、トレンドを生みだそうとする意気込みが感じられます。

筆者デザインだけでなく、シートをはじめ、インテリア全体の質感も、プレミアムセダンに匹敵するレベルに到達していると思いました。ドアの開閉音、シート生地の感触も、心地いいですね。

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こうした車内では、ドライバーが運転に集中できるようインターフェースにこだわる一方、かつてのミドルクラスセダンとは異なる挑戦も行われたといいます。

「新型カムリは、エクステリア、インテリアともに、数値では表現できない部分にも注力しています。“官能”、つまり心に響く、感性に訴えるといった要素も、このクルマでは大切にしました」(勝又さん)

確かに、新型カムリが最大のテーマとして掲げる“カッコ良さ”は、最高出力や燃費のように数値で表すことはできません。しかし人間の感覚の中には“楽しい”とか“愛おしい”といった表現しかできない感情があるのは、ご存知のとおりです。

「皆さん、気に入ったクルマのことを“愛車”っておっしゃいますよね。人間が作る工業製品で“愛”という言葉が付くモノって、クルマくらいだと思うんです。新型カムリはカッコ良さや気持ち良さなど、お客様にとって機能的な数値を超越した存在、つまり“愛車”であって欲しいと願って開発しました」(勝又さん)

確かに、カムリが誕生した1980年代は、まだまだクルマは“憧れ”の対象でしたし、テクノロジーが劇的な進化を遂げた1990年代のクルマには“夢”がありました。新型カムリにはそんな、数値では表せないクルマならではの“ワクワク”が感じられました。「そろそろセダンもいいな」という人はもちろん、セダンは購入対象じゃないという方も、まずは一度、実車に触れてみることをお勧めします。

<SPECIFICATIONS>
☆G“レザーパッケージ”
(ボディカラーのエモーショナルレッド〈3T7〉はメーカーオプション。オプション装着車)
ボディサイズ:L4885×W1840×H1445mm
車重:1600kg
駆動方式:FF
エンジン:2487cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:178馬力/5700r.p.m.
モーター最高出力:120馬力
エンジン最大トルク:22.5kgf・m/3600〜5200r.p.m.
モーター最大トルク:20.6kgf・m

詳しくはこちら>>トヨタ「カムリ」

 

(文&写真/村田尚之)

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