日産「ノート」と「リーフ」でツーリングに出掛けて分かった電動駆動車の“今”

今後、世界的に普及することが見込まれる電動駆動車。「ウチもそろそろ」と気になっていても、なかなか手を出せずにいる人、案外多いのでは? EV(電気自動車)やハイブリッドカーなど、ひと口に電動駆動車といっても充電の必要性や使い勝手はマチマチなため、どれが自分にとってベターな選択なのか、見分けるのは難しいですよね。

そこで今回、日産自動車の新型車「ノート e-POWER」と、量産EVのパイオニアである「リーフ」に乗って日帰りツーリングへ。道中で感じた2台の個性の違いから、電動駆動車の“今”を考えます。

■進化したe-POWERはエンジンの存在を意識させない

ノート e-POWER X <SPECIFICATIONS>●ボディサイズ:L4045×W1695×H1520mm ●車重:1220kg ●駆動方式:FWD ●エンジン:1198cc 直列3気筒 DOHC ●エンジン最高出力:82馬力/6000回転 ●エンジン最大トルク:10.5kgf-m/4800回転 ●モーター最高出力:116馬力/2900〜1万341回転 ●モーター最大トルク:28.6kgf-m/0〜2900回転 ●価格:218万6800円〜

まずは、2020年11月に登場した新型「ノート e-POWER」で出発します。実はこのモデル、以前ドライブした際に「もっと乗っていたい」と返却するのが惜しく感じられたくらい、ドライブフィールが心地良かったことを覚えています。

そんな新型「ノート」のパワーユニットは、今回のフルモデルチェンジで “e-POWER(イー・パワー)”と呼ばれる日産独自のシステムに一本化されました。モータージャーナリストの岡崎五朗さんは、その理由を次のように解説します。

「e-POWER は2016年の登場以来、累計46万台以上のセールスを記録している人気のパワーユニットで、先代ノートも販売台数の実に75%がe-POWER仕様でした。また、日産自動車はこの先、電動化をさらに推進していく戦略を立てています。そんなことから、新型のパワーユニット構成は思い切ったラインナップとなりました」

* * *

岡崎五朗|青山学院大学 理工学部に在学していた時から執筆活動を開始。鋭い分析力を活かし、多くの雑誌やWebサイトなどで活躍中。テレビ神奈川の自動車情報番組『クルマでいこう!』のMCとしてもお馴染みだ。2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

e-POWERというシステムは、ライバルと同様にエンジンを搭載してはいるものの、それはあくまで発電専用。駆動力は100%、エンジンで発電した電気でモーターを回して発生させます。また新型は、先代のe-POWERから基本構造を踏襲していますが、各部が新設計となり、そのドライブフィールは格段に洗練されています。

「先代は、アクセルペダルを踏むとすぐにエンジンが作動。しかも、エンジン音が結構大きく、100%電動駆動車といいながら、エンジンの存在を意識せずにはいられませんでした。その点、新型ノートに搭載された第2世代のe-POWERは、ボディの遮音を徹底した上に、エンジン自体の静粛性もアップ。加えて、エンジンの作動頻度や、作動した際のエンジン回転数などを抑えることで、クルマ全体で静粛性を高めています」(岡崎さん)

今回のツーリングでも、その効果を体感できました。アクセルペダルを踏み込んでもなかなかエンジンが作動せず、モーターだけで結構、走ってくれます。また、仮に作動してもエンジン音が耳ざわりではないため、街中からワインディング、そして高速道路まで、電動駆動車ならではの優れた静粛性を実感できました。

「気づかなかったかもしれませんが、実は新しいe-POWERは荒れた路面を走っていた際にエンジンを作動させていました。そういう路面を走ると振動が発生しますが、新しいe-POWERは荒れた路面でのタイヤの回る速度差を感知し、エンジン音が目立たない時にこっそりとエンジンを作動させてバッテリーを充電していたのです。そうした制御面での工夫が、優れた静粛性に効いていますね」(岡崎さん)

■「ノート e-POWER」は“マイ・ファーストEV”の最適解

新型「ノート e-POWER」の走りの美点は、静粛性だけにとどまりません。ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだ時の反応の良さや、そこからスーッとスムーズに車速が伸びていく様子はとても爽快です。

「こういう時、エンジンとトランスミッションを組み合わせた従来型のクルマでは、アクセルペダルを踏んでも加速が乗るまでにタイムラグが生じ、もどかしく感じることがあります。その点、モーターは極低回転域から厚い発進トルクを発生するので出足が力強いですし、高速道路での巡航中にアクセルペダルを踏み込んだ際も、反応の遅れなくドライバーの思いどおりにスーッと加速してくれます。また、ブレーキペダルを踏まず、アクセルペダルをオフにしただけで減速力を得られる“ワンペダル走行”も『e-POWER』の新鮮なドライブフィールにつながっています」(岡崎さん)

エンジンの存在を意識させず、静かでスムーズ、かつ力強い走りを満喫できる新型「ノートe-POWER」。充電の必要はなく、エンジン車のようにガソリンを給油し続けるだけで、100%電動駆動車の魅力を余すところなく享受できる点もe-POWERの魅力といえます。

また、エンジンという発電機を搭載することでバッテリー搭載量を抑えることができたため価格が抑えられ、キャビンのゆとりも十分。リアシートの居住性やラゲッジスペースの使い勝手も抜群で、仲間や家族とのちょっとしたレジャードライブなら、これ1台で十分カバーできます。

「『ノート e-POWER』はハイブリッドカーでありながら、“マイ・ファーストEV”の最適解といえる存在です。充電設備を自宅に確保できない人や、長距離移動が多い人にとっては、ベターな選択といえるでしょう」(岡崎さん)

■全国に3万箇所以上もあるEV用の充電スポット

リーフe+ G <SPECIFICATIONS>●ボディサイズ:L4480×W1790×H1545mm ●車重:1680kg ●駆動方式:FWD ●最高出力:218馬力/4600〜5800回転 ●最大トルク:34.7kgf-m/500〜4000回転 ●価格:499万8400円〜

続いて「リーフ」に乗り換えます。こちらはe-POWERとは違ってエンジンを搭載せず、外部から充電した走行用バッテリー内の電気でモーターを回して走るピュアEVです。

走行中、二酸化炭素を一切排出しないピュアEVは、近い将来のカーボンニュートラル実現に向けて欠かせない存在と見られています。そんな先進のエコカーをいち早く量産したのは、何を隠そう日本の日産自動車なのです。

量産EVの草分けとして2010年末に登場した「リーフ」は、すでにグローバル累計販売台数が 50万台を突破。また2021年には、新しいクロスオーバーEV「アリア」が、さらには軽EVのデビューも控えるなど、同社はEVラインナップの拡充に積極的です。

2021年に正式デビューするクロスオーバーEV「アリア」

今回、ツーリングへ駆り出したのは、62kWhのバッテリーを搭載する「リーフ e+(イー・プラス)」。ピュアEVといえば、1回のフル充電当たりの航続距離が気になるところですが、大容量バッテリーのメリットを活かし、カタログ記載の“WLTCモード”で458kmを達成しています。

今回のツーリングは気温が低かった上、エアコンを使ったり、高速道路を多用したりと、ピュアEVには厳しい使用条件。それでもフル充電状態でスタートし、目的地までの往復250kmほどの行程を追加充電なしに走破できました。

「万一、出掛けている際に充電が必要になっても、高速道路のサービスエリアや自治体の各種施設、街の日産ディーラーの多くに充電スポットが用意されています。その数は全国で実に3万箇所以上。初代『リーフ』の発売以降、日産自動車はピュアEVを普及させるため、充電スポットの拡充を政府や自治体、日産ディーラーなどへ積極的に働きかけてきましたが、それが実を結び始めているようです」(岡崎さん)

また「リーフ」は、それら充電スポットの中から、最寄りの施設を車載ナビゲーションや専用アプリ「Nissan Connect」を使って気軽に検索できます。

ユーザーの利便性向上に向けたこうした努力も見逃せません。

■「リーフ」は新しモノ好きの好奇心も満たしてくれる

そんな「リーフ e+」で意外だったのは、思いのほか運転が楽しかったこと。高速道路では直進安定性に優れた重厚な走りを、コーナーが連なるワインディングでは軽快なフットワークを披露し、エンジン車とはひと味違う新鮮な乗り味を楽しめます。

「これは『ノートe-POWER』にも通じる美点ですが、電動駆動車はモーターの特性を活かしてスタートダッシュが得意ですし、高速巡航からの加速もスムーズかつ力強いものがあります。また『リーフe+』は、車体の低い位置に重いバッテリーを搭載しているため低重心で、コーナーでのフットワークも軽快。アクセルペダルの操作のみで加減速をコントロールできる“e-Pedal”も相まって、ドライブを楽しめるクルマに仕上がっています」(岡崎さん)

一般的には、ピュアEVを愛車にするためのハードルはまだまだ高いと見られていますが、航続距離が長く、乗り味もいい「リーフ e+」の実力を知るほどに、ピュアEVが身近な存在に見えてきました。自宅に充電設備を整えられる人なら、ガソリンスタンドへ給油に出掛ける手間を省けますし、停電時には「リーフ」の走行用バッテリーを電源にし、さまざまな家電製品を使用できるなど、万一の災害時にも有効です。加えて、スマホアプリとの連動でより便利かつ快適に使いこなせるようになるなど、新しモノ好きの好奇心も満たしてくれます。

「もし、自宅で夜間電力が割安になるプランを選択していれば、ランニングコストはガソリン車より安くなりますし、オイルや冷却水といった消耗部品も不要。複数台のクルマを所有している人なら、近距離の移動をピュアEVに置き換えることで、クルマの維持費をグッと下げられることでしょう」(岡崎さん)

■自然との一体感を味わえる点も電動駆動車の魅力!?

「ノート e-POWER」と「リーフ e+」という2台の電動駆動車を乗り換えながら、目的地であるオートキャンプ場に到着。大自然の中で飲む淹れ立てのコーヒーは格別です。

モーターだけで駆動する「リーフ e+」、そして、エンジンを止め、モーターだけで走れる“EVモード”をセレクトした「ノート e-POWER」で自然の中を走っていると、これまで当たり前のように存在していたエンジン音が聞こえないこともあり、川のせせらぎや野鳥の鳴き声、風の吹く音などが鮮明に耳へと届きます。

力強い加速や軽快なフットワーク、エンジン車とはひと味違う爽快なドライブフィールなど、「ノート e-POWER」と「リーフ e+」の走りはともに魅力満点。加えて、レジャーシーンにおいて自然との一体感を強く味わえる点も、電動駆動車ならではの美点といえそうです。

>>日産「ノート e-POWER」
>>日産「リーフ」

<取材・文/上村浩紀 撮影/下城英悟 スタイリング/宇田川雄一>

衣装協力…コムフィ アウトドアガーメントのアウター/3万5200円、シャツ/2万8600円(ロストヒルズ)/コロンビアのジャケット/2万2000円、パンツ/1万3750円(コロンビア スポーツウェア ジャパン)
この記事のタイトルとURLをコピーする