【ボルボV40試乗】新パワーユニットT3搭載で、ドイツ御三家と真っ向勝負!

ボルボといえばスウェーデン。ワタシはかの国に対し、忘れられない思い出があります。

その時ワタシは、エステルスンドという町を目指し、レンタカーを走らせていました。スウェーデンの首都ストックホルムから、北へ約600km行ったところにある小さな町です。道路脇には、緑と湖が延々と続きます。風光明媚とは、こういうところをいうのでしょうか。時々、空と湖が淡い水色の中に溶け、地平線がどこだか分からなくなります。

そんな時でした。「やっちまったな…」と気づいたのは。レンタカーに積めなかったスーツケースをレンタカー屋に預けてきました。よく預かってくれたな、と今でも感心するものの、問題はレンタカーの返却と荷物のピックアップです。エステルスンドからストックホルムに戻る時間帯は、真夜中になる予定。しかし返却は、24時間OKの店舗なのです。駐車場にクルマを停め、ポストに鍵を入れておくだけ。返却完了です。そういうシステムなので、夜間は店舗クローズド。となると、荷物を引き取れないではないですか。翌朝は朝イチの飛行機に乗るので、再訪のチャンスはありません。

エステルスンドに着き、レンタカー屋に電話しました。空港近くのホテルまで、スーツケースを届けておいてもらえないか、と。答えはあっさりOK。実際、そのホテルにチェックインすると、ちゃんと預けてありましたよ。うれしかったですね。閉店後、レンタカー屋のオヤジが自分のクルマで届けてくれたそうです。

そんな逸話に限らず、旅の道中で感じたのは、スウェーデン人はとても親切であるということ。福祉先進国などといわれますが、そもそも人に尽くす風土があり、文化があり、それがベースにあるから福祉の制度が整っていったのでは? と思っています。あくまで個人の意見ですが。

社会の仕組みは人ありき、なのですね。

そして、クルマも人ありき。現在、中国企業の傘下にあるボルボですが、紛れもなくスウェーデンの企業であり、ブランドです。エステルスンドには、世界最北端に位置するといわれるサーキットがあります。サーキットとはいっても、空港の滑走路を利用したもの。週末になると、組み立て式の観客席が配置されてサーキットに早変わり。ところどころに赤と白の縁石もあるので、完全に滑走路、というわけではありません。

そこを訪れるオーディエンスが持っていたのは、青地に黄色のスウェーデン国旗。青は湖を、黄色は金の十字を表すのだそうです。そのフラッグを振って応援するのは“ポールスターレーシング”。ボルボのワークスチームです。完全に俺たちのボルボ。スウェーデン国民にとってボルボは今も疑う余地のない国民車である、と肌で感じました。

スウェーデンの国民が育んできた国民車だからこそ、乗員にも歩行者にもとびっきり優しい=安全性が高いのは、当然のことなのかもしれません。彼らは交通事故で大切な人を亡くしてしまう社会的、心的損失を、ずっと大きなものとして捉えている可能性があります。

日本では、事実上のエントリーモデルとなるV40にしても、上級モデルと同様、安全装備を全グレードに標準装備しています。例えば“歩行者・サイクリスト検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキ・システム”。これは、ミリ波レーダーとデジタルカメラ、そして赤外線レーダーを使う先進のシステムです。ほかにも、衝突時に歩行者を保護する“歩行者エアバッグ”を装備するなど、「2020年までに新しいボルボ車が関わる交通事故による死亡者や重傷者をゼロにする」という目標を掲げるだけのことはあります。とにかく本気なのです。そういった本気が共感を呼ぶのか、最近になって知人ふたりが、V40を購入しました。

さて本題に戻りましょう。
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ボルボの新世代のユニットDrive-Eには、1.5リッターと2.0リッター、ふたつの排気量が用意されているのですが、1.5リッターエンジンのシリンダー径は2.0リッターと同じ。ピストンのストロークを短くすることで排気量を小さくしています。

他のブランドでは、ターボチャージャーなどを変えることで、同じ2.0リッターでもパフォーマンスの違うユニットをラインナップしているのですが、ボルボの場合ユニークなのは、ディーゼルエンジンともパーツを共用していること。ザックリいって、ガソリンとディーゼルでさえ、4分の3くらいは共有部品や類似部品を使っているというのです。このような手法、かつてなかったわけでもないのですが、圧縮比の高いディーゼルと、ガソリンエンジンのコンポーネントを大幅に共用するというのは、簡単なことではありません。ちょっと新鮮です。

新しくボルボV40に追加されたのは、Drive-Eのうちの“T3”と呼ばれる1.5リッターターボエンジン。走らせると、1480kgと決して軽くはないボディを、グイグイ引っ張ってくれます。

「お、1.5リッターで152馬力もある!」

我々の世代にとって“リッター当たり100馬力”というのは、スペックを見ただけでも興奮するくらい、高性能エンジンか否かの分水嶺。

V40 T3の場合、スペックにとどまらず、実際の機動力にも反映されています。これ、本当に1.5リッターなの? というのが正直なところです。ターボチャージャーで過給していますが、ターボが働き始めるまでモッサリしているといったこともありません。むしろターボの存在は、良い意味で希薄。排気量の大きな自然吸気エンジンに近いフィーリングになっています。

ヨーロッパではエンジン排気量のダウンサイジングが進んでいて、排気量が小さくなったのに、以前と変わらない、もしくはよりパワフルになっていることも珍しくありません。Drive-Eでこんなことが可能になったのには、いくつかの技術的な裏付けがあります。

ひとつは、高圧の燃料噴射。200気圧もの圧力でシリンダー内に直接燃料を噴き込みます。しかも、1回の燃焼のために1回噴く、のではなく、必要に応じて3回も噴いているのです。実に細かい制御をしているんですね。もうひとつは、そういった細かい制御を可能にする、頭のいいエンジンマネージメントモジュールを搭載できるようになったこと。今や家庭のパソコンが、昔のスーパーコンピュータ級になったように、クルマのコンピュータも高性能化しているのです。V40のそれは、世界トップクラスの“400MIPS”を実現。1MIPSとは、1秒間に100万回の命令実行を意味するものです。

高出力化を可能にすると同時に、ウォーターポンプを電動にするといった工夫に加え、“ECO+”といった低燃費走行モードも手伝って、燃費も改善しています。V40 T3は、メーカー公表値でガソリン1リッター当たり、16.5kmとなっています。

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さて、スマートにパワフルになったV40 T3ですが、ハンドリングのフィーリングが良かったことも付け加えさせてください。こちらも、新開発となる6速ATを搭載。従来の6速ATより約16%も軽量化されているのだとか。V40 T3は、フロントにエンジンとトランスミッションを組み合わせて搭載するFF車。そのトランスミッションが軽くなったこともあって、ステアリング操作に対するクルマの反応は、とても素直でした。高速道路ではドッシリと落ち着きがあり、切り返しの多いワインディングでは程良い軽快ささえも感じられます。

ボルボV40 T3のライバルは、BMW「1シリーズ」、アウディ「A3」、メルセデス・ベンツ「Aクラス」などでしょうが、その3台と真っ向勝負できるキャラクターとパフォーマンスが備わっています。ちなみに、今回試乗したT3 SEの価格は374万円ですが、その下のスタンダードなT3なら324万円。FFモデルの中で…という前提ならば、個人的にベストバイと評したいくらい、強いインパクトがありました!

<SPECIFICATIONS>
V40 T3 SE
ボディサイズ:L4370×W1800×H1440mm
車重:1480kg
駆動方式:FF
エンジン:1497cc 直列4気筒DOHC ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:152馬力/5000回転
最大トルク:25.5kg-m/1700-4000回転
価格:374万円

(文&写真/ブンタ)

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