吉田由美の眼☆進化はまだまだ続く!ベンツGクラスの“ネバーエンディングストーリー”

■五感を通じてGクラスの安心感を得られるよう演出

新型Gクラスは、39年ぶりのフルモデルチェンジといわれていますが、メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長によると「本国ではフルモデルチェンジとはいわない」とのこと。というわけで新型は“最新技術を導入したビッグマイナーチェンジモデル”といった方が正しいのかもしれません。

ボディサイズは、従来型と比べて全長が53mm、全幅は64mm大型化。Gクラスのボディサイズが大きくなったのは、誕生以来2度目のことです。

エクステリアデザインは、可能な限りオリジナルを踏襲。四角いフォルムと丸いヘッドライト、そして、あえて残されたフロントフェンダー上のウインカーなどにより、新旧並べてみなければ、その違いが分からないほど。ドアの開閉音も踏襲されていて、従来型と同様、鉄板がぶつかる大きな音がします。ドアパネルの素材は鉄からアルミに変わっているので、実は「同じような音を出すのに苦労した」のだとか。

また、走り出すとドアが施錠される自動ロックの作動音もしかり。あえて大きな塊感のある音を響かせることで、心理的に頑丈さをアピールする効果があるようです。使われている素材などは進化しているのに、各部が従来型のそれに酷似しているのは、新型が“Gクラスらしさ”にこだわったから。見た瞬間から、乗った瞬間から、五感を通じてGクラスならではの安心感を得られるよう演出されているのです。

一方のインテリアは、高級でモダンなしつらえに一変。センターに大型の液晶パネルをレイアウトしたほか、特徴的な形状の丸いエアコン吹き出し口で先進感をアピールしています。そんな中、注目したいのがインパネ上部にあるスピーカー。その形状は、フロントフェンダー上のウインカーをイメージしたものだといいます。

新型は、オフロードでの走行性能はもちろんですが、オンロードでの走りも大きく進化しました。完全新設計のラダーフレームには、3.4mm厚のスチール鋼板を採用。アルミや超高張力板の採用もあって、約170kgのダイエットに成功しています。サスペンションは、フロントが独立懸架のダブルウィッシュボーン式で、リアは従来型と同じリジッドアクスル。ステアリング機構はラック&ピニオン方式に改められました。

さて、いよいよ試乗へ。

現在のところ、新型Gクラスのラインナップは2モデル。最高出力422馬力の4リッターV8ツインターボエンジンを積むメルセデス・ベンツ「G550」と、最高出力585馬力の4リッターV8ツインターボを積むフラッグシップ、メルセデスAMG「G63」が用意されます。G550のエンジンには気筒休止機構が導入されるほか、9速ATを組み合わせるなど、燃費にも配慮されています。

まずはシートによじ登るところから、新型Gクラスでの冒険はスタートします。シートに座るとアイポイントが高く、どことなくトラックに似た感覚です。

従来型は、ハンドルもアクセル&ブレーキも重さが気になったものですが、新型ではそれらがちょっと軽やかに。乗り心地も良くなり、オンロードでも体がゆさゆさと揺すぶられるような感覚はほとんどありません。

ハンドルを切った時の反応も、従来型に比べてかなり素早くなり、ハンドルの動きに対してしっかりと向きを変えてくれるので、リアルオフローダーというよりも、大きなセダンに乗っている感覚に近いですね。

フロントのピラーが立っているクルマは、風切り音が気になったり、空気抵抗が悪くなったりするものですが、新型Gクラスの車内は、高い静粛性が保たれます。ただし、G63は低いエンジン音が聞こえてくるので、それが気になる人もいるかも。

続いて、オフロードコースへ。富士山を眺められる特設コースでは、35度と30度のヒルクライムやモーグルコース、そして、最深約70cmのウォーターダイブに挑戦します。

新型Gクラスは、悪路用の走行モード「Gモード」を用意。これを利用すると、ローレンジの際にサスペンションの減衰力を悪路走行に適した設定に変えたり、アクセルペダルを自動制御したりします。また、3つのデフロックスイッチを巧みに使い分けると、急こう配でもエンジンのトルクを活かし、登りも下りも安定して力強く進みます。

モーグルコースでは、1輪だけが浮いてしまい駆動力が抜けて進めなくなることがありますが、新型Gクラスは1輪が滑り始めるとトルクを自動配分し、空転によるスタックを防いでくれるので安心感は絶大です。

さらに狭い場所では、360度のカメラが活躍。クルマ周囲の死角を細かくチェックしながら、ハンドルやアクセルを操作できます。今回はそのほか、池越えのシーンにおいて、まるで遊園地のアトラクションのように、迫力ある映像を車内のセンターモニターに映し出してくれました。そういったエンタメ的な要素も、このカメラにはあるのかも。

今回の試乗コースのような悪路に遭遇する機会は、日常ではほとんどないかもしれませんが「極悪路でも走れる頼もしいクルマ」という潜在能力の高さも、Gクラスの大きな魅力のひとつ。Gクラスの冒険(進化)は、今後もまだまだ続きそうです。

(文/吉田由美 写真/村田尚之)


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