ワイン発祥地のひとつアルメニアで秋のワイン祭りを堪能【アルメニア訪問記】

■6000年超の歴史を持つアルメニアワイン

アルメニアは紀元前4~3世紀に成立したエルヴァンド朝以来の歴史のある国家です。1922年から旧ソビエト連邦に入り、ソ連崩壊の1991年に独立し、アルメニア共和国となりました。

アルメニアの現在の面積は日本の約1/13、人口約300万人と、国としては小規模ですが、国家として世界で最初にキリスト教を受容した国(301年)として知られています。

アルメニアやジョージアなど、黒海、カスピ海周辺は、ワイン発祥の地とされるエリアです。

アルメニアでは、首都エレバンから約100km南東のヴァヨッツゾール地方にあるアレニ村の洞窟で、6100年前のワイン醸造の遺跡が2007年に見つかり、ニュースになりました。

一般公開されていないこの洞窟「Areni 1 Cave」に、特別に許可をもらい、入ることができました。外からは洞窟があるとはわからない巨岩の陰に、隠れるように入口があります。

ちなみに、この巨岩地帯は、大昔は海の底だったようです。

内部は天井が低く、奥まで細長い通路が広がり、外は寒いのに中は意外と暖かかったです。

ここは住居でもあり、キッチンエリアには、クレイポット、オーブンが見られます。
ワインを醸造していたと思われる区画にあったアンフォラ(壺)からは、ブドウのオリが見つかり、成分分析から、ジュースではなくワインだったことがわかりました。
この洞窟では、世界一古いとされる5500年前の革靴(スリッパみたいな形)も発見されていて、周辺の土産物店では、その靴をモチーフにした小物類も売られていました。

このアレニ洞窟で見つかったブドウが「アレニ・ノワール」という黒ブドウで、名前からわかるように、アレニ周辺の地場品種になります。

アレニ・ノワールの特徴は酸が高く、ポリフェノールは中程度で、アロマは違うがピノ・ノワールと似ている、といわれているそうです。

アルメニアは、アレニ・ノワールをはじめとした地場ブドウ品種の宝庫で、なんと500品種もあるとか! 近年は、アルメニアでもカベルネなどの国際品種のブドウを使ったワインも造られていますが、主流はやはりアレニのようなアルメニアの固有品種のワインです。

▲アレニ・ノワールのブドウ。アレニのクローンは10くらいあるそう(OLD BRIDGE WINERY)

 

■道端ワインは必飲です

▲大きなペットボトルに自家製ワインが!

アレニ村周辺を車で走っていると、道端に大きなペットボトル入りのワインを並べて売っている農家のおじさんがいました。アレニから造った自家製ワインとのこと。

ブドウ畑が販売所の裏手にあると聞き、見に行くと、浅い川に面した河川敷にブドウが植えられていました。

ブドウの房がまばらで、OLD BRIDGEで見たアレニとかなり異なりますが、これもアレニだそうです。

おじさんの自家製アレニワインを試飲すると、フルーティーでやさしい甘みがあり、酸味がジューシーで、とてもおいしい! せっかくなので、日本に買って帰りたかったのですが、さすがにこの巨大ペットボトルは飛行機の預け荷物にしてもダメらしいので、ホテルで飲みました。

こうした農家の自家製ワインは、アルメニアではとてもポピュラーなものです。駐日アルメニア大使のグラント・ポゴシャンさんから話を聞く機会があったのですが、大使が若い頃、よく友人数人と車でアレニ地域に出かけ、農家を回って自家製ワインを買い込んだそうです。この農家自家製のワインがとてもおいしかった、と仰っていたので、私も現地で飲んでみたいと思っていました。たしかにおいしいし、しかも安い! オススメです!

 

■ローカルブドウ品種とKarasがアルメニアワインの二大特徴

アルメニアの伝統的なワイン造りの道具のひとつに「KARAS」(カラス)と呼ばれる土製の壺があります。一般的には「アンフォラ」、隣国のジョージアでは「クヴェヴリ」と呼ばれるものです。

壺の底が平らではなく、尖っているので、土になどに埋めて使っていました(Tushupa Winery)。

非常に古いカラスもあるようで、Tushupa Wineryでは、「父が1992年にセラーを建てた時、100年前のカラスを買いました。醸造の時にのみ使います」と言っていました。

近代醸造設備を整えたワイナリーでも、自分たちの伝統的道具である「カラス」を見直す傾向があり、今回の訪問した多くのワイナリーが、カラスを使ったワイン造りにもチャレンジしていました。

▲そのまんまの名前を付けた「KARAS Winery」

ここは大手で、エレバン空港のラウンジでもカラスワインが置かれていました。

「アルメニアのワインの品質の良さを示したい」と言う「Zorah Winery」では、大小さまざまなカラスを使ってワインを仕込んでいました。

アレニを何種類も栽培し、2000年から10年かけてアレニのDNAを調査してきました。当時は周りから馬鹿者と言われたそうですが、今はエレバン大学でアレニのDNAリサーチが始まっています。

アルメニアワインの伝統は「ローカル品種」と「Karas」で、これは独自の魅力でもあるので、この2つをポイントに探していくといいでしょう。

現在、アルメニアには50のワイナリーがありますが、残念ながら、アルメニアのワインは、まだそれほど多くは日本に入ってきていません。

アルメニアワインを色々と飲み比べてみたい、という方は、アレニ村で10月第一土曜日に開催される「アレニワインフェスティバル」に参加してみてはいかがでしょうか? 2009年から始まったお祭りで、2018年が10回目の開催でした。

 

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