買うならコレでしょ!メルセデス「Aクラス」ディーゼルは加速パワフルで乗り心地は上々

■クラスを超えた充実ぶりがAクラスの美点

A200dを紹介する前に、改めてAクラスの魅力についておさらいしておきたい。

「え、あのメルセデス・ベンツがコンパクトカーを作るの!?」――世界に衝撃を与えた“Aクラスショック”が起きたのは、1997年のこと。それから20年以上の時を経て、Aクラスは着実に市民権を獲得。今ではすっかりメルセデス・ベンツの定番モデルとなった。

メルセデス・ベンツにとってAクラスは、特別な存在だ。最も下のポジションに位置するエントリーモデルであり、“初めてのメルセデス”として新たな顧客を引き込む役割も担う。特に、従来、メルセデス・ベンツに触れる機会の少なかった若い人たちや女性たちを、独自の世界観へと誘う任務が求められているのだ。

現行のAクラスは、2018年10月に日本へ上陸した4代目。「日本仕様は5000台を超える受注を受けていて生産が追いつかず、今オーダーしても納車は2019年の秋以降」とか、「他ブランドからの乗り換え比率が50%以上」という具合に、日本のマーケットでも幸先いいスタートを切っている。

Aクラスはいわゆる“Cセグメント”と呼ばれるカテゴリーに属すハッチバックであり、同クラスの王者であるフォルクスワーゲン「ゴルフ」や、ヨーロッパのフォード「フォーカス」、プジョー「308」、アウディ「A3」、BMW「1シリーズ」などが直接のライバルだ。日本車では、話題の「マツダ3」を始め、スバル「インプレッサ」、トヨタ「カローラスポーツ」などが競合車種となる。

そんな中で、Aクラスがライバルをリードしているのは、なんといっても先進安全装備や運転支援システムの充実。メルセデス・ベンツは旗艦サルーンである「Sクラス」に、世界最高水準の衝突被害軽減ブレーキを搭載しているが、Aクラスはエントリーモデルであるにもかかわらず、それと同等のシステムをオプションだが用意している。

また、追従機能付きクルーズコントロールは、渋滞中の完全停止に対応するほか、自動停止からの自動再発進にも対応(高速道路なら停止後30秒以内、一般道では3秒以内)するなど実用的。さらに、車線の中央をトレースするようにハンドルを制御する機能も秀逸で、ドライバーのウインカー操作をきっかけに自動でハンドルを動かして車線変更する機構まで組み込まれている。

先進機能といえば、Aクラスは音声操作機能も、時代の先端をいっている。クルマに向かって話しかけることでナビゲーションの目的地を設定したり、エアコンの温度を調整したり、ループランプの点灯/消灯を操作できる“MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)”を標準装備。MBUXは、その音声認識精度の高さや、学習能力によって日々成長していく点にも驚かされるばかりだ。

また、まるでダッシュボード上に2台のタブレットを配置したかのような10.25インチの大画面液晶パネルは斬新。これまでのクルマのインテリアデザインにはなかった雰囲気は、先進的というほかに表現できないほどで、さらに、仕立ての良いパネルや緻密なスイッチ、そして、エアコン吹き出し口など細部の仕上げの上質さなども相まって、オリジナリティある高級感もプラスしている。

それは明らかに、クラスを超えた出来栄え。ライバルだけでなくクラスをも超えた充実度こそが、現行Aクラスの魅力のひとつだ。

■重くなった車体が乗り心地に効いてる!?

さて、そんな現行Aクラスに加わったのが、ディーゼルエンジン搭載モデルのA200d。日本仕様におけるメルセデス・ベンツのコンパクトモデルでは初となる、ディーゼルエンジン搭載モデルだ。

最高出力は150馬力で、最大トルクは32.6kgf-m。ガソリンターボを搭載するA180が7速に対し、1段多い8速のデュアルクラッチ式トランスミッションが組み合わされるのもトピックだ。

走ってみての印象は、とにかく滑らか。停車時こそディーゼル車らしいエンジン音が聞こえてくるものの、走り出してしまえば全く気にならない。しかも、回転上昇フィールに、ディーゼル特有のザラザラとしたネガティブな感覚がなく、4気筒ディーゼルとしてはかなり洗練されているといえる。その上、50kmほど走ってみての燃費は、車載燃費計上で約20km/Lという驚きの低燃費。なんとも完成度の高さを感じさせてくれる。

その上でA200dは、以前乗ったA180よりも乗り心地がソフトだった。路面からの衝撃が入ってきた際の振動吸収力が、一枚上手の印象。サスペンションセッティングなどの変更はアナウンスされていないが、車両重量のアップやサスペンション自体の馴染みといった個体差が、いい影響を与えていたように思える。

■2020年施工の厳しい排出ガス規制をすでにクリア!

A200dの滑らかな走りや省燃費のカギを握っているのが、搭載される新テクノロジーだ。

エンジンは、これまで「Cクラス」や「Eクラス」に搭載されていた“OM654”型をベースに、FFレイアウトのAクラスに合わせて横置き化。その上でさらなる進化を施した“OM654q”型を搭載している。このエンジンは、一にも二にも排出ガスのクリーン化を追求。そのために多くの新発想、新技術を導入している。

例えば、排出されたガスをもう一度、燃焼室へ送って再燃焼させ、大気汚染の原因となるNOx(窒素酸化物)を低減する“EGR(エキゾースト・ガス・リサーキュレーション)”機構は、低圧と高圧とを2系統搭載。また、当然のように、排出ガスに“アドブルー”と呼ばれる尿素水を噴射し、化学反応による中和でNOxを浄化する“尿素SCR(選択触媒還元)システム”も搭載する。

OM654qのスゴいのはここからで、PM(細かいスス)をキャッチする役割を持つ“DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)”にも、SCRコーティングを実施。PMだけでなくNOxも処理できるよう工夫している。加えて、アドブルーを噴き過ぎた際にアンモニアが車外に排出されるのを抑止する“ASC(アンモニアスリップ触媒)”も搭載。その結果、従来と比べてより多くの尿素水を噴射できるようになり、結果、NOxの発生を徹底的に抑えているのだ。

こうした数々の工夫により、OM654qは、2020年からヨーロッパで施行予定の“EURO 6d NORM”と呼ばれる、一段と厳しい排出ガス規制をクリア。現時点で、同規制をクリアする唯一の存在となっているのは賞賛すべきポイントだ。

■ガソリンターボ仕様との価格差は実質15万円ほど

一般的に、排出ガスのクリーン化を追い求めたディーゼルエンジンは、ドライバビリティと呼ばれるパワーやフィーリングのフィーリングや、燃費面で相反する部分が生じるため、実は両立が難しい。しかしOM654qは、処理能力の高い排出ガス浄化装置を搭載したことで浄化できるキャパシティが増え、その余裕をドライバビリティの向上に使うことができている。その結果、排出ガスはクリーンでありつつも、ハイレベルのドライバビリティを手に入れられたというわけだ。

OM654qの凝りに凝った排ガス浄化機構は、もちろんコストはかさむものの、ディーゼルを未来へとつなぐために欠かせないもの。と同時に、ドライバーに爽快感をもたらし、燃費もレベルアップしている。今後のディーゼルエンジンの進化を占う上で、A200dは大きな意味を持つモデルといえるだろう。

ちなみにA200dの価格は、399万円から。同じ装備内容の「A180スタイル」に対して30万円ほど高価だが、エコカー減税(購入翌年の自動車税減税措置も含む)などを考慮すれば、実際の価格差は約15万円に圧縮される。力強い加速や燃料代の安さなど、ディーゼルのメリットまで考えてAクラスを選ぶとすれば、ディーゼル仕様を選ばない理由はないという気持ちになる。

<SPECIFICATIONS>
☆A200d AMGライン装着車
ボディサイズ:L4440×W1800×H1420mm
車重:1510kg
駆動方式:FF
エンジン:1950cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:150馬力/3400〜4400回転
最大トルク:32.6kgf-m/1400~3200回転
価格:424万5000円(※AMGラインのオプション価格含む)

(文&写真/工藤貴宏)


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