トヨタ「カローラクロス」はココがスゴい!日本仕様の装備や機能は海外向けより高レベル

■C-HR以上、RAV4未満という領域をカバーする

2021年9月の正式発表前から、大きな話題となっていたトヨタの新型車・カローラクロス。まずは、「カローラ」という車名を冠した初のSUVでもあるこのモデルのポジショニングから説明していこう。

今、トヨタ車のラインナップは“フルラインSUVメーカー”といってもいいほどSUVが充実している。日本市場に展開されている車種を見ても、全長4m以下の「ライズ」に始まり、「ヤリスクロス」、「C-HR」、「RAV4」、「ハリアー」、そして「ランドクルーザープラド」に「ランドクルーザー(300系)」と、どのサイズにおいてもスキのない、鉄壁の商品群となっている。

その中で、新しいカローラクロスが受け持つのは、「C-HR以上、RAV4未満」という領域。全長はそれぞれ、C-HRが4385mm、カローラクロスが4490mm、そしてRAV4が4600mmとなる。

このうちC-HRとカローラクロスは、ボディサイズだけ見れば近いポジションにあるが、パッケージングは明確に異なっている。C-HRがリアシートの居住性やラゲッジスペースの広さよりも、デザインの軽快さを重視したクーペ的な位置づけなのに対し、カローラクロスは居住性や荷室の使い勝手を最大限に考慮した上でのスタイルになっている。2台のパッケージングは考え方が全く異なるといっていい。

それにしても、トヨタのSUVラインナップは、近年、セダンの品ぞろえが縮小しているのと反比例するかのように急速に増えている。その理由はシンプルだ。セダンの市場が縮小する一方、SUVのマーケットは世界的にどんどん大きくなっているからだ。SUV発祥の地であると同時に、SUVブレークの震源地にもなっているアメリカはもちろん、そこから飛び火したヨーロッパでも、今では新車販売台数の半分以上がSUV。日本では、トヨタがライズを発売してからのここ2年ほどで、新車市場におけるSUVの存在感が強まってきた。そう考えると、トヨタがSUV中心の車種設定へと大きく舵を切ったのも、当然のことといえるだろう。

かつてトヨタは、セダンにおいてスキのないラインナップを展開していたが、それが今ではSUVへと移行したと考えれば全く不自然ではない。「スターレット」がヤリスクロスに、カローラ(これはセダンも存続しているけれど)がカローラクロスに、そして「マークII」がハリアーになったと考えれば腑に落ちる。なのでカローラクロスは、やはりヤリスクロスより大きく、ハリアーよりも小さいのである。

■カローラのメカニズムをベースに仕立てたSUV

そんなカローラクロスにとって、他メーカーの気になるライバルはどれか?

まず直球勝負となるのはマツダの「CX-30」だ。全長は4390mmとカローラクロスより短いが、“Cセグメント”ハッチバックの「マツダ3」をベースとしたクロスオーバーSUVという成り立ちは同じである。

さらに、ホンダの「ヴェゼル」もライバルに入ってくる。ベースは“Bセグメント”ハッチバックの「フィット」だが、ボディが大きめに作られており、居住性や積載性といったユーティリティでも競合できるレベルにある。

また、ちょっと変化球だが、スバル「XV」もライバルといっていい。こちらはボディ自体を“Cセグメント”ハッチバックの「インプレッサスポーツ」と共用するモデルだが、クロスオーバーSUVとしてはサイズも実用性も近いものがある。加えてXVは、ハッチバックをリフトアップした構造でありながら、全グレードが4WDとなるなど、優れた悪路走破性を誇るという点は覚えておきたい特徴だ。

そうした手強いライバルに勝負を挑むカローラクロスのメカニズムは、基本的にカローラのセダンやステーションワゴンの「カローラツーリング」をベースとしている。

プラットフォームは、“TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)”に基づき開発された“GA-Cプラットフォーム”で、コレはC-HRや「プリウス」、レクサス「UX」と同じタイプだ。ただしカローラクロスのリアサスペンションは、ダブルウイッシュボーン式を採用するカローラのセダン&ワゴンに対し、スペース効率やコストを重視してトーションビーム式となっている(ただし4WD車はダブルウイッシュボーン式だ)。

パワートレーンは、1.8リッターエンジンにモーターを組み合わせたプリウス譲りのハイブリッド仕様と、モーターなしの1.8リッターガソリンエンジンの2種類を設定。いずれもカローラと同じものだ。

日本仕様の駆動方式は、ガソリン車は前輪駆動のみだが、ハイブリッドは前輪駆動に加えて4WDの選択が可能。そのシステムは、“F-Four”と呼ばれる後輪をモーターだけで駆動する仕組みとなっている。

■日本仕様には海外向けにはない技術や装備が盛りだくさん

そんなカローラクロスの日本仕様は、先行して発売されていた海外仕様とは異なる部分がいくつか見られる。

まずは顔つきだ。実は、日本仕様とそれ以外の地域で販売されるモデルとではフロントマスクのデザインが異なっている。海外向けはもっと武骨であるのに対し、日本仕様はアッパーグリルのない先進的な雰囲気に仕立てられているのが特徴だ。

その理由について、トヨタは「市場の嗜好性の違い」と回答している。「最初に発売したタイ、そして続いて販売した北米などでは、SUVのデザインにタフさが求められる。その一方、日本では洗練された上質な雰囲気が重視される」という考えに基づいてのデザイン変更だ。また、「Z」グレードに組み合わせるLEDライン発光の上級なテールランプも、日本仕様独自の装備である。

そしてよく見ると、フロントのエンブレムも異なっている。海外市場向けはトヨタエンブレムだが、日本市場向けは車名の頭文字である“C”をかたどったカローラエンブレムになっているのだ。トヨタによると「日本では『センチュリー』や『クラウン』、そしてカローラなど、伝統がある上にトヨタにとって特別なモデルは独自のエンブレムとする」とのことだ。

そして機能の面でも、海外仕様の一部モデルとは異なる部分がある。それはパーキングブレーキだ。足踏み式となるアジア諸国向けとは異なり、北米モデルと同様、電動式を採用している。そのため、信号待ちなどでブレーキペダルから足を離しても停止状態を保持するホールド機能や、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)作動時の渋滞時停止保持機能も利用可能。日本向けは先進機能も充実している。

そのほか、ガラス面積が大きく開放的な“パノラマルーフ”も、現時点では日本仕様だけの特別な装備。また、ハイブリッド仕様に用意されるe-4WDも、日本仕様だけのメカニズムとなる。

カローラクロスは1年ほど前に海外市場で発表されていたため、「日本仕様はデビューが遅い」と不満を持っている人も多いことだろう。何を隠そう、筆者もそのひとりだった。しかし、日本仕様は海外市場向けとは異なる技術や装備をしっかり盛り込むなど、発売の遅れも十分納得できる仕上がりだ。

※「Part.2」では、新型車カローラクロスの使い勝手や走りの実力に迫ります

<SPECIFICATIONS>
☆Z(ガソリン)
ボディサイズ:L4490×W1825×H1620mm
車重:1350kg
駆動方式:FWD
エンジン:1797cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
最高出力:140馬力/6200回転
最大トルク:17.3kgf-m/3900回転
価格:264万円

<SPECIFICATIONS>
☆Z(ハイブリッド/2WD)
ボディサイズ:L4490×W1825×H1620mm
車重:1410kg
駆動方式:FWD
エンジン:1797cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:98馬力/5200回転
エンジン最大トルク:14.5kgf-m/3600回転
モーター最高出力:72馬力
モーター最大トルク:16.6kgf-m
価格:299万円

>>トヨタ「カローラクロス」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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