雨の国、日本。「雨に唄える雨具いろいろ」 映画監督・平野勝之「暮らしのアナログ物語」【22】

日本は雨国だ。自然現象を変えることはできない。

雨をいかに楽しむか? が生活のひとつの大きな課題ではないか? と思う事も多い。

昔から日本人は雨も風情のあるもののひとつとして生活に取り込んできたように思う。

生活の恵みでもあり、大きな敵にもなるであろう雨。

自分も自転車生活者であるから、この雨問題に関しては昔から大変な思いをして雨具や道具などいろいろと試してきた。

日本の場合、自転車の旅に出るということは半分以上は雨であるということを認識しておいたほうが良いのである。

これは登山など、その他アウトドアスポーツでも同様だと思う。

 

■丸善の蝙蝠傘

雨の代表的雨具といえば、まずは傘だろう。

しかし、傘というのは現代の道具の中でも最も進化していない道具のひとつだと思う。

せいぜい軽くなったり折りたたみができたり、素材が変わったぐらいで、基本的な構造は何も変わっていないのが面白い。

僕は傘があまり好きではなく、普段ほとんど使わないのだが、それでも一応、持っている。

昔は普通に安いビニール傘を使っていたのだが、あまりにも忘れてきたり無くしたりすることが多かったので、無くさないように、また雨の日でも楽しく過ごせるように、少し良いものを入手しようと思った。

そして、二度と傘を買わないという気持ちで購入した。

それが、この丸善のオリジナル傘である。

しっかりと作られていてイギリスものよりは軽量で安い。

この傘は使うととても気持ちがよい。

傘の布が良いせいか、布を雨が叩く音が優雅に聞こえるのだ。

「テン、テン、テテンテンテン……テテテン…」

みたいになんとも低いけど落ち着いた音がして、この傘をして歩いていると、ゆったりした気持ちになる。

気に入ってしまい、しばらくたってから同じ丸善の、小型の折りたたみ傘も入手した。

傘の内側、天井に入っている丸善のロゴもデザインが素晴らしく、かなり洒落ている。昔ながらの素晴らしい傘だと思う。もちろん修理もできるので、無くさない限りは長ーい付き合いになるだろう。

僕は傘は昔ながらの黒い蝙蝠傘が好きだ。

広げた姿が蝙蝠に似てるからこの名が付いたそうだが、元々はイギリスから渡ってきた洋傘にこの名が付いたようだ。

蝙蝠傘という字面が好き。今はあまり聞かない言葉だと思うが、どことなくエキゾチックなイメージが残っている言葉で、なんだか好きなのである。

だから、傘は黒に限るのだ。

あまり傘はささない僕だけど、いつも玄関先に立てかけられて、今か今かと出番を待っている、僕の蝙蝠である。

 

■AIGEL 乗馬用雨具

通常、僕は雨でも自転車で移動する。

なので雨具は真剣だ。

もちろんアウトドア用のゴアテックスのセパレートタイプも持っているが、普段はもうちょっとお洒落で気の効いたものはないか? 常に探している。

ポンチョも自転車用のミシュランのものがなかなか考えて作ってあって快適で軽量なのでよく使用した。

ポンチョの良いところは、ムレにくく、サッと脱いだり着たりできるところだが、動きに制限があり、風に対しては弱く不利だ。

また、マッドガードのない自転車では水の跳ね上げを内側から食らうので、まったく意味をなさなくなる(自分はランドナーでマッドガード付きなので問題はないが)。

そして見た目がテルテル坊主のようになって、いかんせん微妙なところだ。

リュックなどを背負うと、その分の面積を取られますますカッコ悪くなる。

そこで7、8年前に購入したのが、AIGLEの乗馬用兼バイク用のレインコートだった。

これは、一見、普通のコートだが、膝まである裾が両方の太ももに紐で巻きつけて固定できるようになっていて、両足がコートの裾でバタつかないようになっている。

このコートに以前紹介したデュバリー(>> 世界最強の長靴について。Dubarry「Galwayカントリーブーツ」 映画監督・平野勝之「暮らしのアナログ物語」【20】)などの防水ロングブーツやAIGLEのレインブーツを組み合わせて使用すると良いだろう。

使い心地はまずまずで、良くもないが悪くもない。

両足を常に動かす自転車の場合、もう少し考えてほしいところもあるが、まあ許せる範囲だろう。

見た目が普通のコートのようにお洒落になるところがスポーツ用具としてはなかなか良いので、よく使っている。

ただ、専用の袋に入れて持ち歩きはできるが、少々大きく重すぎる。

もう少しコンパクトに軽くなってほしいところだ。

しかし、こういうものが無いのでこのコートの存在は貴重ではある。

本格的な長期自転車キャンプ旅にはセパレートのゴアテックスのアウター上下を使用する。

軽いものもあるが、雨用兼防風兼保温の役割を一着で済ませるためである。

下は雨の場合、ゴアテックスの防水軽量オーバーパンツにゴローのトレッキングシューズ、これにスパッツを重ねてて水の侵入を防ぐようにしている。

本格的なアウトドアの場合、濡れない機能も重要だが、自転車の場合、激しく汗をかくので、どちらにしても内側からも汗で濡れてしまう。

従ってTシャツやインナーシャツなど、速乾能力の高いものが要求される。

外側が濡れなくても内側から汗で濡れてしまっては意味をなさなくなるからだ。

だからアウトドアの場合、濡らさない機能より早く乾く機能の方が実は重要なのである。

 

■帽子

僕の場合、自分のトレードマークにもなっているツバ広帽子だが、実はこれは傘の役割でもあるのだ。

キッカケはスナフキンや木枯らし紋次郎が大きなツバ付きの帽子や三度笠をしているのはなぜだろう? と考えた時「あ、これは傘の役割なんだ?」と気づいたからだった。

旅人なので、いちいち傘など持たないのだろう。

帽子が傘や日よけの役割になれば、かなり合理的ではないか? と思った。

僕は自転車の旅人だけど、空気抵抗を気にするようなスピードを出す旅はしないので、ツバ広帽子でもOKだろうと思った。

自転車との見栄えのバランスも良いように思えた。

そこから常にハットを被るようになり今に至る。

これは大正解で、アメリカのウォーターシップ社のヨット用ハットを選んだせいか、帆布の丈夫で硬い素材なので、雨に濡れてもそう簡単に水が浸透せず、ひさしのおかげで目の前に雨が直接侵入することもなく、ひどく快適になった。またフードのように左右が圧迫される事もなく開放感もあって快適だ。当然日よけもできるので、西日などの逆光で自転車を走らせる時、とても役にたっている。

自転車の風で飛ばされないか? と思うだろうけど、風を逃すように少し角度を下げて目深に被れば、自分の場合、めったに飛ばされる事はなかった。

最近はさらに防水効果の高いフィルソンのオイルドハットを愛用。

真夏だけは、防水ではないがイギリスのペンドルトンの涼しいハットにしている。

 

■雨に唄えば

雨の日は自転車やアウトドアだと大変ではあるけど、呼吸も楽になる気がする。

人間は魚だったんだろうとか、やはり海にいた記憶が蘇るからだろうか? とかをつい考えてしまう。

都心ではいろいろなものを洗い流してくれる感覚もあり、僕は雨は嫌いではない。日本に生まれたからには、ジーン・ケリーのように雨に唄って踊れるぐらいになりたいものだと思っている。

雨が楽しめるようになれば、きっと一人前なのだろう。

 


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(文・写真/平野勝之)

ひらのかつゆき/映画監督、作家

1964年生まれ。16歳『ある事件簿』でマンガ家デビュー。18歳から自主映画制作を始める。20歳の時に長編8ミリ映画『狂った触覚』で1985年度ぴあフィルムフェスティバル」初入選以降、3年連続入選。AV監督としても話題作を手掛ける。代表的な映画監督作品として『監督失格』(2011)『青春100キロ』(2016)など。