吉田由美の眼☆知ってた?ジムニーの隠しキャラは“サイ”だったんです!

■ジムニーのデザインを担当できて幸せでした!

左:インテリアデザイン担当の日向隆さん/右:エクステリア担当の砂走和人さん

――20年ぶりのフルモデルチェンジですが、新型のデザイン作業はいつ頃からスタートしたのですか?

砂走さん:4~5年くらい前からです。スタディモデルは15年ほど前から何度か作っていましたが、なかなかOKが出ず、完成には至りませんでした。でも、車体の骨格が決まり「機能に特化したジムニーにしよう」という目標が決まってからは、作業の進展が早かったですね。

――近いタイミングでメルセデス・ベンツの「Gクラス」も新型へ生まれ変わりましたが、新型ジムニーでGクラスを意識された部分はありますか?

砂走さん:優れた使い勝手や高い機能性、スクエアなボディで室内やラゲッジスペースの広さを稼いでいる点、平らな屋根、本物感を目指しているといったベースの部分は、結構共通していると思います。新型Gクラスは今回の進化で、よりラグジュアリーな方向へと生まれ変わりましたが、ジムニーは軽自動車ということもあって、プレミアムカーにするつもりはありません。でも、本物を目指すというコアバリューは同じです。その上で、視界の良さや鉄板むき出しの印象などは、似ている部分もしれませんね。

――デザインで一番苦労された部分はどこですか?

日向さん:業務的には苦労ばかりです(苦笑)。スズキには、ジムニーを心から愛している人間が多いので、いろいろいわれるんです。スケールモデルを作って皆に見せても、みんな声高に意見をいってきますからね。でも、目標が決まってからは、そこへ向かうだけ。軟派なものは作らない、硬派なものを目指す、ということを意識してデザインしました。

――新型では、女性の声は意識されましたか?

日向さん:今回はあえて“女性に媚びない本物感”を意識しました。でも、デザインスケッチを社内の女性たちに見せたところ、かなり高評価だったのは驚きでした。

――ジムニーの世界観を表現しきれているかどうかの最終決定は、誰がジャッジされているのですか?

日向さん:鈴木俊宏社長ですね。社長は話せば分かる人。日頃から若いスタッフたちと頻繁にコミュニケーションをとっていて、トレンドもリサーチしています。その社長を納得させられるもの、社長の心に響くものを作れるかどうかがカギですね。

――新型ジムニーで一番コストが掛かっている部分はどこですか?

砂走さん:実は、デザインにお金は掛かっていません。リアのコンビネーションランプなどは、かなり低コストなんです。その代わり、ラダーフレームなど中身にお金を掛けています。

ジムニーは、ヘッドライトやターンランプなどをぶつけたり壊したりしても、リーズナブルに交換できることも考慮しています。インテリアも安く仕上げています。それは、市販のカー用品を簡単に付けられるようにするため。バンパーなども溶接しやすくすることで、走りを追求する人にもカスタマイズを楽しんで欲しいと思っています。

――新型ジムニーのデザインは、この先、20年持つものなのでしょうか?

砂走さん:基本の部分はそうなる可能性がありますね。ジムニーは“シンプルでロングライフ”のクルマですから。

――ジムニーのデザイン担当になられた時は、どのようなお気持ちでしたか?

日向さん:幸せでした!(笑)。

砂走さん:私は、3代目の頃からデザインに携わっていますが「ジムニーに携わりたい」と希望する人間がスズキには大勢います。工場でも「待ってました!」という人間が多いですね。今回は、皆が求めていたものを出すことができたので、やっててよかったと思いました。

ジムニーは静岡の浜松で生まれましたが、浜松には釣りを楽しむ独特の文化があります。しかも砂浜で。私たちが入社した当時は、誰かがジムニーを買うと周りの仲間と海へ行き、キャンプと釣りを楽しむというのが恒例でした。スズキの本社工場では、働く人間の約1割がジムニーに乗っています。しかも、3代目だけでなく、初代、2代目といった歴代モデルの姿を見ることができるんです。

日向さん:私はこれまで、2代目の2ストロークモデル、3代目の「ジムニーシエラ」を乗り継ぎ、現在は3代目の軽自動車モデルに乗っています。ジムニーの最大の魅力は“独特のゲタ感”でしょうか。新型の開発では、私自身の経験も生きました。ジムニーは開発目標が明確なので、仕事がしやすいですね。すべての機能も、色のコンセプトにも、これまでの私の経験が生きているんです。

――新型ジムニーの開発で楽しかった思い出を教えて下さい。

砂走さん:やはり、社長に承認してもらった時ですね。自分たちの思いが届いた、と感じました。見た目にシンプルで、レトロな印象に仕上げようとすると、どうしても“パイクカー”のようになってしまうのではないかという危機感がありました。なので、使い込んで磨きを掛けていった時にどんなクルマになるのか、を相当考えました。その方向性が決まって一気に完成へ向かった時は、本当にうれしかったですね。

* * *

新型ジムニーのデザインは、まさに“ジムニーらしさ”のオンパレード。スクエアなボディは、先代と比べてよりスクエアになり、より武骨になりました。その結果、屋根に積もった雪を下ろしやすくなったり、ドライブ中の死角が小さくなったり、室内を広く使えるといった数々のメリットが生まれました。

ヘッドランプから独立したウインカーレンズは、交換しやすいようにとの配慮から生まれたデザイン。パーツ自体もリーズナブルな価格設定になっています。また、無塗装で樹脂むき出しの前後バンパーや(ジムニーシエラの)オーバーフェンダーなども、同様の理由からです。

そのほか新型ジムニーは、ボディカラーにも機能を持たせています。それが“目立つ性能”と“隠れる性能”。工事現場などで使われる蛍光イエローの目立つ色「キネティックイエロー」や、自然になじむよう迷彩色をイメージして設定された隠れる色の「ジャングルグリーン」など、全13色のボディカラーが用意されています。

そんな新型で絶対に見逃せないのが、サイの絵がこっそり描かれている純正のフロアマット。実は、サイは歴代モデルのタイヤカバーなどにも描かれている、ジムニーの“隠しキャラ”なのです。

東京モーターショー2017のスズキブースに展示されていたコンセプトカー「eサバイバー」のリア部分にも、定期的にサイの画像が浮き出るギミックが盛り込まれていたのだとか。eサバイバーについて、スズキの人は「次期ジムニーではありません!」とキッパリ断言されていましたが、実はそのリア部分に、秘密のメッセージが込められていたようです。

(文/吉田由美 写真/村田尚之)


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