思わずクセになりそう!?BMWとモト・グッツィはメカを語りたくなるバイクです

■高級イメージ漂うユニークなドライブトレーン

クルマの記事と比べると、バイクのコンテンツでエンジンの搭載方法や駆動方式が話題になることは、ほとんどありません。クルマの場合はざっくりいって“エンジン縦置き+後輪駆動”は高級車、“エンジン横置き+前輪駆動”なら大衆車を意味します。異論反論も含め、クルマの性格を決定づける基本的な要素なのです。

一方、バイクの場合、駆動方式は問題になりません。ほぼ100%、後輪駆動ですから。歴史上、前輪駆動や全輪駆動にトライした例も皆無ではありませんが、結局、モノになりませんでした。バイクはクルマと比べて圧倒的にシンプルな移動体なので、手間・ひま・コストをかけて凝った仕組みを採用しても、それに見合ったメリットを得られないんですね。なんだか当たり前のことを書き連ねているようで気が引けますが…。

では、バイクのエンジン搭載方法は? というと、いうまでもなく横置きがメイン。ピストンの上下運動を回転方向に変えるクランクシャフトの向きを考えれば、これまた当たり前の話であり、進行方向に対して横向きになったクランク軸の先にドライブディスク(フロントスプロケット)を置き、チェーンを介してドリブンディスク(リアスプロケット)を回します。

でも、駆動方式と異なり、エンジンの置き方に関しては異端児がいます。水平対向エンジンを縦に置いたBMWと、Vツインエンジンをやはり縦置きしたモト・グッツィです。双方ともクランクの軸線は進行方向と同じになるので、チェーンではなく、シャフトを使った方が素直に駆動力を後輪へと渡せるわけです。自転車を連想させるチェーンより、クルマと同じシャフトドライブの方がなんだか高級なイメージがありますが、それはまあ、ユニークなドライブトレーンを採用した余録のようなものでしょう。

■カスタマイズも楽しる“新しい古典”〜BMW「R nineT」

BMW「R nineT」がデビューしたのは、2013年のミラノショー。ちょっと懐かしいヘリテイジテイストが反響を呼び、その後のバイク界のトレンドとなりました。また、“カスタムベースのBMW”というコンセプトも大いにウケました。アフターマーケットでのレスポンスと並走するように、シンプルな「ピュア」、オフロードもこなせる「スクランブラー」、さらにオフテイストを濃くした「アーバンG/S」、そして、ロケットカウルを装着した「レーサー」と、メーカー自ら次々とカスタム版(!?)をリリース。ラインナップを拡充しています。

今回の試乗車であるR nineTは、登場から5年以上経ているのにちっとも古くなりませんね。元から“古めのルックスだった”ということもありますが。ヘリテイジモデルの意外なメリットかもしれません。

エンジンは、1169ccのフラットツイン。ピストンが左右で打ち合うように見えるため“ボクサーユニット”とも呼ばれる水平対向型エンジンは、左右に長いのが特徴。そのためパッと見、エンジンを横に置いているようですが、前述の通り、クランクシャフトの向きから縦置きと呼ばれます。念のため。

R nineTのそれは空冷なので、冷却を考えると左右均等に風が当たる縦置きしかありえません。エンジンに火を入れた瞬間、「ドスドス…」とバイクが軽く左右に揺すられるので、エンジンの素性が分かりやすいんです。

シート高は805mm。ネイキッドらしい自然なライディングポジションで、気負うことなく伝統的なフラットツインのビーエムを走らせることができます。

エンジンの最高出力は110馬力/7750回転、最大トルクは11.8kgf-m/6000回転。ピストンが打ち合う鼓動がライダーを喜ばせますが、アウトプットの出方はむしろ穏やか。これまた気負うことなく、バイエルンのモトラッドで駆け抜けられます。

見た目がやや重厚で、車重222kg(満タン時)のnineTですが、身のこなしは思いのほか軽やかで、鈍重さはありません。特にロールが自然で、左右の切り返しもスムーズにこなせます。コレが、エンジン縦置きに起因するものかどうかは定かでありませんが、涼やかなライドフィールで品良くスポーティです。

“新しい古典”となったR nineTですが、フロントフォークはアグレッシブな倒立式。ホイールはスポークタイプと見かけはクラシカルでも、タイヤサイズは前後とも17インチの、オンロードモデルとして一般的なもの。

その上で、マフラー、シートクッション、シングルシートルックにするパッセンジャーシートカバー、そのほかパーツ各部のスペシャルカバーや多種多様なストレージ(バッグ)類など、豊富なオプション装備が用意されるので、手軽に、かつ存分にカスタマイズを楽しめます。

ひとたびR nineTのオーナーになったなら、個性的なのは、エンジンの搭載方法だけでは済まされないのです!

■独特のリズムで走りを楽しめる〜モト・グッツィ「V7 III ミラノ」

「北にBMWがあれば、南にモト・グッツィあり!」…てな感じで、双方を比較するバイク好きは、あまりいないと思います。少なくとも、バイクを買う際に、両者で迷うことは考えづらいのです。でもモト・グッツィは、“エンジン縦置き”から来るライドフィールがビーエム以上に濃厚で、根強いファンがいるのも「納得!」の個性派ブランドなんです。

モト・グッツィは、創業が1921年にまでさかのぼるイタリア最古のバイクメーカー。タルガ・フローリオ、マン島TTレース、世界グランプリなど、数々のレースで栄冠に輝いています。

ここに採り上げる「V7 III ミラノ」は、1960年代の同社“中興の祖”である「V7」シリーズの名を引き継いだモデル。といっても、当時のV7が使っていたビッグツインではなく、スモールブロック系のVツインを改良して使っています。排気量は746cc。ナナハンのモト・グッツィですね。

エンジンをかけた瞬間、「ズロロン!」と左右に揺すられるのはBMWと同じ。でも、ボクサーエンジンより重心が高くなるV型ユニットなので、いざ走り出すと、コーナリングのたびに一瞬、グラッと来て「オッ!」と思わせます。といっても、それはボディの傾きのごくごく初期だけで、ロールそのものはスムーズ至極。ちょっと慣れれば、独特のリズムを持ってカーブを楽しめます。うーん、これはクセになりますわ。

イタリアンVツインは、80×74mmのボア×ストロークから、最高出力52馬力/6200回転、最大トルク6.1kgf-m/4900回転を発生。

「えっ!? ナナハンなのに52馬力しかないの?」と物足りなく感じる人がいるかもしれませんが、V7 IIIは低回転域から豊かなトルクをもってグイグイ行くタイプ。街乗りではアッという間に、「えっ!? もうこんな速度なの?」と驚くことになります。さり気なく速い。さすがはチャンピオンを輩出した伝統のブランドです。

試乗車のV7 III ミラノは、現行V7シリーズの上級版。クロームメッキが施されたミラー、マフラー、パッセンジャー用グラブレールなどがラグジュアリーですね。ちなみに、前後フェンダーとサイドカバーはアルミ製となります。

<SPECIFICATIONS>
☆BMW R nineT
ボディサイズ:L2105×W870×H1060mm
車両重量:222㎏
エンジン:1169cc 水平対向2気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:110馬力/7750回転
最大トルク:11.8kgf-m/6000回転
価格:205万8000円

<SPECIFICATIONS>
☆モト・グッツィ V7 III ミラノ
ボディサイズ:L2185×W800×H1110mm
車両重量:213㎏
エンジン:744cc V型2気筒 OHV
トランスミッション:6速MT
最高出力:52馬力/6200回転
最大トルク:6.1kgf-m/4900回転
価格:114万8000円

(文&写真/ダン・アオキ)


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