【スズキ ワゴンR試乗】好みで選べる3つの“顔”。先代比20kg軽量化で走り軽快!

身も心も新しくなったワゴンRには、3種類の“顔”が用意されます。定番スタイルの「FA」「ハイブリッドFX」(メイン写真のモデル)、クール&スポーティな「ハイブリッドFZ」、そして、シリーズで唯一、ターボエンジンも選べるストロングスタイルの「ワゴンR スティングレー」です。

スズキ ワゴンR ハイブリッドFZ

スズキ ワゴンR スティングレー ハイブリッドT

かつて、ワゴンRのライバルといえば、ダイハツ「ムーヴ」くらいでしたが、いまやホンダ「Nワゴン」、三菱「eKワゴン」が加わり、さらに、背が高い各社の超ハイトワゴン群が人気を博すといった乱戦状態。“王者”ワゴンRも、多様化を迫られているのです。

顔は違えど、いうまでもありませんが、3モデルの基本骨格は同じ。新型ワゴンRのスタイリング上の特徴は、ルーフ直前で途切れているように見えるBピラーでしょう。

これには、従来より細くなったAピラーとCピラーをルーフラインで結んで、キャビンの一体感(=塊感)を強調する狙いがあります。一方で、キャビンが貧弱に見えることを嫌って、Bピラーには幅広のパネルを与えたわけです。ちょっとシトロエンのデザインを思わせる、トリッキーな手法ですね。

初代ワゴンRの、いい意味での道具感、潔いクリーンな線引きに、リアルタイムで感銘を受けた身には「シンプルこそワゴンRの強みでは!?」と異議のひとつも唱えたくなりますが、久々の、根本からのフルモデルチェンジということで、デザイン部門も気合いが入ったのでしょう。

さて、機関面から新型ワゴンRを確認しましょう。新型の中心となるのは、従来の“エネチェージ”を発展させた、マイルドハイブリッド搭載モデルです。エネチャージは、減速時にタイヤの回転を使って発電機を回し、そのエネルギーを専用リチウムバッテリーに回収。再加速時にオルタネーターを回す負荷を軽減する、という仕組みでした。

新型ワゴンRのマイルドハイブリッドでは、エネルギー回収用の発電機にモーター機能(ISG)を与え、再加速時に積極的にISGがエンジンを補助します。さらに、ISGモーターだけでのクリープ走行も可能になりました。軽量コンパクトな、いかにも庶民派のハイブリッドシステムといえましょう。アイドリングストップ機能と併せ、ハイブリッドFX/ハイブリッドFZ(FFモデル)のカタログ燃費は、33.4km/Lとなっています。

スズキ ワゴンR ハイブリッドFZ

新しいワゴンRの価格を見てみると、ハイブリッドシステムを持たないFA(FF)が107万8920円。ハイブリッドシステムを採用したハイブリッドFX(FF)が117万7200円、同FZ(FF)が135万円と、いずれも旧型とほとんど変わらない値段に抑えられています。もちろん、装備面など、単純比較できない部分もありますが、シンプルなFAで法人需要に応え「一般ユーザーにはハイブリッドモデルを購入いただく」というスズキの思惑は、うまく運ぶんじゃないでしょうか。

なお、新型ワゴンRのトランスミッションは、ターボモデルも含め、すべてCVT。駆動方式はFFに加え、4WDも選ぶことができます。

ハイブリッドFZ(FF)に試乗したところ、適度な動力性能と優しい乗り心地に感心しました。

スズキ ワゴンR ハイブリッドFZ

新しいワゴンRでは、プラットフォーム一新の恩恵で、初代以来長らく使用されていたリジッド式の一種である“ITL”リアサスペンションがついに捨てられ、半独立式のトーションビームリアサスペンションが採用されたのです(4WDはITLのまま)。これにより、ワゴンRの足まわりは、スペック上も、一般的なコンパクトカーと変わらなくなったのです!

軽自動車に試乗するたびに「これで十分ではないか!」と思うようになって久しいですが、新ワゴンRは、さらに「こんなに豪華になっちゃって…」と戸惑うほど。室内は広い。

スズキ ワゴンR ハイブリッドFZ

スズキ ワゴンR ハイブリッドFZ

ステアリングホイールは革巻き。インストルメントパネルの質感は普通車と比べても遜色ない。センターメーターにプラスして、ヘッドアップディスプレイ(“セーフティパッケージ”装着車)が装備され、手前にはタッチパネル式のディスプレイが設けられます。

スズキ ワゴンR ハイブリッドFZ

快適装備のみならず、安全装備も充実しています。ベーシックなFAを除き、各種の安全装備をセットにした“セーフティパッケージ”が用意されます。リアビューミラーの奥に設置されたデュアルセンサー(単眼カメラと赤外線レーザーレーダー)が自車の前方を監視し、非常時にはブレーキをアシスト。また、車線からの逸脱やふらつきを警告してくれます。前方の障害物を認識するので、誤発進抑制機能も備えます。今後“高齢化社会での必需装備”になるかもしれません。

ハイブリッドFZに続いて、ターボモデルのスティングレー ハイブリッドTに乗ることもできました。NAエンジンが最高出力52馬力、最大トルク6.1kg-mのところ、ターボエンジンは64馬力と10.0kg-mを発生します。

スズキ ワゴンR スティングレー ハイブリッドT

ターボユニットとはいえ、一定回転数から一気にアウトプットが爆発する!…といった特性ではなく、低回転からジンワリとトルクを上乗せするタイプ。CVTのトランスミッションと合わせ、全体に鷹揚なドライブフィールを与えます。高出力を活かしてのスポーツグレード…というよりは、例えば、山間部などで余裕ある走りを求める人向けの、実用寄りのターボです。

スズキ ワゴンR スティングレー ハイブリッドT

やや饒舌なスタイルと、軽自動車らしからぬ豪華装備も選択可能な新型ワゴンR。「これで5人乗れたら…」と無茶な想像をさせると同時に、「軽自動車とはナンぞや?」という、古くて新しい素朴な疑問を感じさせる、完成度の高いクルマに仕上がっていました。

スズキ ワゴンR スティングレー ハイブリッドT

<SPECIFICATIONS>
☆ハイブリッドFZ
ボディサイズ:L3395×W1475×H1650mm
車重:790kg
駆動方式:FF
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
最高出力:52馬力/6500回転
最大トルク:6.1kg-m/4000回転
価格:135万円

<SPECIFICATIONS>
☆スティングレー ハイブリッドT
ボディサイズ:L3395×W1475×H1650mm
車重:800kg
駆動方式:FF
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64馬力/6000回転
最大トルク:10.0kg-m/3000回転
価格:165万8880円

(文&写真/ダン・アオキ)


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