戦車モデルの難所「履帯の組み立て」は流し込み接着剤でサクサク組める!【達人のプラモ術<タイガーⅠ編>】

POINT1:見えないところは省略してもいい!

第1回で製作した車体に続いて、砲塔をインスト(説明書)の指示に沿って組んでいきます。砲塔内部は、主砲の装填部、ハッチ裏側、キューポラハッチのペリスコープなどが再現されてはいますが、ハッチを閉状態で製作するならば、省略してもいいと思います(完成後内部はほぼ見えません)。作例では、パーツを取り付けて砲塔内部をインテリア色で塗装しています。

▲主砲を取り付けた砲塔内部は車内色で塗装。ただし完成後は全く見えなくなる部分なので塗装を省略しても大丈夫

88mm砲の砲身は、キットに付属しているアルミ製のものを使用。ちなみにプラ製の砲身も付属していますが、歪んでいることがあるので使用できません。アルミ砲身、スモークディスチャージャーなどの金属パーツとプラパーツとの接着には、瞬間接着剤を使用します。

▲アルミ製の主砲身は形状もリアル。メタルプライマーで下地処理をしてからプラパーツに瞬間接着剤で固定する

また、主砲の防盾の部分は、形状の違うものが5種類付属しています。キットは7種類バリエーションを選ぶことができますが、キットの塗装指示イラストを参考に、防盾パーツも選ぶようにします。今回は、1943年クルスク戦線の第503大隊323号車を選択。それに合わせて防盾も選んでいます。

▲タイガーⅠは極初期型や後期初期型などで防盾の形状が異なるので、インストを参考に製作するモデルに合わせて選ぶ

砲塔も組み立てが完了したら、車体と同じくタミヤの「ファインサーフェイサーL (オキサイドレッド)」で下地塗装と黒でシェード塗装おこないます。

 

POINT2:車体と砲塔は同じカラーで塗装

下地塗装が終わった車体と砲塔を、それぞれ基本車体色となるダークイエローで塗装します。ダークイエローをはじめ、ドイツ戦車色は各メーカーから水性アクリル、ラッカー系ともにリリースされています。

▲今回使用した「LP-55 ダークイエロー2(ドイツ陸軍)」。右のMr.カラーのダークイエローは黄色味が強く、タミヤ水性アクリルもやや黄色味が強いなど、メーカーや塗料の種類によって色調は異なる

それぞれ微妙に色調が違うので、好みで選ぶといいでしょう。今回の作例は、やや明るい印象のタミヤラッカー「LP-55 ダークイエロー2(ドイツ陸軍)」をチョイス。エアブラシで塗装しています。

▲使用したダークイエローはラッカー用薄め液で6対4(塗料4)まで希釈し、エアブラシを使い下地を塗りつぶさないように(オキサイトレッドとシェード塗装の黒をわずかに残す感じで)車体と砲塔を塗装する

▲サンプルは右側がオキサイトレッドサーフェイサーの下地。左側がグレーサーフェイサーの下地。下地の色で車体色となるダークイエローの色調が変わるのがわかる

 

POINT3:転輪には番号を記しておく

タイガーⅠをはじめ、V号戦車パンターやキングタイガーなどのドイツ重戦車は、転輪が重なるように配置された複合転輪と、幅の広い履帯(幅が725mm)を組み合わせることで接地圧を減らし、機動性を確保していました(タイガーⅠの車体重量は57トン)。これが外観上の特徴にもなっています。

ちなみに、転輪は片側だけで24枚あります。この複合転輪、実践ではトラブルが多かったとのことですが、それもドイツ重戦車の魅力のひとつと言っていいでしょう。

▲片側24枚の転輪は取り付ける位置によってそれぞれ微妙に形状が異なるので、間違えないように裏側にパーツ番号を書いておく

初期型のタイガーⅠでは、転輪にゴムリングが装備されていたので、全部で48枚の転輪を塗装で塗分けなくてはいけません。塗分けラインのモールド(彫刻)が入っていますが、丸い転輪をフリーハンドで塗り分けるのは、時間と手間がかかります。

そこで、ヤマハ「TZR」を製作した際にも使用した、金属製のテンプレートをマスキングに使用し、エアブラシで転輪のゴムリングを塗装します。(>> フィニッシュシートを使ってメッキ感を大幅アップ!【達人のプラモ術<TZR250編>】

まず、転輪をタミヤカラーの「XF-85 ラバーブラック」で塗装。テンプレートでゴムリング部分をマスキングして、エアブラシで車体色のダークイエローを塗装します。転輪は裏と表があるのでこの作業を96回繰り返します(ここが一番根気が必要!)。ちなみに後期生産型のタイガーⅠではゴムリングが廃止されているので、塗装がちょっと楽です(笑)。

▲転輪のゴムリング色となるラバーブラックで全体を塗装した後、テンプレートでリング部分をマスクしてダークイエローをエアブラシで重ね塗りする。マスキングテープより早く効率的に塗り分けができる

▲塗装が完了した転輪。転輪や履帯など足回りパーツはウェザリング(汚し塗装)を入れるので、少しぐらいの塗装がはみだしても問題なし!

▲塗装後、車体に取り付けた転輪。実戦では、雪や泥詰まりで走行不能になるなどのトラブルが多くて、外側の一列を外している場合が多かったとのこと

 

POINT4:履帯の接着は「流し込み接着剤」で!

さて、タイガーⅠ製作において最大の難所ともいえる履帯を組んでいきましょう。大丈夫!コツを掴んでおけば難しくないですよ。

戦車模型の履帯といえば、以前はゴムや軟質素材で再現されていました。ですが、近年の戦車模型では、リアルさを追求し履帯を1枚ずつ繋ぎ合わせていく「組み立て式」を採用したキットが多くなりました。

軟質素材だとテンションがかかるため、どうしても突っ張った不自然な仕上がりになってしまいます。しかし、組み立て方式であれば、履帯の重量で転輪上部が垂れ下がったリアルな重量感を再現できます。

本キットの履帯は、転輪の上側と下側が一体成形で、前後のスプロケット・ホイール(車体前側の駆動輪)とアイドラー・ホイール(車体後部の履帯を回転させるための転輪)にかかる部分が1枚ずつ履帯を組み合わせて接着する仕様となっています。

リアルな仕上がりはありがたいのですが、片側だけで前後25枚ずつ計50枚を接着。さらに、裏面の爪を1枚につき2個ずつ(全部で200個)を取り付けていかなくてはならないので根気が必要です。

▲キットの履帯は転輪の上下部分は連結状態を1パーツで再現されているが、前後の部分は1枚ずつパーツを繋いでいかなくてはいけない(各25枚)。

▲繋いだ履帯の裏側に脱落防止の爪を取り付けていく。全部で200枚!小さなパーツなのでピンセットで根気よく取り付けていく

転輪への履帯の組み付けは難易度が高いと言いますか、ちょっとしたコツが必要です。バラバラの履帯の接着には、「流し込み接着剤」を使うと上手くいきますよ。組み合わせた履帯の裏側に流し込み接着剤を塗り込んで繋げていきます。

▲裏側から流しこみ接着剤で履帯を繋いでいく。接着剤の刷毛だと、接着剤の含みが少なく、やりにくいので細めの筆を使うと作業が楽

接着して30分程度乾燥させてからスプロケット・ホイール、アイドラー・ホイールそれぞれに沿わせるように慎重に曲げていきます。このタイミングでは、接着剤は完全に固まっていないので、履帯を繋げたまま曲げられるのです。

上下履帯を繋げたらボックスアートや実車写真などを参考にし、不自然にならないように接着固定すれは完了です。完成後はしっかりと乾燥時間をとりましょう。

▲裏側から履帯に塗った接着剤が完全に固まらない状態(30分~1時間以内)でスプロケット・ホイールとアイドラー・ホイールに沿わせて履帯をゆっくりと曲げていく。ここで無理な力をかけると接着が剝がれてしまうことがあるので慎重に

▲曲げた履帯を上下の履帯につないでベルト状に。転輪に組み付ける前にメタルブラックで塗装しておく

▲組付けたあと帯上部分が自然な感じ(スプロケット・ホイールの後ろ側が重量で垂れているように)に転輪に馴染ませて接着剤で固定、しっかりと乾燥させる

 

【達人流!転輪&履帯製作のポイント】

メカメカしい複合転輪と幅の広い履帯はドイツ重戦車の象徴です。どちらもリアルなディテール再現するために、パーツが細分化され、製作には正直手間がかかります。転輪にしても履帯にしても個々のパーツは接着面積が少なく、取り付けには十分な乾燥時間を取り、しっかりと固定するのがポイントです。接着剤の硬化不足は転輪の整列がずれたり、履帯を組んでいる途中にパーツが外れるといったトラブルの原因になります。

 

 

【プラモ製作で知っておきたいアイテム使いこなし術】

●プラ用接着剤の特性を理解して使いこなそう!
プラモデル用の接着剤は、塗布した部分のスチロール樹脂を溶かして溶着させることでパーツを固定します。今回履帯の組み立てで使用している流し込み接着剤も同様の効果があります。ただし、トロっとした通常の接着剤に比べるとサラサラの液状なのが特徴です。

さて、同じプラモ用接着剤なのに何が違うのか?

詳しく解説すると長くなりますが、一言でいえば、細かいパーツの接着に適しているといったところでしょうか。トロっとした接着剤は、パーツの片側に塗布して貼り合わせます。しかし、流し込み接着剤でパーツを繋げて塗布すると、サラサラなのでパーツの接合面に毛細管現象で流れ込んで接着できてしまうのです。メリットは、パーツの表面をほとんどと溶かさないのでキレイな仕上がりが得られること。特に小さいパーツの接着に有効です。接着面の仕上がりがきれいなので流し込み接着剤しか使わないというモデラーも増えています。

*  *  *

次回はアクセサリー類の製作。車体の迷彩塗装をおこないます。お楽しみに!

>> 達人のプラモ術

<写真・文/長谷川迷人>

 

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