【スズキ ジムニー刷新②】新型につながった48年の進化の歴史。名車の系譜を振り返る

■世界で285万台も売り上げた“スズキの代表作”=ジムニー

1998年のデビュー以来、20年にわたって生産が続いた先代の3代目ジムニー。ここ10年ほどは、モデルチェンジのウワサが出ては消えるといった状態でした。とはいえ、現在では数少ない本格クロスカントリー4×4であり、走破力については「これ以上、何を望むのか?」といった性能を身につけていましたから、大きく変える必要がなかった、というのが事実かもしれません。そもそも、ジムニーが誕生した背景には「“プロ用ツール”として4輪駆動車が必要とされた」という事情がありました。

>>初代:1970~1981年

「自然に挑戦する男のくるま」など、過酷な使用環境を思わせるキャッチコピーを採用した初代ジムニー。ラダーフレームや副変速機を備える4輪駆動システムなど、軽自動車としては唯一の本格オフロード4×4として登場しました。

エンジンは、当初、排気量359ccの空冷2サイクル2気筒を搭載していましたが、後に水冷3気筒エンジンに刷新されたほか、排気量を539ccに拡大するなどの進化を遂げました。またボディも、初期型は簡易的な幌を備えたオープンモデルでしたが、追ってパネルバンが追加されています。

初代が同乗した頃、日本国内ではすでにトヨタ「ランドクルーザー」や三菱「ジープ」といった乗用車規格の4WDは販売されていました。しかしジムニーは、軽自動車規格ならではの小回りの良さや維持の容易さから、大規模な建設現場や各種インフラ事業、林業関係などの過酷な現場で活躍するようになります。

こうしたプロ用途での信頼性が知られるようになると、本格派に憧れるユーザーを中心に、レジャー用ビークルとしても注目を集めるように。また、この初代モデルから、すでに海外へ向けての輸出も行われました。

>>2代目/1981~1998年

初代のデビューから11年が過ぎた1981年、ジムニーは初のフルモデルチェンジを実施します。エクステリアはボクシー、かつモダンなイメージへと変わりましたが、コンパクトな車体の四隅に配置された大径タイヤなど、その姿はひと目でジムニーと分かるものでした。

ちなみに、ボディは従来どおりソフトトップとメタルトップ(金属製の屋根が備わる箱型ボディ)が用意され、初期モデルの前者には幌ドア、ハーフメタルドア、メタルドアと、複数のドア形状が用意されました。

また、17年間の製造期間において、メカニズムの変更が多数行われたのも2代目モデルの特徴です。当初、エンジンは排気量539ccの水冷2サイクル3気筒でしたが、後に543ccのターボ付き4サイクル3気筒が追加されたほか、軽自動車の規格拡大に合わせ、657ccターボ付き4サイクル3気筒へと変更。さらに最終モデルには、アルミ合金製のDOHC4バルブエンジンを搭載するモデルも用意されました。

2代目モデルは、軽自動車規格の変更に合わせ、内外装やメカニズムに大幅な変更を受けたほか、バリエーションの拡充にも積極的でした。ハイルーフ車や、ハイルーフ部に小さな窓を設けたパノラミックルーフ車、小型車規格となる1000ccや1300ccエンジン搭載車、今日へと続くワイドドレッド&小型車規格の「ジムニーシエラ」が追加されたのも2代目の時代です。

また1995年には、サスペンションがリーフスプリングからコイルスプリングへと改められるなど、快適性や操縦性の向上も図られました。

2代目モデル以降は、アジアやヨーロッパでも生産が行われ、現地の環境に合致した派生モデルが数多く生産されました。

>>3代目/1998~2018年

実に20年という長きにわたって生産された、先代の3代目モデル。エクステリア、インテリアとも洗練、かつスポーティなデザインへと生まれ変わりました。一方で、オフロードの走破力や信頼性に対するこだわりは不変で、ラダーフレームやリジッド式サスペンションといったメカニズムは、新たに設計を行った上で継承されています。

エンジンは、従来どおり最高出力は64馬力の660cc直列3気筒DOHCターボで、トランスミッションは5速MTと4速ATが用意されました。

また1990年代末になると、安全性や快適性に対する要求が高まり、エアバックやABS(99年末以降は全車標準化)、パワーウインドウなども設定されるように。その後2002年には、フロント回りのデザインを変更。2004年にはインパネ回りを始めとする内装デザインの変更を行い、副変速機の切り替えをレバーからスイッチ式に改めるなど、3代目モデルはほぼ2年に1度のペースで改良され、細部にわたってブラッシュアップを重ねます。

2代目の時に登場したジムニーシエラの流れを汲む小型車規格モデルは「ジムニーワイド」として1998年初頭に先行デビュー。こちらは最高出力85馬力を発生する1.3リッター直4エンジンが搭載されました。2000年には新開発エンジンに変更、さらに2002年には、ネーミングを再びジムニーシエラへと改めています。

* * *

以上、駆け足ではありますが、歴代ジムニーついて振り返ってみました。昨今はクロスオーバーSUVの人気が拡大していますが、そうした状況にあってジムニーは“最も見掛ける機会の多い本格クロスカントリー4×4”だと思います。

特に、郊外やちょっとした山間部へ出掛けると、遭遇率はグッと高まりますし、そんな状況に接すると「あぁ、ジムニーって生活に欠かせない道具として浸透しているんだな…」と感じさせられます。

ちなみに、アジアやヨーロッパでも活躍するジムニーの世界累計販売台数は実に285万台! 世界中に浸透した“スズキの代表作”であることは間違いありません。今回デビューした4代目の新型ジムニーシリーズも、そうした輝かしい歴史に新たな1ページを刻む名車となることに期待しましょう。

<SPECIFICATIONS>
☆ジムニー XC(5MT)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1725mm
車重:1030kg
駆動方式:4WD
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:5速MT
最高出力:64馬力/6000回転
最大トルク:9.8kg-m/3500回転
価格:174万4200円

<SPECIFICATIONS>
☆ジムニーシエラ JC(4AT)
ボディサイズ:L3550×W1645×H1730mm
車重:1090kg
駆動方式:4WD
エンジン:1460cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:4速AT
最高出力:102馬力/6000回転
最大トルク:13.3kg-m/4000回転
価格:201万9600円

(文/村田尚之 写真/村田尚之、スズキ)


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