【実力テスト】日産が展開する7万9920円の自動ブレーキ、果たして効く?

ここへきて、日産の自動ブレーキにかける意気込みは、ハンパなものではありません。2015年の秋までには、主要量販モデルへ自動ブレーキを標準装備すると公言。目下、着々と前進しています。例えばエクストレイルには、エマージェンシーブレーキを核とする“エマージェンシーパッケージ”を用意。これは非装着車に対し、税込み7万9920円アップという買い得なプライス設定です。

では、果たして効くのか?

エクストレイルのエマージェンシーブレーキは「約10~80km/hの範囲で作動。停止している車両や歩行者に対しては、約60km/h以上では作動しません。また、約30km/h以下で衝突回避の能力があります」とのこと。

では早速、試してみましょう。

30mくらい離れた真正面に、クルマの後ろ姿を描いたバリアが置いてあります。

「では、20km/hで直進してください」

助手席に座るインストラクターにいわれるがまま、軽くアクセルを踏んで20km/hをキープ。バリアが近づくと、警告音とともにうっすらとブレーキを引きずる感じが伝わってきた。軽く減速しているものの、さらにバリアは近づいてくる。警告にもかかわらず、危険回避動作をしないでそのまま直進する。そしていよいよ、バリアに正面衝突するかと思われた寸前。

ガガガッ!

っと、自動的にフルブレーキング。止まった…! バリアの手前1m足らずのところで完全停止。
思った以上に、これは強力。実用的です。

例えば行楽シーズンの高速道路。ゴー&ストップを繰り返す渋滞にハマっているうちに注意散漫になり、危うく前車に衝突しそうになった…という経験、多くの人にあるはず。この機能は、そういうシチュエーションで効力があると思うのです。事故を起こしてしまった時の時間的損失、精神的苦痛、解決のための労力、そしてコストを考えると、すぐに7万9920円分の価値は見出せます。

もはや結論は出たのでしょうか…。

いやいや、なぜ20km/hなのか? もう少し速度が出ていた場合もカバーできないものなのでしょうか? 自動ブレーキの開発を担当する日産の青柳 究(きわむ)さんに直撃してみました。

「エマージェンシーブレーキは30km/h以下なら、クルマや人の前で停止することも可能です。実は、対人事故の多くが30km/h以下で発生しているという統計があります。もちろん、雨の日ですとか滑りやすい路面状況などを考えると、いついかなる時も止まれるとは申し上げられませんが…」

おぉ! 守備範囲は20km/hではなく20km/hまでなのですね。そうなると欲が出てきて、50km/hだとか60km/hで効くようにできないものか…、そう思ってしまうのが人情というものです。

「はい、可能です。スカイラインは60km/h以下なら衝突を回避する能力があり、クルマの安全性能の指標になる“JNCAP予防安全性能評価”で最高ランクの評価を獲得しています。ただし、スカイラインには“ミリ波レーダー”を使っているので、少しお値段が高くなってしまいます。より多くのドライバーへ安全をお届けするには、リーズナブルであることも大切です。そのために、エクストレイルなどにはカメラ方式を採用しているのです」

「しかも日産のカメラ方式は、単眼でクルマの後部や人間を識別できるようになっています。主に、ハードウェアとしてはカメラやCPUの高性能化、ソフトウェアとしては画像認識技術の進化によって実現できた機能です」

カメラが進化しているのは、スマホだけじゃなかったのか…。エクストレイルの場合、どう進化しているのですか?

「まずは“フレームレート”ですね。1秒間を何コマの画像に切り分けられるか。そして、被写体を識別するための“解像度”、さらには見る範囲となる“画角”が以前より進化しています。フレームレートが向上したことで、より高い速度域でも効果的になってきましたし、高解像度になったことで、被写体を見間違う確率が減っています。よりワイドな視野で、クルマの前方の状況に目配りできるようになっています」

なるほど。7万9920円分のメリットは十分あるように思います。

「でも、エマージェンシーブレーキパッケージに含まれるのは、エマージェンシーブレーキだけではありませんよ。このパッケージは“踏み間違い衝突防止アシスト”も含んでいるのです」

そのように聞いて、ノートの踏み間違い衝突防止アシストを体感。

なるほど、これは賢いシステム。駐車時などに利用する“フロント&バックソナー”を利用し、壁などの障害物があるのに(ブレーキと間違えて)アクセルを踏んでしまった場合に加速を防止してくれる。

「コンビニなどのガラスも認識して作動します」と青柳さん。

7万9920円分に見合った価値というより、この機能も付いている、となると、価格を超えたバリューを感じる。お安いのではないか?

「さらに、エマージェンシーブレーキで利用しているフロントカメラがレーンを認識し、逸脱した場合に教えてくれる“LDW(車線逸脱警報)”も備わっているんですよ」

「このフロントカメラは、前方にある車両進入禁止標識を検知するので、進入禁止の道へ入ってしまいそうな可能性がある場合にドライバーに知らせてくれる“進入禁止標識検知”もパッケージには含まれています」

もうここまできたら「お得」とか「お安い」といったレベルを超え「付けないと損をしてしまう」と思えるレベル。

結論。日産のエマージェンシーブレーキは、コストパフォーマンス絶大。お得を超えた価値がありました!

(文&写真/ブンタ)

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