【初心者でも安心】Barでも家でもお酒をより楽しむために。バーテンダーに聞く、大人の「お酒の作法」

【酒と泪と男とカルチャー】

行きつけのバーのひとつやふたつ、大人であれば持っていたいもの。しかし、特有の薄暗い空間や暗黙のルールがありそうな雰囲気に気後れし、結局いつもの居酒屋チェーンに入ってしまう…という人は案外多いはずです。

どうすれば気負わずにスマートな“バー・デビュー”ができるのか? 東京・江古田で2001年から営業する、地元に愛され続けるバー「coffee&beer COBRA」のバーテンダー・川本繁晴さんに気になる作法や楽しみ方を伺いました。

────バーは行ったことがない人からするとなかなかハードルが高いイメージです。まずはどんなところに行けば良いのでしょうか?

まずは自分が住んでいる街にある、地元に根付いたバーに行ってみてはどうでしょう。一口にバーと言っても階層があり、1番上がホテルのバー、次が銀座や六本木などのオーセンティックバー、そしてうちのような地元のカジュアルなバーです。初心者はまず近所のバーにコンスタントに通って、ある程度慣れてから少し敷居の高いバーにステップアップすると良いですよ。長くやっている地元のバーなら不明朗な会計の心配もありませんから。

──なるほど。入りづらい印象のバーは店内が暗いイメージもあるのですが、なぜそのようなイメージになってしまったのでしょうか?

諸説ありますが、1920年代・アメリカの禁酒法時代の影響があるかもしれません。その当時、表向きは薬屋など違う業態で営業していて、店内の奥の扉を開けると実はバー(スピークイージー)だったり。そこで粗悪なお酒の味や香りをごまかすためにカクテルが生まれたと言われています。バーという場所はその延長線上にあるので、意識的であれ無意識であれ薄暗かったり、中に入ると別世界になっていたりする演出のところが多いのではないでしょうか。

──そうなんですね。初心者からするとバーはいろいろとマナーみたいなものがあるのではないかと思ってしまうのですが、気を付けるべきことはあるのでしょうか?

そう思っている方は多いですよね。でも、バーは本来美味しいお酒を建前に“良い時間”を過ごすための空間なので、ルールに縛られて過剰に緊張する必要はありません。 オーセンティックなバーだと短パンやサンダルなどの服装はNGというところもありますが、地元のカジュアルなバーならそういったことも気にせず気軽に来ていただいて大丈夫です。

大事なのは「なるべく今を良い時間にしよう」という気持ちを持っているかどうか。その気持さえあれば、基本的には何をしても問題ないんです。ただ、当たり前ですが公共の場としてのマナーは必要なので、大声で騒いだり香水を付けすぎたり、ほかの場所で普段気を付けるようなことはバーでも避けたほうが良いでしょうね。

──普段通りにしていれば良いんですね。ところで、メニューがないお店も多いですが、その場合どう注文すれば良いのでしょうか?

遠慮せずにバーテンダーに聞くのが1番です。その際、バーテンダーからすると1番ありがたいヒントが“食後かどうか”、そして食後であれば“何を食べてきたか”。実はカクテルには「食前(アペリティフ)」「食中(オールデイ)」「食後(ディジェスティブ」という概念があります。なのでそれを伝えてもらえると何を提供するか、より考えやすくなるんです。

加えて、自然な会話のきっかけにもなりますしね。バーはコミュニケーションの場でもあるので。そのうえで“甘めが好き”、“ドライが良い”などの味の希望や、お酒に強いか弱いかを伝えてもらえれば、もう完璧ですね。

────バーテンダーと何を話せば良いのかわからずに緊張してしまう人も、まずは注文がてらコミュニケーションを取ればスムーズということですね。

そう、お酒を含め広い意味での飲食の話をするのが最初は楽でしょうね。“さっき何食べてきた?”から始まり、お酒の話になればそのお酒にまつわるストーリーなども会話になりますし。それでだんだんと慣れてきたら、バックバー(棚)を見て“あれは何ですか?”など聞いていただいたりするとより会話も弾んで楽しくなると思いますよ。

──ところで、バーと言えばやはりカクテル。そう考えるとウイスキー・ロックのようなシンプルなものだけではなく、カクテルも頼まないと失礼なのでしょうか?

ロックでも作る側としては楽なので全然問題ないですよ(笑)。ただ、カクテルにはアルコール度数が強いお酒やクセのあるお酒を飲みやすくして、最終的に自分の好きなお酒を見つけてもらう“入り口”としての役割もあるんです。それで見つけた好きなお酒を最終的にはストレートやロックでも楽しんでほしい、という。

仮にカクテルを頼みたいのであれば、“キング・オブ・カクテル”と呼ばれる食前酒の「マティーニ」はおすすめですね。バーテンダーの哲学が出るお酒なので会話の糸口になります。ただ、ほぼジンで作られているので想像以上に度数が高く、ハードなお酒であることは覚えておいてください。ちなみに、「マティーニ」に入っているオリーブは食べても残してもOK。食べた後のピンはコースターの横にそっと置いておくとよりスマートです。

▲食中酒(オールデイ)のジンフィズ

また、オールデイのカクテルなら「ジンフィズ」ですかね。仲間の「ジントニック」は極端に言うと混ぜるだけですが「ジンフィズ」はシェイカーを振り、生レモンやシロップを使うため、お店のこだわりや基本の技術が如実にわかります。初めてのお客さんに頼まれると偵察されているようで少しドキッとしますし、作る際はいつも少し緊張するカクテルなんですよ。

▲食後(ディジェスティブ)のゴッドファーザー

お酒感があまり得意でない方には、アマレットを使った食後酒「ゴッドファーザー」や甘くて飲みやすい「エスプレッソマティーニ」、アルコール感が少ない「フローズンダイキリ」などでしょうか。スイスイと飲みやすく、酔っ払いやすいので注意しつつ楽しんでもらえると。

──話は変わるのですが、映画やドラマのワンシーンのように「今日の気分に合わせて」のような頼み方はアリなのでしょうか?

そうですね…。ナシではないものの、日本だと少し気取った感じになって浮いてしまうかもしれませんね。ただ、“気分”といっても“味の気分”なら作り手としては大歓迎なので。“今日は甘いものが飲みたい”、“酸っぱいものが良い”といった味のイメージを伝えていただければほとんどのバーテンダーは対応できますよ。

──ちなみにこれも映画やドラマでよく見る、カウンターのほかの人にご馳走するというかナンパの手口のような「あちらの方に(1杯出して)」というシーン。実際はどうなんでしょうか?

うーん…(笑)。絶対にダメというわけではないですが、注意が必要かなと。見ず知らずの人に、急に自分の気分で奢ってもそれは押し付けになってしまいます。例えば、会話のきっかけとして相手が飲んでいるものをバーテンダーに聞いて「じゃあ僕も同じものを。彼女(彼)の分も僕(の会計)に付けておいて」と頼むとスマートですよね。そして、ご馳走したあとは恩着せがましく長々と居座らず、サッと帰るのがカッコいい大人の振る舞いではないでしょうか。

──先程メニューがないお店について伺いましたが、それに伴い金額も不明瞭だったりします。不安に思う人もいると思うのですが、先に予算を伝えるのはアリでしょうか?

営業中、ほかのお客さんがいる空間でお金の話をするのは良い空気を作るためにも避けたほうがベターです。あまりおすすめはしませんが、もし予算に限りがある場合は電話で予約をする際に伝えておくこともお店によっては可能です。また、初めてのお店などで金額感がわからず不安なときは2杯くらいでサッと帰って様子を見るというのも手です。バーは回転率で勝負するお店ではないため、1杯だけで長時間居座られると正直困ってしまうというのが事実。長居したいのであれば、ちゃんとある程度の杯数を頼むというのも大人のマナーですね。

【次ページ】バーテンダーが伝授。自宅でも楽しめるカクテルアイテム&レシピ

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