「皮」から「革」へ。<栃木レザー①>【男が惚れる技ありカバン】

■栃木レザーの革は、製品となって完成する

皮から革へ。動物たちが命と引き換えに残してくれた表皮は、人の手によって加工され、再び生活に役立つ材料となって蘇る。その役割を担い、国内はもちろん、世界でも高い評価を受ける最高品質のヌメ革を作り出すのが、栃木県栃木市に本社を置く『栃木レザー』だ。

同社の革は、主にミモザから抽出されたベジタブルタンニンによって鞣される。その革の特徴は、柔らかさと堅牢性という、相反する性質を兼ね備えていること。昔ながらの手間を惜しまず、各工程で熟練の技を持つ職人によって加工され、丁寧に仕上げられるからこそ生み出せるのだ。出荷された革は、さらにモノ作りの職人の手で製品としての命を吹き込まれて役割を完結する。

栃木レザーは、ヌメ革が本来持つ綺麗な肌目を最大限に引き出している。その革を使用した製品は、使い込むほどに色艶を深めていく。その経年変化は、持つ人の使い方によって表情が変わる。つまり栃木レザーで作られた鞄や小物は愛着が湧き、そう、まさに “自分だけの作品” として長年楽しむことができるのである。その手間のかかる工程の一部を紹介しよう。

 

■「皮」から高品質の「革」へ

【1】原皮を石灰漬けで脱毛した後、裏側に残る皮下組織や脂肪などをローラーで除去する

【2】脱毛した原皮を巨大なドラムに入れ、強アルカリの石灰を除去して中和する。同時に酵素によって表面を滑らかにする

【3】植物由来のタンニン溶解液で、濃度の薄い層から高い層へ移しながら約20日間鞣す

【4】鞣した革をローラーにかけながら洗浄して内部の水分を抜く

【5】乾かした革をドラムに入れて魚脂を加え20分間回転させ、さらに脂を足して20分間回転させて染み込ませる

【6】セッターと呼ばれる機械で厚みを均一にする

【7】約10日間乾燥させる。その後、一部は素上げの革として出荷される

【8】用途に合わせた厚さに漉く

【9】ドラムを使って要望に応じた柔らかさにする。再鞣しや染色を行う

【10】染色で浸透した水分を抜き、同時に生じた縮みなども元に戻すサミングセッターにかける。

【11】厚手の革を注文された場合や、伸びにくい性質のものはハンドセッターをかける。表面の細かいシワはハガネで丁寧に伸ばし、滑らかにしていく

【12】再び乾燥。薄手なら4日間程度、厚手は1週間くらいだが、乾燥期間は天候によっても左右される

▲オーダーによっては、さらに手間をかける。時には2ヵ月以上も鞣すものもある

バイブレーションと呼ばれ、乾燥で硬くなり過ぎた革の繊維を細かい振動でほぐして柔らかくするもの。スプレーガンでの表面の塗装は色艶を良くすると同時に、耐久性を高める効果もある

 

>> 男が惚れる技ありカバン

本記事の内容はGoodsPress10月号42-43ページに掲載されています

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(取材・文/松尾直俊 写真/木村利美)

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