日本の匠が手がける「宮内庁御用達」の傑作品【CRAFTSMANSHIP】

【「鞄」という文字を発案した「銀座タニザワ」のダレスバッグ】

明治7(1874)年、初代・谷澤禎三が鞄の輸入販売する谷澤商店を開いたことがタニザワの始まり。初代は鞄の製造も手がけ、明治10年の第一回内国勧業博覧会で出品した鞄が受賞、その賞状には『堤囊(つつみふくろ)』と書かれていた。

▲タニザワの創業者である、初代・谷澤禎三氏。日本で初めてネオンサインを店舗に導入するなどアイデアマンだったという

このとき初代が、かばんに対する呼称の一つだった『革包(かくほう)』の文字を横に並べて、『鞄(かばん)』と読ませることを提案したという。その後、明治23年に現在の銀座に移転した際、『鞄』の文字を書いた大看板を店頭に掲げた。

「これが銀座をお通りになった明治天皇のお目にとまり、侍従職を通し“何と読むか?” との御質問を受け、“かばんと読みます” と応えたそうです。これをきっかけに『鞄』の字が全国に広まったと伝えられています」(銀座タニザワ常務取締役鈴木政雄さん)

▲「鞄」の文字を発案し、店頭に大看板を掲げていたが関東大震災により焼失。この写真の字体も当時のものではないそうだ

また、タニザワの2代目はダレスバッグを考案。昭和26(1951)年、サンフランシスコ対日講和条約締結のため来日したジョン・F・ダレスが持っていた口金式の鞄に感銘を受け、試行錯誤の末に完成させ、ダレスバッグと名付けたという。

▲左がダレスバッグを生み出した2代目・谷澤甲七氏。タニザワのダレスバッグはたちまち人気となり世に広まった

そんな歴史を持つタニザワは以前より皇室御用を賜っており、昭和28年に英国エリザベス女王の戴冠式に出席する皇太子殿下(現在の天皇陛下)の旅行鞄を納入。また昭和34年には、御成婚にあたり旅行用など鞄一式を宮内庁に納入している。

▲皇太子殿下(現・天皇陛下)が英国に渡る際に納品された御調度品

▲旅行用鞄の一つとして納品された大容量の手提げ鞄。牛革を使用した丈夫な作りで、そのデザインからは品格が漂う

歴史と実績に裏打ちされたタニザワのバッグが、傑作品であることは言うまでもない。

▲銀座の店舗には、菊の御紋の勲章が飾られている。しかし賜った経緯など詳細は、今では不明なのだとか

▲甲冑に使われていた黒桟革の鞄や、型押しが美しいブルシリーズなど、ラインナップも豊富

▲御用鞄として納品した旅行鞄のデザインを踏襲したモデル。納品したものは牛革だったが、これは豚革を使用。(11万1240円)

▲御用鞄はすべて一点モノ。このブリーフは以前、皇太子殿下がご使用された鞄に近いデザインなのだとか。(7万4520円)

 

タニザワ
「ダレスバッグ(左)053-038/(右)053-025」(27万円/19万4400円)

この形状の口金式の鞄は「ダレスバッグ」と呼ばれ一般化しているが、実はタニザワが元祖。左は栃木レザー製、右はブライドルレザー。高品質レザーを贅沢に使いながら価格を抑えた逸品。

【次ページ】今上天皇のお召し物を仕立てる金 洋服店

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