ついに発表!マツダ ロードスター、その革新と衝撃

まずは具体的に、どのくらいドライバーの皆さんのノドが渇いているのか? 発表前にしてすでに、3000台以上を受注。月間販売の予定台数は500台なので、現時点で半年分のオーダーが入っていることになります。

このアツさ、過熱ぶりは、初代モデルを思い起こさせるといっても過言ではありません。そもそも初代ロードスターは、どのようなクルマだったのでしょうか?

クルマのジャンルのひとつに“ライトウエイト・スポーツ”というものがあります。いえ、かつてありました。1950年代から'60年代に人気を集め、たくさんのモデルが生まれたものの、'70年代には環境対策などさまざまな問題から淘汰されてしまいました。その諸問題をブレークスルーする技術的な裏付けと、ライトウエイト・スポーツへのパッションから生まれたのが、初代ロードスターだったわけです。1989年に発売されると大成功を収め、広島にある本社工場だけでは納入が間に合わず、山口県の防府工場でも生産されることになったといいます。

これは世界的に、とてつもないインパクトを生み出しました。ライトウエイト・スポーツにもはや“市場”はないと考えていた世界中の自動車メーカーが、初代ロードスターの成功を受け、次々とこのジャンルにジャンピングイン。その影響力がいかに大きかったのかが想像できます。

例えば…。

BMW「Z3」
メルセデス・ベンツ「SLK」
フィアット「バルケッタ」
ローバー「MG F」
ポルシェ「ボクスター」
アウディ「TTロードスター」
ホンダ「S2000」
トヨタ「MR-S」

これらのモデルはすべて、大なり小なりロードスターの影響を受けているといえます。世界を動かした初代ロードスターは、“人馬一体”を旗印に、マツダを象徴するモデルにまでなったといえるでしょう。

だからこそ、'90年代のバブル崩壊、2008年のリーマンショック、そして、震災などの苦難を乗り越え、モデルチェンジを重ねながら現在まで生きながらえることができたのです。今や、マツダの作るクルマの根幹、ブランドアイコン、そして魂ともいえる存在なのです。

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そして、初代が誕生した'89年から、今年で実に25年。この先の25年も、ロードスターが多くのドライバーを幸せにするために、新型が目指したものとは? 開発主査の山本修弘さんは、発表会でこう語りました。

「次の25年を経て50周年を迎えても、愛され続けるロードスターであるために。我々は『(ロードスターの存在を)守るために変えていく』」と。

4代目となる新型ロードスターに求められたのは、進化ではなく、革新(変化)だったのです。では、その革新のキモを見てみましょう。

1.構造革新=小型軽量化

新型ロードスターは大胆なまでにコンパクトになりました。全長3915mm(3世代目=4020mm)、全幅1735mm(同=1720mm)、全高1235mm(同=1245mm)、ホイールベース2310mm(同=2330mm)。(トレッドが広がり走行性能にプラスとなる)全幅は別として、全長は105mmもショート。しかもフロントオーバーハングは45mm、リアオーバーハングは40mmも短くなっています。

同時に、運動性能を高めるために、重量配分を見直しています。具体的には、エンジンの搭載位置を後方へ15mm、下に13mm下げ、ドライバーのポジションも20mm下げています。ちなみにドライバーのポジションについては、着座位置をクルマのセンター寄りにすることで、クルマとドライバーとの一体感が強まるようにしています。

2.ドラスティックな軽量化

ロードスターはこれまでも、アルミ素材を多用してきました。先代モデルでは、フロントボンネットフードやリアトランクリッド、そして、トランスミッションとリアディファレンシャルを結合する“パワー・プラント・フレーム”などの素材を、アルミとしていました。新型ではそれらに加え、フロントフェンダーやソフトトップのパネル、フロント&リアバンパーレインフォースメントなども、新たにアルミ化しています。非常に豪勢な設計です。

さらには、強度に影響しない部材を肉抜きするなど、徹底した軽量化の施策である“グラム作戦”を実行。結果、新型のSグレード(6MT)は、車両重量が990kgと1トンを切り、先代に比べて120kgもダイエット。初代の940kgに迫る軽さとなっています。

さて、軽量・コンパクトという圧倒的有利な物理特性を身につけた新型ロードスターは、その成果を“走り”で存分に魅せてくれることでしょう。その全貌は別の機会に。

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最後に、ロードスターについて最大級のトピックスをもうひとつ。それは、運転席に腰掛けながら、楽にソフトトップを開閉できるようになったこと。従来も決して無理ではありませんでした。しかし、幌の重さ、操作性などからアクロバティックな体の使い方を求められた結果、全身のこむら返りとでもいいましょうか、(ドライバーの)故障の原因になりかねませんでした。

新型のソフトトップは、リンクのジオメトリーを見直したことに始まり、アシストスプリングでサポートすることなどによって、運転席に座ったままスマートかつエレガントに開閉できるようになっています。ちなみに、ソフトトップのロックレバーに連動してドアウインドウが自動的に下がるなど、新機構による開閉の“時短”も実現しています。これもワザあり部分ですね。

以上、駆け足ではありますが、発表会の会場で次々と繰り出された、新型ロードスターの“革新”を並べてみました。

次回は、発表会の会場で久しぶりにお会いした、トヨタ自動車・多田さんのショートインタビューをお届けします。多田さん? もちろん、トヨタ「86」のチーフエンジニア、多田哲哉さんのことです。それでは、お楽しみに。

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<SPECIFICATIONS>
ロードスター S(6MT)
ボディサイズ:L3915×W1735×H1235mm
車重:990kg
駆動方式:FR
エンジン:1496cc 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
最高出力:96kW(131馬力)/7000回転
最大トルク:150Nm(15.3kg-m)/4800回転
トランスミッション:6速MT
価格:249万4800円

(文・写真/ブンタ)

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