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心拍数を計測できるメリットのひとつに、スポーツでの活用が挙げられる。心拍数と人間の運動能力にはかなりの相関性があり、心拍数を計測しながらトレーニングすることで効率的に心肺能力の強化を図ったり、効率的に脂肪燃焼、つまりダイエットを実現することができる。

ソニーの「Smart B-Trainer SSE-BTR1」は、簡単に言うと「ウォークマン」に「心拍計」や「GPSセンサー」などの各種センサーが付いたようなもの。最近はリストバンド型心拍計や、心拍計内蔵スマートウォッチ、心拍計内蔵Bluetoothイヤホンなどさまざまな機器が登場しているが、Smart B-Trainerに注目するポイントは5つある。

ソニーが2015年3月7日に発売した「Smart B-Trainer SE-BTR1」

ソニーが2015年3月7日に発売した「Smart B-Trainer SE-BTR1」

1.単体でランニング記録ができる

注目ポイントの1つめは、「単体で使える」ことにある。胸に巻くチェストベルト型、腕に装着するリストバンド型など心拍計にはさまざまなスタイルがある。ただし低価格のリストバンド型モデルには単体で心拍数(脈拍数)を計測するだけのものが多く、スマートフォンと連携する機能などは備えていない。一方でスマートフォンと連携する機能を備えたモデルの場合、単体で利用することはできない。

その点、Smart B-Trainerはポケットにスマートフォンを入れたままでも、あるいはスマートフォンを携行しない場合でも、同じようにトレーニングできるのが大きな特徴。心拍数、GPS、加速度、ジャイロ、電子コンパス、気圧を計測するセンサーを内蔵しており、スマートフォンに頼らずともこれらの数値を記録できるというわけだ。

最近のスマートフォンは大型化しており、ランニングのトレーニング時に携行したくないという人は多いだろう。iPhoneシリーズなどもiPhone 4Sあたりまでは、アームバンド型ケースで腕に装着するのもラクだった。しかしiPhone 6 Plusになると、腕に装着するのは邪魔で仕方がない。単体で動くのであればこんなうれしいことはないだろう。

Smart B-Trainer SSE-BTR1とスマートフォンアプリ「B-Trainer for Running」

Smart B-Trainer SSE-BTR1とスマートフォンアプリ「B-Trainer for Running」

2.良好な装着感と使い勝手

2つめとして、装着感の良さと使い勝手の良さが挙げられる。初回の設定は無料の専用アプリ「B-Trainer for Running」(Android、iOS対応)で行える。画面に従って進めればペアリングや機器の登録ができるので迷わずに使えるようになるはずだ。

Smart B-Trainer本体の重さは約43gで、軽量化が進むBlutoothイヤホンと比べると決して軽い方ではない。筆者も装着する際に「ちょっとゴツいな」という印象を受けたが、一度装着してみると違和感は全く感じなかった。「耳に装着している」という感じは抜けないが、装着している間中、違和感を持ち続けているという感じではなかった。

ネックバンド型のSSE-BTR1を装着したところ

ネックバンド型のSSE-BTR1を装着したところ

ボタンが多いので、最初は使い勝手に戸惑う点もあるだろう。音楽の再生・一時停止から曲送り・曲戻し、電話の着信(スマートフォン連携時)、トレーニングメニューのスタート・一時停止、音量調整などさまざまな機能を利用するため、ボタンが多くなってしまうのは仕方のないところだ。しかし2〜3回トレーニングをすれば慣れてしまう。

3.メモリーを内蔵し、音楽も単体で楽しめる

3つめのポイントは、単体で音楽も楽しめることだ。Smart B-Trainerは16GBメモリーを内蔵しており、本体内に転送した楽曲を再生しながらランニングできる。転送は付属のUSBクレードルでパソコンと接続し、ソニーの楽曲管理・転送ソフト「Media Go」(Windows対応)などを通じて行う。エクスプローラなどを通じてドラッグ&ドロップで転送することも可能だ。

本体にディスプレイなどを搭載していないため、スマートフォンで再生するのに比べて聴きたい曲を選ぶのがなかなか困難なのは確か。とはいえ、本体だけで音楽を聴けるというのは嬉しい。

付属のクレードルでパソコンと接続したところ

付属のクレードルでパソコンと接続したところ

SSE-BTR1の内蔵メモリーに保存されている、Windows用楽曲管理・転送ソフト「Media Go」を使って楽曲を転送できる

SSE-BTR1の内蔵メモリーに保存されている、Windows用楽曲管理・転送ソフト「Media Go」を使って楽曲を転送できる

4.コーチング機能を利用できる

4つめのポイントは、さまざまなトレーニングプランを用意しており、音声によるコーチングを利用できることだ。トレーニングプランは設定した距離や時間、カロリーなどのゴールを決めて走る「ベーシックメニュー」と、プロのランニングコーチによる音声フィードバックを利用した「プレミアムメニュー」を利用できる。

プレミアムメニューはマラソン解説者やコーチとして知られる金哲彦氏(ナイキランニングアドバイザー)が作成したメニュー(全5メニューに加えて2015年夏に5メニューが追加される予定)のほか、アシックスが開発したランニングトレーニングプログラム 「MY ASICS」との連携も15年春に開始される予定となっている。

プレミアムメニュー「金哲彦のSmart Running」を開いたところ

プレミアムメニュー「金哲彦のSmart Running」を開いたところ

ベーシックメニューには平常時の心拍数と最大心拍数を設定して自分に最適なトレーニングができる「効率的に脂肪燃焼」、「持久力アップ」といったメニューも用意されている。本来、最大心拍数はスポーツ医療に対応する医療機関などで計測する必要があるが、一般的には「220−年齢」程度だと言われている。平常時の心拍数はSmart B-Trainerを使って計測できるので、これらの数値をアプリのプロフィールに入力することでトレーニングが可能だ。

トレーニングプランの選択画面

トレーニングプランの選択画面

5.防水機能を備え、スイミングでも利用可能

5つめのポイントとして、IPX5/8相当の防水性能を備えていることにも注目したい。ランニング中にたっぷりと汗をかいても水洗いが可能なだけでなく、好きな音楽を聴きながらスイミングに利用することもできる。スイミング用には、ヘッドホン部への水の浸入を防ぐ付属の水泳用イヤーピースも付属している念の入りようだ。

IPX5/8相当の防水性能を備えている

IPX5/8相当の防水性能を備えている

結論:課題もあるが、お買い得感は高い

もちろん、課題もいくつか感じられた。残念だったのは、一般的な規格である「Bluetooth Smart」対応の心拍計としては使えないらしいこと。他社の心拍計や心拍計内蔵BluetoothイヤホンなどはRuntastic社の「Runtastic」やアディダスの「Adidas miCoach」などの他社製ランニング・トレーニングアプリと連携して心拍数を計測することができたが、Smart B-Trainerはこれらのアプリで認識することができなかった。

オフィシャルの「B-Trainer for Running」アプリの出来が悪いわけではないし、トレーニングプランを本体に転送して単体で利用するためにはオフィシャルアプリを使うしかない。しかし他社のアプリも利用できるのであれば、利用の幅が広がるのは間違いないだろう。

B-Trainer Runningアプリのランニング履歴表示画面

B-Trainer Runningアプリのランニング履歴表示画面

走行ペースや心拍数などの記録を走行ルートの地図にオーバーラップして表示できる

走行ペースや心拍数などの記録を走行ルートの地図にオーバーラップして表示できる

もうひとつ残念だったのは、コーチングの音声があまり頻繁ではなかったこと。特に心拍トレーニングを行う「効率的に脂肪燃焼」、「持久力アップ」の2つのプランの場合、自分がどのくらいの心拍数で走っているのか、それが目標の範囲内に収まっているのかを知ることが重要になる。しかし音声がなかなか聞こえてこないので、ボタンを押して自分で確認しなければならない。心拍トレーニングに慣れている人ならこれでも問題ないかもしれないが、少なくとも10秒から15秒ごとぐらいにコーチングしてくれるプランも必要ではないかと感じた。

最後は少し辛口になったが、各種センサーが付いて本体だけでトレーニングが可能になっており、内蔵16GBメモリーで音楽もたっぷりと楽しむことができる。どんな天気でも安心して使える防水性能も備えていながら、実勢価格2万8620円というのは決して高くないはずだ。ランニングのトレーニングに最適のデバイスを探している人はもちろん、「春から心機一転、ダイエットを始めたい」という人にぴったりのモデルではないだろうか。

本体を固定できるようになっている専用キャリングポーチも付属する

本体を固定できるようになっている専用キャリングポーチも付属する

 

(文/安蔵靖志)

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