【検証:新カーブランド】フランスの新星、DSが目指す世界とは?:岡崎五朗の眼

1955年に登場したシトロエンのDSは、自動車の歴史に強烈な足跡を残したモデルだ。

サスペンションのほか、ブレーキ、パワーステアリング、クラッチ、トランスミッションの操作に油圧を使うという凝りに凝ったメカニズムや、宇宙船を想わせる超モダンなデザインは、60年の歳月を経た今でも新鮮だ。

先進性=アヴァンギャルドという、時間軸と密接な関わり合いを持つ価値観を、普遍的な価値へと昇華させたことが、DSの魅力。

作り手側に天才的なインスピレーションがなければ到達し得ない領域だが、それが決して不可能ではないというDSが見せつけた事実は、多くのエンジニアやデザイナーを勇気づけたはずだ。

事実、自動車デザイン界の巨匠であるジョルジェット・ジウジアーロや、フォルクスワーゲンのデザイン部門を率いて先頃カーデザイナーの引退を発表したワルター・デ・シルヴァらは「最も影響を受けた1台」としてDSの名を挙げている。

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そんな“名車中の名車”であるDSの生誕60年を祝い、2015年5月、フランスはパリで盛大なイベントが開催された。

欧州各国から600台以上のDSが集結し、パリ郊外のサーキットからコンコルド広場までパレードランをした。さらに、コンコルド広場とルーブル美術館をつなぐチュイルリー公園には巨大な特設会場が設営され、DSにちなんださまざまな展示が行われた。

規模にしてもクオリティにしても驚くほど気合いの入ったイベントだったのだが、これには理由がある。実はこのイベント、DSブランドがシトロエンから独立するお披露目会も兼ねていたのだ。

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ブランドの独立に伴い、開発、デザイン、販売の各部門も分離され、今後はDS専用のショールームも増えていく予定だ。

DSブランドがシトロエンから独立することによって、PSAグループはプジョー、シトロエン、DSという3つのブランドで構成されるようになる。その中でDSが担うのは、プレミアム領域。それも、夜のパリをイメージした妖艶なムードを打ち出し、ドイツのプレミアムブランドとの差別性を打ち出していく計画だ。

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フラッグシップのDS 5(もうシトロエン「DS 5」とは呼ばない)を筆頭に、DS 4、DS 3の3モデルを擁するDSの中で最量販車種に当たるのが、コンパクトクラスのDS 3だ。

先のマイナーチェンジで“ワールドエンジンオブザイヤー”の1.0~1.4リッター部門で最高位にランクされた、1.2リッター3気筒ターボエンジンを新設定。日本のアイシン製6速ATとの組み合わせによって、よりスムーズかつ力強い走りと、優れた燃費を獲得した。

従来、MTしか選べなかったDS 3 カブリオにも同じパワートレーンが用意されたことは朗報だ。小粋なデザインや小気味よい走りを含め、MINIの好敵手として、今後ますます存在感を強めていくだろう。

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DSブランドは2020年までに、6車種の投入を予定している。フランス発のプレミアムブランドとして、今後の展開が楽しみだ。

<SPECIFICATIONS>
☆DS 3 カブリオ ソー・パリジェンヌ
ボディサイズ:L3965×W1715×H1460mm
車重:1200kg
駆動方式:FF
エンジン:1199cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:110馬力/5500回転
最大トルク:20.9kg-m/1500回転
価格:311万円

(写真/&GP編集部)

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