ケアしておきたい生成AI使用リスクQ&A【デジタル&AIギア 完全ガイド】

Q:AIで作った文章や画像は商用利用できる? そもそも著作権はある?

A:商用利用できるかは、まず使ったAIサービスの利用規約をきっちりと確認したい。たとえばChatGPTでは、OpenAIは生成物について自社の権利を主張しないとしており、OpenAIとの関係に限っては、利用者がその生成物を利用できる立場になるとされている。ただし、その生成物に著作権が認められるか、他人の権利を侵害していないかは別問題。文化庁は、AI自体は著作者にならず、AI生成物が著作物になるかは、人間に創作意図や創作的な寄与があったかなどを個別に判断すると説明している。さらに、他人の著作権や商標権などを侵害していないかも別途確認が必要だ。仕事で使うなら、生成から修正までの過程も残しておくと安心だ。

Q:既存の漫画やイラストそっくりの生成物でも使って大丈夫?

A:残念ながら「AIが作ったから大丈夫」とは限らない。日本における著作権侵害では、既存作品との「類似性」と、その作品に基づいて作ったといえる「依拠性」の両方が重要になるからだ。文化庁は、単に作風やアイデアが似ているだけであれば著作権侵害となる可能性が低いとしながら、元作品の創作的な表現を直接感じ取れる生成物を利用した場合、それがAIによって生成されたものであっても侵害に当たり得るとしている。生成AIに対して特定作品の画像を入力したり、作品名やキャラクター名を指示に含めたりした事実は、依拠性を判断する材料にもなり得る。広告やSNSで画像を公開する前に、類似作品がないかを確認し、似すぎているなら使わず生成し直すのがベターな選択だ。

Q:そもそも著作物を学習した生成AIは違法にならないの?

A:日本では、「著作物を学習したAI=違法」というわけではない。著作権法30条の4では、情報解析など、著作物に表現された思想・感情を楽しむことを目的としない利用について、一定の場合に著作権者の許諾なしで利用できると定めている。ただし、学習元の創作的表現を意図的に出力させる目的がある場合や、著作権者の利益を不当に害する場合などは、同条が適用されない可能性も。たとえば、特定の作品の創作的な表現を再現させることまで目的として学習させる場合は、単なる情報解析とはいえず、同条が適用されない可能性がある。

Q:有名人の顔や声など、著作権のないものをAIで再現しても大丈夫?

A:著作権以外の面で問題になる可能性がある。人の顔や容貌には、みだりに公表されない人格的利益、いわゆる肖像権が認められている。さらに、著名人の氏名や肖像には、それがもたらす集客力を守るパブリシティ権も判例上認められている。他方、「声そのもの」は著作権法の保護対象ではないとされている。しかし、生成AIによる声の模倣が相次いだことから、2024年には山寺宏一さんや梶裕貴さんら声優有志が「NOMORE無断生成AI」を立ち上げ、声の無断利用に抗議。その後、政府でも検討が進み、2026年8月には法務省が、声もパブリシティ権などによる法的保護の対象になり得るとの考え方を示している。

Q:本や有料記事を生成AIに読ませて要約させてもいい?

A:一律に「読ませてOK」とは言えないのが現状。本や記事を生成AIに入力する行為も、著作権法上の「複製」にあたる。文化庁は、情報解析など著作物の表現を楽しむことが目的でない利用には著作権法30条の4が適用され得る一方、著作物の創作的表現を出力する目的がある場合などは、同条が適用されないと整理している。たとえば本や有料記事を丸ごと入力し、元の文章を読まなくても済むほど詳しく要約させたり、特徴的な文章を抜き出して少し言い換えただけの回答を作らせたりする場合は、元作品の創作的な表現を利用する目的がある、つまり著作権侵害と判断される可能性もあり得るのだ。

<これだけは知っておきたい! AI基礎用語辞典>

【機械学習】
AIに大量のデータを与え、そこから読み取れる特徴やパターンを、自動的に学ばせる技術。人間がすべてのルールを細かくプログラムしなくても、学習した結果をもとに、画像の判別や需要予測などが可能になる。現在のAIを支える基本的な技術のひとつ。

【ディープラーニング】
機械学習の一種。人間の脳の神経回路を参考にした仕組みで、「深層学習」とも呼ばれる。従来の機械学習では、人が「情報のどこに注目するか」を設計することが多かったのに対し、ディープラーニングでは、大量のデータから重要な情報をAI自身が見つける。ゆえに画像や音声、文章など、複雑なデータの処理を得意とする。

【モデル】
AIが学習によって身につけたパターンや規則を使い、入力された情報から答えを導き出すための仕組み。「ChatGPT」や「Gemini」などもモデルの名称だ。モデルごとに規模や学習方法、得意分野が異なり、同じサービスでも複数のモデルが用意されることがある。

【LLM】
モデルの一種で「Large Language Model(大規模言語モデル)」の略。膨大な文章を学習し、言葉の並びや使われ方のパターンをもとに文章を生成する。ChatGPTなど、文章を中心に扱う生成AIの中核を担い、質問への回答や要約、翻訳、文章作成など幅広い用途に使われる。

【推論】
AIの領域では、学習済みのモデルを使い、入力され情報から回答や予測を導く処理を指す。AIが知識やパターンを身につける「学習」に対し、それを実際に使う段階が「推論」。最近では、複雑な問題を段階的に考えるという意味でも使われる。

【プロンプト】
生成AIに対して入力する質問や指示のこと。「文章を要約して」「この写真を説明して」などの命令だけでなく、条件や前提、出力形式の指定なども含まれる。内容を具体的にすれば、意図に沿った回答を得やすくなる。

【パラメータ】
AIが学習を通じて身につける、判断や出力の仕方を決める膨大な数の数値。数が多いほど複雑なパターンを表現しやすくなるが、必ずしも高性能になるとは限らない。「○○億パラメータ」のように、モデル規模を表す目安として使われる。

【トークン】
生成AIが文章を読み書きするときに扱う、言葉を細かく分けた単位。たとえば「生成AI」という言葉でも、モデルによっては「生成」と「AI」など複数のトークンに分けて処理される。生成AIサービスでは、入力・出力できる情報量や利用料金をトークンの数で管理することも多い。

【コンテキストウィンドウ】
AIが一度の処理で参照できる情報量の上限。会話履歴や入力した文章、資料などもこの範囲に含まれる。コンテキストウィンドウが大きいほど、長い文書や大量の情報を一度に扱いやすくなるが、情報量を増やしても、回答の精度が必ず上がるわけではない。

【マルチモーダルAI】
文章だけでなく、画像、音声、動画など複数種類の情報をまとめて扱えるAI。写真を見せて内容について質問したり、音声で会話しながら画像について説明してもらったりできる。たとえばChatGPTも、右記の用途に対応している。

【ハルシネーション】
生成AIが、事実ではない情報をもっともらしく作り出してしまう現象。「幻覚」と訳されることもある。存在しない人物や文献、数字を、いかにも自然な文章で提示する場合もあるため注意が必要。重要な情報の記載については、一次資料などをユーザーの目で確認することが欠かせない。

【RAG】
「Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)」の略。AIが質問に答える際、あらかじめ用意した資料などから関連情報を検索し、その内容を参考に回答する仕組み。根拠のある回答を得やすくする手段のひとつで、社内資料をもとに答えるAIなどで使われる。

【ファインチューニング】
すでに学習済みのAIモデルに追加学習をさせ、特定の用途やデータに合わせて調整する手法。ゼロからAIを作るより少ないデータで性能を高めやすく、専門分野に強いAIや、特定の書き方・回答傾向を持つAIを作る際に使われる。

【ベンチマーク】
AIモデルの性能を、共通の問題やテストによって測定する仕組み。「○○ベンチマークで高得点」といった形で、新しいAIモデルの性能を示す目安として使われる。ただし、テストの種類によって測れる能力は異なり、ひとつのテストで高得点だからといって、あらゆる面で優秀とは限らない。

【AIエージェント】
人から目標を与えられると、達成までに必要な手順を自ら考え、ツールやサービスを使いながら作業を進めるAI。質問に答えるだけのチャットAIとは異なり、情報検索や資料作成、予約など複数の作業を連続して実行できる点が特徴。人の仕事を代行する存在として活用が進んでいる。

【オンデバイスAI】
クラウド上のサーバーではなく、PCやスマートフォンなど端末の内部でAI処理を行う仕組み。通信環境に左右されず、応答速度やプライバシー面でメリットがある。一方、大規模・高性能なAIはクラウドの方が適する場合もあり、両者を組み合わせた使い方も多い。

【NPU】
「Neural ProcessingUnit」の略。AIの計算処理を効率よく行うことを目的としたプロセッサ。CPUやGPUと役割を分担し、画像処理や音声認識などのAI機能を少ない電力で効率的に動かせる。AI PCやスマートフォンにおいて、オンデバイスAIを支える重要な部品となっている。

【フィジカルAI】
ロボットや自動運転車などが、カメラやセンサーから現実世界の状況を認識・判断して実際の動作につなげるAI。文章や画像を生成するのと異なり、空間や物理法則を踏まえながら、現実世界で行動する点が特徴。ロボティクス分野を中心に注目が高まっている。

>> 特集【デジタル&AIギア 完全ガイド】

※2026年10月6日発売「GoodsPress」11月号48-49ページの記事をもとに構成しています

<監修/佐藤健太郎 取材・文/畑野壮太 イラスト/藤井昌子>

 

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