【もうすぐ出ますよ!注目の輸入車】超個性派ジープ「グラディエーター」は遊び心の塊だ

■オープンエアも楽しめるジープのピックアップトラック

なんて遊び心にあふれたモデルなのか! 2018年のロサンゼルスモーターショーにおいて、世界で初めて公開されたグラディエーターを見た時のワクワク感を、筆者は今でも鮮明に覚えている。本当に見ているだけで楽しくなるクルマだったのだ。

グラディエーターは、ひと言でいうなら、ジープの中で最も個性あふれるラングラーをベースに、ボディを延長して荷室を組み合わせ、ピックアップトラック化したクルマだ。ピックアップトラックといえば、プロフェッショナルユースなどでの実用面がクローズアップされがちだが、グラディエーターにとってそれはむしろオマケに近い。荷室がどれだけ使えるか、というよりも、どれだけ遊べるかを重視している。

グラディエーターの遊び心はベースモデルとなったラングラー譲りで、ルーフパネルを外してフルオープンを楽しめるのはもちろん、北米仕様ではフロントウインドウを前へ倒したり、ドアを外したりすることも可能。世界広しといえども、オープンエアを楽しめる量産ピックアップトラックはグラディエーターくらいのものだ。

一方、オフィシャル写真で紹介されているように、荷台にオフロードバイクやカヤックを載せ、道なき道をクリアしながら遊びのポイントまで移動できるなど、レジャーのアシとしての活躍も期待できる。クルマ自体の遊び心はもちろん、クルマを介してのレジャーなどでも遊べるクルマに仕上がっているのがグラディエーターなのだ。

ちなみにグラディエーターというネーミングは、30年以上ぶりの復活となる。かつてアメリカで販売されていたモデルは今のグラディエーターとは異なり、ラングラーではなく「ワゴニア」というラージサイスSUVをベースとしたピックアップトラックだった。それが今回、ラングラーをベースモデルとしたことで、よりキャラが鮮明になり、個性が強まった。

そんなグラディエーターが、間もなく日本に上陸する。ジープブランドの輸入元であるFCAジャパンは、2021年初頭に発表した新車導入計画の中で、グラディエーターの日本市場への導入を表明。2021年春に正式発表され、順調にいけば、オーナーの元には2021末頃からデリバリーされる見込みだ。正規輸入車としてこんな個性的なモデルが日本へ導入されるのはなんとも楽しみだ。

■グラディエーターの存在感はライバル以上

繰り返しになるが、グラディエーターの魅力は個性的な見た目と遊び心に尽きる。

ラングラーは、ジープのラインナップで最も個性的で特別なクルマなのに、グラディエーターはその上、ピックアップトラックなのだから注目度は抜群。日本で買えるピックアップトラックといえば、現在はトヨタ「ハイラックス」くらいだが、少し前にはトヨタ「ランドクルーザー70ピックアップ」なども存在した。いずれも個性的で目立つクルマだが、グラディエーターの存在感はそれ以上。唯一無二のクルマといえそうだ。

グラディエーターのボディは、リアドアより前の部分がラングラーの4ドアロングバージョン、アンリミテッドと共通。そのため“7スロットグリル”や丸型ヘッドライトを始めとするフロントマスクや、台形のフェンダーといったラングラーのアイコンはそのまま継承される。車体の前半部分では、ラングラーと見分けがつかない人もいるだろう。

一方、アンリミテッドに対し、グラディエーターは全長が約720mm、ホイールベースは約480mmも伸び、ボディが大型化している。その結果、全長5591mm、全幅1894mm、ホイールベース3488mm(いずれも北米仕様)と、ボディはハイラックスよりひと回り以上大きい。

全長5.6m弱ともなれば普通の駐車場枠には収まりきれず、日常的な取り回しにおいて苦労するのは想像に難くない。しかし、そのことを受け入れられる“限られた人のための特別なクルマ”と考えれば、大きな車体もむしろ個性。誰もが気軽に所有することのできない特別感がまたいいのだ。

■悪路走破性を引き上げた「ルビコン」仕様もある

構造的にはラングラーの派生モデルだけに、グラディエーターのオフロード性能はハイレベルなのはいうまでもない。ロードクリアランスもたっぷり確保されているから、名ばかりのオフローダーではスタックしてしまうような極悪路でもグングン進んでいける。さらにラングラーと同様、専用サスペンションやより強靭な4WDシステムの搭載などで悪路走破性を引き上げた「ルビコン」仕様も用意されている。

北米仕様のパワートレーンは、3.6リッターのV6ガソリンエンジンと3リッターのV6ディーゼルエンジンという二本立て。日本仕様はどちらが導入されるか明らかになっていないが、ラングラーですでに実績のあるガソリンエンジンとなるだろう。ちなみにトランスミッションは、全グレードとも8速ATを組み合わせる。

4WDシステムは、ルビコンを除くグレードには“コマンドトラック”と呼ばれる伝統的なパートタイム式が採用される。レバー操作によってトルク配分を前後50:50の直結状態にできるほか、副変速機によってローギヤも選択可能だ。

一方のルビコンは、よりローギヤ化(他グレードの2.72:1に対してルビコンは4:1)され、極悪路で路面や接地状態を確かめながらゆっくり進んでいける“クロール走行”にも対応にしている。もちろん、ラングラーのルビコンに設定されている、コックピットのスイッチ操作でスタビライザーを切り離し、サスペンションストロークを拡大する機能も組み込まれる。

ジープは2021年、ブランド誕生80周年を迎えた。ここ日本では、販売規模が過去10年間で約10倍に拡大するなど人気急上昇中。「日本ではアメ車が売れない」という定説はことごとく打ち破り、日本で唯一、大成功を収めているアメリカンブランドとなっている。

そんなジープのラインナップに加わるグラディエーターは、ボディサイズの大きさゆえたくさん売れるモデルではない。しかし、ジープブランドの個性や楽しさを印象づけるシンボリックなモデルになることは確実だ。

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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