実車データが自信作へと結実!マツダ車のこだわりモデルカー“誕生の舞台裏”

多くの従業員を抱える自動車メーカーでは、車両の開発や製造をサポートしたり、福利厚生などを担ったりするグループ企業が存在します。モデルカーを始めとするマツダ車関連グッズを手掛けるマツダエースも、マツダを支えるグループ企業のひとつ。

車両の取扱説明書やカタログ、ディーラー向け整備マニュアルの制作に加え、マツダの従業員向け生命保険や損害保険の取り扱い、販社店舗の建築設計、工場設備の開発などを行っています。何やらお堅いイメージのある業務内容ですが、このマツダエースこそ、モデルカーを始めとするマツダの各種ノベルティ開発を担当している企業なのです。

「マツダエースがマツダのノベルティグッズを手掛けるようになったのは、10年ほど前のこと。中でもモデルカーは、全国のディーラーから販促用ツールとしてのリクエストが多い商材で、我々も模型メーカーさんなどに商品開発をお願いしていました。一方、弊社はマツダ車のカタログ制作を手掛けているため、社内に各車の詳細なデータが存在していました。そこで、その豊富なデータを活用し、我々の手でモデルカーを開発してみようという話になったのです」

そう語るのは、マツダエースの企画担当、堀本弘臣さん。話をモデルカーだけに限れば、自社が展開する車種のモデルカーを販売している自動車メーカーは少なくありません。でもそれは、ミニカーメーカーがライセンスを得て開発・製造した製品を、自動車メーカー側で販売しているだけに過ぎません。マツダエースは、ミニカーメーカーに対するライセンスの管理や、販売窓口としての役割も担っていますが、加えて、自社でミニカーの“開発”を行っている点が、他の自動車メーカーとはひと味違うところなのです。

1/43スケール マツダCX-5(2017) 6500円

「実車のカタログ制作にはCGや3D CADを使いますので、モデルカー製作に対する基本的なノウハウは持っていたのだと思います。モデルカー開発に携わるメンバーも、元々はミニチュアなどが好きでしたからね(笑)。新しいクルマに関しては、マツダからCADデータを提供いただいて、それをベースに造形の作業までを担当。そして実際の製造は、専門の業者さんにお願いしています。とはいえ、スタート時点は大変なことが多かったですし、CADデータのない古いクルマのモデル化は、手間が掛かりますね」

1/43スケール マツダロードスターRF(2016) 7000円

開発を担当する金谷誠司さんがこう語るとおり、模型専業メーカーではないマツダエースにとって、モデルカー開発には少なからぬ苦労があったそうです。

例えば、初代「CX-5」の成約記念プレゼント用に製作した1/43スケールモデルは、当初の目標販売台数である2000台で試算して開発・製造を行っていました。ところが実際は、なんと1万2000台ものオーダーが入ったのだとか。本来なら、受注数アップはうれしい悲鳴なのでしょうが、そのモデルカーは、大量生産に適した亜鉛合金製ではなく、2000台という少量生産をかんがみて、レジン樹脂によるハンドメイド生産で開発・製造を行っていました。そのため堀本さんたちは、製造を担当する業者と緊密に連携を図りつつも、生産現場にたびたび頭を下げに行ったのだそうです。

「あのことは今でも忘れられませんね(苦笑)。お客さまにモデルカーをお渡しするまで、とても時間がかかってしまい、大変申し訳ない気持ちでした。また、モデルカーづくりでの勉強といえば、モデル化する際の色の表現、また、ボディのエッジ部分の造形なども、こうした苦労とともに学ぶことができました」(堀本さん)

「実車のデザイナーや開発担当から意見やアドバイスをもらえるのは、マツダエースならではの強みといえます。さらに、実車の開発担当からは『モデルカーは造形を俯瞰し、立体的にクルマを見ることができるので勉強になる』とのコメントをもらったこともあります。うれしい言葉なのですが、一方で、実車を知る人たちはこだわりも強いですから、適当なものはつくれません(苦笑)」(堀本さん)

東京モーターショー2017の「PREMIUM GOODS SHOP」で販売される、150台限定の「1/43 ロードスター NA & ND クラシックレッド2台コンプリートモデルカー」(1万9800円)※写真は開発中サンプル

さて、マツダエースのように実車のデータがあれば、1/18スケールでも1/43スケールでも、簡単につくれるのではないか? 実車をスケールダウンするだけなので簡単なのでは? と思われるかもしれませんが、モデルカー開発というのは、そう簡単な話ではないのです。

例えば1/43スケールの場合、実車のウインカーレンズの天地サイズが40mmだとすれば、模型では1mm以下、実車のサイドミラーを支えるステーの直径が10mmとすれば、模型では0.2mmほどで再現しなければなりません。でも量産を考えると、それは現実的な数値ではないのです。

そこで、実車のデータに基づきながら、模型化しても不自然さを感じないサイズに修正する必要が生じるのです。こうした“デフォルメ作業”でこそ、模型開発者のセンスやノウハウ、テクニックなどが必要となります。

「CADデータが存在しない古いクルマのモデル化も大変です。新製品の初代『ボンゴ』などは、マツダ・ミュージアムにあるクルマを採寸したり、実車の写真を撮ったりして、ゼロから図面を書き起こしたほどです。でも、そうやって実車を隅々までチェックしていたら、今の軽自動車よりもちょっと大きいサイズのボディに、8名乗れる高い実用性を備え、しかも、デザインもおしゃれという、ボンゴに対する新たな発見がありました。技術革新や美しいデザインといった、マツダらしい挑戦する気持ちは、現在のクルマにも通じる部分だと感じましたね」(堀本さん)

1/43スケール マツダボンゴ1000(1968)/マツダボンゴ1000ルートバン(1968) 各9000円

「イベントなどでマツダ車のファンの方とお話する機会があるのですが、むしろ皆さんの熱意が、モデルカー開発の原動力になることもあります。新車はもちろんのこと、『昔のあのクルマは良かった』といったお話を伺うと、我々も『期待に応えたい!』という気持ちになります(笑)」(堀本さん)

“実車とモデルカー”、“新型車と歴史を彩った名車”、サイズや時代こそ異なりますが、製品開発にかける意気込みに、変わりはないようです。

【次ページ】マツダらしさ、マツダエースらしさが際立つ自信作

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