【ベンツCLS試乗】見た目だけじゃない!走りも使い勝手もグッとくる4ドアの美クーペ

■従来のメルセデスとは異なる新鮮なデザインテイスト

4ドアクーペがブームとなったのは、世の中がバブルという好景気に湧き、みんながどこか浮かれていた、今にして思えばいい時代。しかし残念なことに、日本では4ドアクーペは根づかなかった。バブルの崩壊とともに不景気となった日本社会では、モノ選びに対して遊び心よりも堅実さが重視されるようになり、デザイン優先でリアシートの居住性がいまひとつだった4ドアクーペは、たちまち売れなくなってしまったのだ。

ところが2000年代に入り、今度はヨーロッパで4ドアクーペのブームが巻き起こる。先陣を切ったのはメルセデス・ベンツの「CLSクーペ」。カリーナEDの登場からちょうど20年後に当たる、2005年のデビューだった。そこから遅れて、フォルクスワーゲンの「パサートCC」が登場。両車のヒットを受けて、アウディ「A5スポーツバック」、「A7スポーツバック」、そしてBMW「4シリーズグランクーペ」、「6シリーズグランクーペ」が続き、パサートCCは「CC」へと名称を改めた後、現在では「アルテオン」へと進化するなど、続々と選択肢が拡大している。

こうしてドイツメーカーが競い合ってきた結果、今や4ドアクーペは、各ブランドの人気モデルへと成長。そして先頃、ブームの火付け役となったCLSがフルモデルチェンジし、3世代目へと進化した。今回は、4ドアクーペの世界をリードする最進化形モデル、新型CLSの魅力と実力を紹介したい。

■ワイド&ロー、しかもエレガント

新型CLSの第一印象は「これまでのメルセデスとはかなりデザインテイストが違うな」というものだった。

ここ数年、メルセデス・ベンツのセダン、具体的にいえば、現行の「Cクラス」、「Eクラス」、そして「Sクラス」のフロントマスクは、丸みを帯びたヘッドライトを核としたスポーティなデザインが定番だった。

しかし新型CLSでは、それがガラリと変化。シャープなつり目形状のヘッドライトや、切り立ったフロントグリルなど、迫力あるマスクに一新されている。間もなく日本に上陸予定の新型「Aクラス」も同様のテイストで、いわば新型CLSは、メルセデス・ベンツの新デザインテーマにおける第一章といえる。

新しいデザインテイストの先陣を切るモデルだけに、CLSのデザインは凝りに凝っている。中でもフェイスデザインは、サメをイメージしてシャープさを強調したもので、フロントグリルはマツダ「CX-5」のように“逆スラント(下部よりも上部の方が前に出た)”形状になっている。今後この意匠が、カーデザインのトレンドになるのかもしれない。

また新型CLSのフォルムは、とにかく立派で堂々としている。それもそのはず、ボディサイズは全長5000mm、全幅1895mmと、メルセデス・ベンツのフラッグシップセダンであるSクラスと比べても、全長で125mm、全幅で5mm小さいだけ。プラットフォームのベースはSクラスではなく、Eクラスのそれを使っているが、存在感の強さはSクラス級。むしろ、Sクラスより全高が65mm低いことでワイド&ロー感が強調されているから、スタイリングにおけるバランスは、Sクラスよりもまとまっていると感じた。

また、かしこまったシーンでの“格式”を重視したSクラスよりも、新型CLSの方がエレガントに感じる。リアシートに乗せてもらうなら断然Sクラスかもしれないが、プライベートカーとして自分でドライブするのなら、CLSの方が日常により華を添えてくれることだろう。

■クリーンディーゼルか、直6ハイブリッドか

日本仕様の新型CLSは、2リッターの4気筒ディーゼルターボを積む「CLS 220dスポーツ」と、3リッターの直列6気筒エンジンにターボとモーターを組み合わせた“マイルドハイブリッド”仕様「CLS 450 4マチック スポーツ」の2タイプがラインナップされる。

まずは前者、クリーンディーゼルを搭載するCLS 220dスポーツをドライブする。驚いたのは、ディーゼルっぽさがほとんど感じられないということ。ディーゼル車は、以前に比べてグッと抑えられたとはいうものの、一般的にはまだ、ガラガラとしたノイズが耳につくクルマが多い。しかしCLS 220dスポーツは、アイドリング時でも走行中でも、窓を閉めている限り、車内にディーゼル車特有のノイズが聞こえてこないのだ。

回転フィールも、ディーゼル車にありがちなザラザラ感はなく、とても滑らか。正直なところ、控えめな回転数からレッドゾーンとなるエンジン回転計の数字を見なければ、ディーゼル車をドライブしている実感がないほどだった。排気量は2リッターと小さめだが、わずか1600回転から400Nmという極太トルクを発生するおかげで、力不足は全く感じない。それどころか「これで十分!」と感じさせる力強さだった。

一方、マイルドハイブリッド仕様のCLS 450 4マチック スポーツは、アクセルペダルを踏み込んだ時の爽快な加速感が最大の魅力。回転フィールに優れるとされる直列6気筒エンジンが、そうした感覚の演出にどこまで貢献しているのか、判断するのは難しいが、CLS 220dスポーツから乗り換えると、回転が高まるにつれてパワーが盛り上がり、アクセルを深く踏み込んだ際の反応も、CLS 220dスポーツと比べると明らかに心地いいものだった。

新型CLSにおけるパワートレイン選びの決め手は、そうしたアクセルを踏み込んで加速する際の気持ちよさを重視するか否か、に左右されると思う。繰り返しになるが、実用性だけを見ればCLS 220dスポーツでも十分。でも、加速フィールに心地良さや艶っぽさを求めるなら、やはりCLS 450 4マチック スポーツを推したい。

ちなみに、CLS 450 4マチック スポーツは、小型モーターを備えたハイブリッド車ではあるものの、モーターはあくまで、エンジンのアシストに徹した黒子であり、電気自動車のような力強い加速を味わえるといったハイブリッドカーらしさは、思いのほか感じられなかった。

■意外にも、リアシートの居住性は上々

ところで、かつて日本で流行った4ドアクーペとは異なり、実用性がさほど犠牲になっていないのも、新型CLSの魅力のひとつだ。一見すると、デザイン第一のクルマに思えるが、実は一般的なセダンに負けないくらい、これが使えるのである。

例えばリアシートには「狭いかもしれないけれど、デザインがカッコいいんだから我慢してね」なんて言い訳は全くなし。それどころか足元は広く、頭の上のクリアランスもきちんと確保されていて、居住性に不満がないのだ。

その要因となっているのは、やはり大きなボディサイズだろう。かつて日本で流行った4ドアクーペはボディサイズが小さく、おしゃれなデザインを実現するためにキャビンを小さくせざるを得なかった。しかし、ヨーロッパで流行っている4ドアクーペは、ボディサイズの大きいクルマが多く、流麗なフォルムを仕上げても、キャビンの前後長や室内幅はしっかり確保されているのである。

強いていえば、新型CLSは低いルーフの実現と、後席の頭上クリアランスを確保するためにリアシートの座面がえぐってあり、その結果、座った時のフロアに対する着座位置が低いため、少し窮屈に感じる。その点だけは、気になる人がいるかもしれない。

とはいえ、峠道を走る時などは、このえぐられたリアの“バケットシート”がちょうどいいホールド力を発揮してくれるから、右に左にとカーブが続いても、後席に座る人の身体はほとんどブレない。普通、峠道をドライバーが気持ちよく走ると、後席の乗員はお尻の位置がどんどんズレてきてしまい、途中で姿勢を正す必要が生じるが、新型CLSではそうした必要が一切なかった。おそらくこれは偶然の産物なのだろうが、乗る人へのおもてなしや機能性という面においても、このクルマには一切の破綻がない。

このように、流麗で走りが力強く、また思いのほか使い勝手のいい新型CLSだが、実は一番驚かされたのは、CLS 220dスポーツの799万円〜というプライスタグだった。旗艦モデルのSクラスと同じくらい存在感があり、Sクラスよりもエレガントな新型CLSが、アンダー800万円からラインナップされるという事実。メルセデス・ベンツ日本のこの戦略は、本当に衝撃的だ!

<SPECIFICATIONS>
☆220dスポーツ(オプション装着車)
ボディサイズ:L5000×W1895×H1425mm
車重:1860kg
駆動方式:FR
エンジン:1949cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:194馬力/3800回転
最大トルク:40.8kgf-m/1600〜2800回転
価格:799万円

<SPECIFICATIONS>
☆450 4マチック スポーツ(オプション装着車)
ボディサイズ:L5000×W1895×H1425mm
車重:1970kg
駆動方式:FR
エンジン:2996cc 直列6気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:367馬力/5500〜6100回転
最大トルク:51.0kgf-m/1600〜4000回転
価格:1038万円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)


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