2016新年の注目ギア!未来の乗り物「電動一輪バイク」に乗ってきた!

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『&GP』では過去に数回、ニュースとして取り上げていますね。編集長、よっぽど乗りたかったんだろうなぁ。でないとおにぎり携えて滋賀まで一緒に来ないよなぁ……と、重責に武者震いする私。ラスト1個のおにぎりを急いで飲み込み、いざ行かん、電動一輪バイクの元へ!

滋賀で“未来の乗り物”にご対面!

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ONE-WHEEL i-1の開発・生産・運営を手がけるのは、滋賀県豊郷町にある「ワンホイール運営事務局」というベンチャー企業。駅からクルマで10分ほど、田んぼや鄙びた町並みを横目に会社に向かいます。

「ここらは私の地元でしてね。田舎でしょう?」と笑うのは、迎えにきてくださった代表の森田修榮さん。確かに、時代の先端をいく乗り物の開発拠点があるとは考えにくいほど、のどかな光景が広がります。

しかし、ここで侮っちゃいけません。会社に到着してまず目に飛び込んできたのは、天井の高い工房兼倉庫。中を見せてもらった途端、思わず「これは……!」と息をのむ我々。

床に整然と並ぶのは、組み立て中のONE-WHEEL i-1! なんとなく『STAR WARS』のドロイド工場っぽい(言い過ぎ)? 一気に盛り上がる桑原さんと私(笑)。

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ONE-WHEEL i-1は、ジャイロ搭載のバランス型電動一輪バイク。開発コンセプトは「子どもからお年寄りまで誰でも簡単に楽しく乗ることができる乗り物」だそう。

以前は電機メーカーのエンジニアだった森田さんが10年以上前から構想を温め、ご自身で開発したそうです。今までに見たこともない非現実的な外観に、一瞬「オモチャ?」という言葉が頭をよぎりましたが、森田さんの解説によると、ガチで本気の技術が満載だそう。

ジャイロ系の乗り物なので、その動力は基本的に重心移動によるものですが、搭載された「ジャイロ変位コントローラー」により、アクセルやブレーキ操作でも加速・減速・リバース(バック)が可能、という優れモノなのです。これらのスゴイ機能によって、他のジャイロ系乗り物にはない操作性や乗り心地を実現していると思われます。

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構造自体は案外シンプル。ハンドル周りはスクーターと同じで、右はアクセル、左にブレーキレバー。その下にタンクの形状をしたリチウムイオンバッテリーが取り付けられていて、1回の満充電で15〜30km走行可能とのこと。このバッテリーは取り外し可能なのでナニカト便利そうです。

専用に開発されたタイヤの中心にはインホイールモーターを内蔵し、サドルの下にはONE-WHEEL i-1のキモとも言えるジャイロ変位コントローラー機能を持つ「ジャイロセンサー」が搭載されています。

 

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車両の総重量はわずか20kg程度で持ち運びも簡単。クルマのトランクにも収まるコンパクトサイズです。なるほど……頭ではディテールや機能を理解できたけど、実際に乗ってみないとわからないよねー、なんせ“感覚の乗り物”だというし。いよいよお待ちかねの試乗へGO!

慣れるまで10分足らず、これぞ“感覚”の乗り物

 

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公道走行はNGなので、敷地の広い場所に移動。まずは森田さんからONE-WHEEL i-1の基本と仕組みを教わりました。ONE-WHEEL i-1は「前方に倒れるほど前進しようとする」または「後方に倒れるほど後退しようとする」乗り物です。

子どもの頃の掃除の時間に、手のひらにほうきの柄を垂直に乗せて、バランスを取って遊んだことはありませんか? ほうきが前に倒れそうになると、手のひらを前に突き出してバランスを保とうとしますよね。それと原理は同じです。

つまり、自分が前に倒れると、バランスを取ろうとONE-WHEEL i-1が前進するわけです。自分の傾きをジャイロセンサーが察知し、動力をモーターに伝えているんですね。ということは、傾きが大きくなると動力が強まって逆に危険でもあるわけです。

それを防ぐために、最高モーターパワーの傾斜角度である、前後傾斜約8度以上傾いた場合、「ピッピッピッ」と警告音が発信されます。さらに20度以上傾いたら、自動的に電源がオフになるよう設定されているそう。その他にもさまざまな安全装置を搭載していることから、安全面には随分配慮がされているのがわかります。

いよいよ起動。まず、リチウムイオンバッテリーのスイッチをONにしてから、次に本体のスイッチをON。たったこれだけ。

 

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起動時は地面に寝かせていましたが、起こすと動力が伝わったのか、なんとなくじりじりと(しかも静かに)動いています! うわーなにこれおもしろい!

サドルに座ってステップに足を乗せると、そのコンパクトさゆえに若干の心許さを感じますが、タイヤの幅が広いので安定感は抜群。まずは森田さんに肩を支えられて、ゆっくりゆっくり前進してみます。

ついハンドルに上半身を任せそうになりますが、そうすると途端にグラグラ……。でも「ハンドルは手を軽く置くだけ。曲がるときも体幹を使ってバランスをとりながらですよー」と、森田さんの的確なアドバイスのおかげで徐々に慣れてきました。バランスの乗り物ゆえに、少しの傾斜でも反応して微妙に低い方へ向かって行きがちなので、最初は平地で練習すると良さそうです。

 

両手放し運転よりもコツがいる?アクセル&ブレーキ操作

 

 

慣れて気が大きくなってきたので、手放し運転にチャレンジ!

 

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そしたらどうでしょう、さらにスムーズに乗りこなせるではないですか! 両手放しの方が上手く乗れるわ〜♪ とドヤ顔の私に、「じゃあアクセルとブレーキを使ってみましょうか」と次なる森田ミッションが。

実はONE-WHEEL i-1のアクセルとブレーキは、バイクのそれとは似て非なるもの。説明が難しいのですが、「より前(または後ろ)に加速するために傾斜を強める」ためのもの、とイメージして下さい。

ブレーキにおいてはディスクなどによる制動とは異なり、後方に加速することでスピードを相殺し、減速する仕組みなのです(従って、ブレーキを使ってバック走行も可能)。

ほんの少しの操作で反応するからと脅されたので、アクセル、ブレーキレバー共に数ミリ動かしたくらいに留めましたが、それでもいい具合にジワッと加速・減速できました。この機能、例えば傾斜地で重心移動がし辛いときなどに威力を発揮するはず。オモチャみたいなナリに隠し持つハイテク機能の数々……なんて恐ろしい子!

 

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ブレーキは特性をつかむことがポイント。後ろに進むこともできます

 

ちなみにONE-WHEEL i-1の最高速は20km/h程度(乗る人の体重による)。そこに行き着くには更なる練習が必要かと思いますが、歩くぐらいのスピードでも充分以上に楽しめたからヨシとしましょう。

余談ですが、途中交代した桑原さんがやたら上手に乗りこなすんですよ(嫉妬)。「体重が重い人の方が安定するから」と森田さんが慰めてくれましたが、こんな調子では、漫画『ド◯ゴ◯ボー◯』のような乗り方ができる日は遠い、と悟りました(注:そもそも現段階のONE-WHEEL i-1にはあんなポテンシャルはありません)。

「いずれは“タイヤがない”タイプや、宇宙で使用する乗り物に進化していければいいですね。もちろんずっと先の話ですが」と笑う森田さん。未来って案外すぐそこまで来ているのかもしれませんね。秋の夕陽を背に受けつつ黙々と試乗を続けて小一時間。もっと乗っていたいのですが、新幹線の時間があるので今回はこの辺で。楽しかった……!

 

超絶楽しい電動一輪バイク、その行く末は?

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ハンドルグリップは、根元近くを握ったほうが安定して乗れました

 

現在、ONE-WHEEL i-1はモニター販売を実施しており、個人をはじめIT企業やさまざまなジャンルのメーカー、大学の研究機関などで使用されています。一般販売は2016年の秋頃を予定。

そのために家電メーカーと共同で更なる改良を続けているそうです。さらに、ONE-WHEEL i-1のセッティングのための専用アプリも開発中。現段階ではオーナー自身で調整することはできないそうですが、このアプリがあればモーターのパワーの設定や、微細な傾きを調節するなどのカスタムが可能に。

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まだ未公開だがアプリも準備中

 

好みの乗り味に調整することはもちろん、レース仕様にチューニングするなんてこともできそうですね。一般販売が始まっても「子どもからお年寄りまで簡単に乗れる」というコンセプトは変わらずですが、このように自分仕様の1台にカスタムできるという点は、モノ好きな我々の購買意欲をさらに刺激しそうです(笑)。

限定100台のモニター車両価格は30万円(2015年11月)でしたが、市販モデルの価格は35万円程度になる予定とのこと。さらに現在、販売済み車両を歩行補助車としてカスタマイズし、2016年春〜夏頃から実際に歩道歩行に活用できる人を募集中だ。

他にも、国内プロレーサーの試乗テストやレース車両としての製品改良アドバイスを受けているとのこと。募集中のテストモニターの中から募り、世界初の電動一輪車レースも企画中だとか!

もう夢ではないですね! 今後も注目していきたいノリモノです!

 

ワンホイール運営事務局 http://www.onewheel.jp/index.html

 

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(取材・文・イラスト/三才はるな)

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