【ルーテシア R.S.トロフィー試乗】“通”好みの魅力満載。走りはピリッと刺激的!

日本での“ノーマル"ルーテシアは、大きく分けて3種類。0.9リッター3気筒ターボ(90馬力)と5段MTを組み合わせた“通"好みのエントリーモデル。より一般的な1.2リッター直4ターボ(120馬力)にデュアルクラッチ式の6ATを組み合わせたモデル。そして、同じ120馬力エンジンを積みながら、ルノーのスポーツモデルを手掛ける部門=ルノー・スポールがアシ周りなどをチューンした(←この辺がまた混乱の元!?)グレード、「GT」で構成されます。

一方、ルーテシア R.S.は、より排気量の大きな1.6リッターターボ(200馬力)を搭載。アシの硬軟、つまりスポーティ度の違いによって、ややジェントルな「シャシー スポール」と、よりハードな「シャシー カップ」の2種類がラインナップされていました。

今回登場した「トロフィー」は、シャシー カップに替わる、さらに、さらに、スポーティなモデル、というわけです。トロフィーの導入によって、シャシー カップはカタログから落ち、ルーテシア R.S.は、シャシー スポーツとトロフィーの2本立てとなります。

さて、ルーテシア R.S.トロフィー、そのスポーツ度のインフレ具合はいかほどでしょうか!? 乗ってみました。

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スポーティネス“マシマシ"のルーテシア R.S. トロフィーですが、これ見よがしのウイングや太いスポーツマフラーを装着するわけでもなく(いずれもオプションでは用意されます)、外観は意外とアッサリしています。

“205/40R18”という太いタイヤを巻いたホイールが、スポーク内側を黒くペイントした特別仕様という点が目を引くくらい。

それでも、このルーテシア R.S.が“トロフィー"であることは、特にクルマに詳しくない人でも分かります。なぜなら、フロントバンパー内のエアインテークを横切るウイングと、サイドモールプロテクションの後端に「TROPHY」と書かれているから…。

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同じく、TROPHYと刻印されたサイドシルを跨いでスポーツシートに座ると、ヘッドレスト、ステアリングホイールに「R.S.」の文字。いやでもスペシャル感が高まります。

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シフトレバーの後ろに設けられた“R.S.DRIVE”ボタンを使えば、走行モードを“ノーマル”“スポーツ”“レース”に切り替えられます。ギヤの変速タイミングだけでなく、アクセルとエンジンの関係、ステアリングの重さほか、電子制御されている箇所全般の特性を変えられる本格派。ただし、レースモードを選ぶと、乱れた挙動を正してくれる“ESC”もカットされますから、公道では選ばない方がいいかも…。

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もう1点。ルーテシア R.S. トロフィーによる最高のスタートダッシュを演出してくれる“ローンチコントロール”も装備されますが、これまた公道では試さない方が無難かもしれません。とはいえ、F1テクノロジーにつながる機能が自分のクルマに搭載されていることは、オーナーにとって誇らしいことです。ルノー(エンジン)はこれまで12回も、F1でワールドチャンピオンを獲得しているのですから。

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ステアリングホイールを握って走り始めれば、たしかにトロフィーのサスペンションは、硬く締まったものですが、路面の細かい凹凸はさらりといなし、ハーシュネス(突き上げ)もよく抑えられています。これなら、助手席に大切な人を乗せての日常も、大過なくこなせそう。フロントのダンパーには、コーナリング時などの大入力を受けとめる通常のメインダンパーに加え、微細な入力に対応するセカンダリーダンパーが組み込まれているのですが、これがなかなかいい働きをしているようです。

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R.S. トロフィーの1.6リッターターボは、R.S. シャシー スポールに積まれるものより20馬力高い220馬力を6050回転で、1.1kg-m太い26.5kg-mの最大トルクを2000回転で発生します。普段は過給機付きエンジンらしい、低回転域からの豊かなトルクに任せて気の置けないドライブを楽しみ、いざとなったらブン回してサーキット譲りのパフォーマンスを堪能すればいいわけです。

エンジンの制御マッピングを変更し、ターボを大型化、エグゾーストパイプをはじめとする排気系のファインチューンを受けた16バルブ直噴ターボ。それとペアを組むのは、6速EDCことエフィシエント・デュアル・クラッチ・トランスミッション。従来より30%もギヤチェンジが速くなっています。ルーテシア R.S.のトランスミッションが2ペダル式になったと聞いてショックを受けた3ペダル派も(←私です)、これなら納得です。

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デキのいいシート。粘り腰のコーナリングフィール。エンジン、トランスミッション、ステアリングそれぞれの調和が取れた、一体感の強い運転感覚。乗ればその良さが分かるルーテシア R.S. トロフィーですが、名前の複雑さに始まって、どうもその魅力を一般化しにくいきらいがあります。

控えめな外観。(絶対的には)飛び抜けたところのないスペック。いまひとつモータースポーツでの活躍が反映されないブランドイメージ…。

そんな“通"好みのモデルをこまめに導入してくれるルノー・ジャポンは、ホント、素晴らしいインポーターだと思います!

大量販売を是とする大衆車メーカー、という本国での立ち位置にこだわらず、極東の島国ではニッチブランドとして地道に市場を開拓していく。その努力に頭が下がる思いです。2015年度、わが国におけるルノーブランドの販売台数(乗用車)は5082台で第11位。奇しくも12位のブランドは、先頃、日本からの撤退を決めたフォード(4856台)でした…。

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<SPECIFICATIONS>
☆R.S. トロフィー
ボディサイズ:L4105×W1750×H1435mm
車重:1290kg
駆動方式:FF
エンジン:1618cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6AT(デュアルクラッチ式)
エンジン最高出力:220馬力/6050回転
エンジン最大トルク:26.5kg-m/2000回転
価格:329万5000円

(文&写真/ダン・アオキ)

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