“ゲレンデ”じゃハード過ぎるって人に!メルセデスの新型「GLE」は高級SUVの理想形

■GLEの起源はメルセデス・ベンツ初のSUV

そもそもGLEは、メルセデス・ベンツ史上初のSUVだ。正確にいうと、GLEの前身である「Mクラス」がそれに当たるが、今ではフルラインナップと呼べるほど多彩なモデルを展開するメルセデス・ベンツのSUVの原点が、GLEには受け継がれている。

初代Mクラス(通称はMクラスだが、正式名は「ML」と少々ややこしい)がデビューしたのは1997年で、日本では翌年から販売がスタートした。当時のメルセデス・ベンツでSUVにカテゴライズできるモデルは、軍用車両“ゲレンデヴァーゲン”をルーツとする「Gクラス」しかなかったが、悪路走破性を重視した構造のリアルオフローダーであったため、快適性や舗装路での走行性能などは二の次。いわゆるSUVにカテゴライズされるライバル各社のモデルとは、異なる立ち位置にあった。そのため市場からはメルセデス・ベンツに対し、快適性やオンロードでの走行性能を重視した、もっと乗用車に近い立ち位置のSUVへのニーズが急速に高まっていたのである。

そんな中、メルセデス・ベンツが新たなるSUVとして開発したのがMクラス。初代は丸みを帯びたデザインからシンプルなインテリアの仕立てまで、カジュアルな雰囲気を貫いていたのが印象的なモデルだった。

“メルセデスのSUV”というバリューとともに、SUV人気の急上昇という市場の追い風を味方につけ、初代Mクラスは北米マーケットを中心にヒットする。しかし、メルセデス・ベンツ自身、思い切ったカジュアル路線は顧客の求めていたものとは異なっていたことに気づいたようだ。その結果、2005年に登場した2代目、2011年登場の3代目と、以降のMクラスはラグジュアリー志向へコンセプトを刷新。新しくなるにつれ、プレミアム感がみるみる引き上げられた。

しかし2015年、突然Mクラスは廃止されてしまう。それと入れ替わるカタチで市場導入されたのが、初代GLEだ。とはいえ実のところ、初代GLEは3代目Mクラスの大幅改良版に過ぎなかった。

その背景にあったのは、メルセデス・ベンツにおける車名の規則統一。それに基づいて、Mクラスのネーミングが変更されたのだ。余談だが、GLEとはSUVを示す“GL”に、車格を表す“E”を加えた名称。よりサイズの大きいモデルは「GLS」を、逆に小さなモデルは「GLA」や「GLB」を名乗っている。

■高級感あふれる仕立てながら先進性も訴求するインテリア

そうした背景を踏まえると、新型GLEは初代Mクラスから数えて4世代目に当たるわけだが、その最大のトピックは、車体構造が刷新されたこと。

何を隠そう、先代GLEのプラットフォームは、初代Mクラスから受け継がれたものだった。基本設計が古く、かつてメルセデス・ベンツと提携していたクライスラーの香りが残っていたほどだ。一方、新型には最新のプラットフォームが与えられ、同時に、パワートレーンや先進安全システムなども、メルセデスの最新バージョンへと引き上げられた。

もうひとつのポイントは、新型GLEは3列シート仕様だということ。これまでのラインナップでは、GLEは2列シート、ひとクラス上のGLSは3列シートということで、上下関係が形成されていた。しかし、新型GLEが3列シート仕様になったことで、その関係は崩れたのである。

ちなみに、新型GLEが3列シート仕様となったのは、昨今の北米市場において、ミニバンの代わりに3列シートのSUVが選ばれる風潮があることを受けてのもの。「普段は使わないけれど、あるとやはり便利だよね」くらいの感覚で設定されたようだ。

そんな新型GLEを前にしての第一印象は、「ずいぶん大きくなったな!」というもの。全長4940mm、全幅2020mmと、先代モデルに比べてそれぞれ125mmと70mm拡大されており、もはや日本の街中で乗り回すには、限界に近い大きさとなった。

まずは、そんな新型GLEで注目の3列目シートに座ってみる。乗り込むために2列目シートを畳もうとして驚いたのは、2列目シートが背もたれの角度調整だけでなく、スライド機構まで左右独立の電動式になっていること。手で畳むよりも時間を要すが、誰かを3列目シートへ乗せる際には、その人を驚かすことができるだろう。

そして驚きを経て乗り込んだ3列目シートは、オトナが快適に座ろうと思うとスペースが足りない。特に足下が狭いのだ。近所のファミレスまで10分くらいの距離ならなんとか、というレベルの実用性だ。

とはいえ、走り始めてびっくりしたのは、3列目シートに座っているにもかかわらず、ドライバーと普通の声のトーンで会話を楽しめたこと。車内の静粛性が圧倒的に高いのだ。

さらに感動したのは、乗り心地の良さ。一般的に、重心が高い上に車体が重いSUVは、乗り心地が悪くなりがちだ。しかし、新型GLEの乗り心地には、そうした物理的ハンデを全く感じない。それどころか、世間一般のセダンと比べても秀逸。路面からの衝撃を上手に吸収するのに加え、上下に揺すられる感覚が少ない“フラットライド感”が抜群で、まるで魔法のじゅうたんで移動しているかのような気持ちになる。これは「GLE450 4マチック スポーツ」に標準装備される、エアサスペンションの効果も大きいのだろう。

静かさと乗り心地の良さ…、つまり快適性は、高級車を語る上で必須の要素だ。単に見た目やインテリアの仕立てが高級というだけでなく、静粛性や乗り心地といった目に見えない部分までしっかり作り込んであることに、新型GLEの本質を見た気がした。

そうしたクルマの本質から高級車のあるべき姿を誇示する新型GLEは、コクピット回りのデザインやレイアウトも高級感あふれるものだった。

まず、ドライバーの正面に12.3インチのディスプレイがふたつ鎮座。さらに、音声でナビゲーションの目的地設定やエアコンの温度調整などをサポートしてくれるメルセデス・ベンツ独自のインターフェース“MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)”が、先進的でクールな印象を伝えてくる。

これは、他のメルセデス・ベンツにはすでに採用されているスタイルで、決して新しいわけではないが、目にするたびにスゴいな、と感じてしまう。

さらに、広範囲にわたって上質なウッドパネルがあしらわれる上に、アクセントとして用いられるシルバーの加飾パーツの使い方が巧妙で、圧倒的に“いいモノ感”が伝わってくる。それでいて、センターコンソールにはグリップを備えるなど、SUVらしいタフさのアピールも忘れてはいない。こうしたデザインの巧みさが、新型GLE独特のプレミアム感につながっている。

■滑らかな回転フィールが心地良い直6ガソリンターボ

さて、いよいよ新型GLEをドライブする。そこで気づいたのは、巨体にもかかわらず、思いのほか扱いやすいということ。

理由のひとつは抑えられた最小回転半径で、なんと5.6mしかない。例えば、トヨタ「ランドクルーザー」のそれは5.9mということを考えると、新型GLEのボディサイズとしてはかなり小さい方だ。ハンドルを回した際、前輪が大きく切れるため、と思われるが、かつてのメルセデス・ベンツを想起させる、ドライバー思いの配慮といえるだろう。

GLE450 4マチック スポーツに搭載されるエンジンは、3リッターの直列6気筒ガソリンターボ。メルセデス・ベンツの旗艦サルーンであるSクラスにも搭載されるユニットで、小型モーターを備えたマイルドハイブリッド仕様だ。

GLE450 4マチック スポーツ

このエンジンは、モーターによるアシストで発進をサポートすることを前提に作られている。その分、エンジン自体は中速域以上での伸びやかさを重視したセッティングで、豊かなトルク感と滑らかなフィーリングが心地良い。

GLE450 4マチック スポーツ

一方、新型GLEには、2リッターの4気筒ディーゼルターボを積む「GLE300d 4マチック」と、3リッターの6気筒ディーゼルターボを搭載する「GLE400d 4マチック スポーツ」もラインナップされている。経済性などを考慮するなら、ふたつのディーゼルターボ仕様は見逃せない存在だろう。

実際ドライブしてみると、力強さや速さといった面ではGLE300d 4マチックでも十分。4気筒エンジン搭載で鼻先が軽いからか、コーナリングフィールも軽快な印象だ。

GLE300d 4マチック

GLE300d 4マチック

とはいえ、走りにおいても新型GLEらしい高級感を味わいたいなら、静粛性が高くて高回転域までスムーズに回り、ディーゼルエンジンであることを意識させない、精緻な6気筒ディーゼルターボを積むGLE400d 4マチック スポーツがお勧めだ。

昨今、見た目で高級車であることを語るSUVは少なくないが、静粛性や乗り心地といった目に見えない部分まで徹底的に作り込まれたクルマというのは、思いのほか少ない。そこが完璧でなければ、真の高級車とは呼べないーー。新型GLEにはそんなことを、改めて教えられた気がする。

<SPECIFICATIONS>
☆GLE450 4マチック スポーツ
ボディサイズ:4940×2020×1780mm
車重:2370kg
駆動方式:4WD
エンジン:2996cc 直列6気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:367馬力/5500〜6100回転
最大トルク:51.0kgf-m/1600〜4500回転
価格:1153万円

<SPECIFICATIONS>
☆GLE300d 4マチック AMGライン
ボディサイズ:4940×2020×1795mm
車重:2330kg
駆動方式:4WD
エンジン:1949cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:245馬力/4200回転
最大トルク:51.0kgf-m/1600〜2400回転
価格:991万4000円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)


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