広さや走りは宿敵超え!三菱「eKスペース」はベーシックだけど実力はピカイチ

■乗る人を選ばないスタイルと広いキャビン

実は軽ワゴンには、適度に背が高く、両サイドのリアドアにヒンジ式を採用した“ハイトワゴン”と、ハイトワゴンの全高をさらに高くし、リアドアをスライドタイプとした“スーパーハイトワゴン”とが存在する。このうちイマドキの売れ筋は後者だ。

今春の全面刷新で2代目へと進化した三菱のeKスペースも、そんな人気ジャンルに属すモデルだ。新型は、以前紹介した「eKクロススペース」や日産「ルークス」とともに開発が進められ、それぞれ基本構造を共用する兄弟関係にある。ここからは、そんなeKスペースの魅力を5つのポイントから紹介したい。

まずひとつ目のポイントは、そのスタイルだ。

上級バージョンであるSUV仕立てのeKクロススペースに対し、eKスペースはよりベーシックかつシンプルな立ち位置。ヨーグルトに例えると、ストロベリーやフルーツミックスといったフレーバーやトッピングの入ったものではなく、プレーンヨーグルトのような存在といっていい。

エクステリアデザインは“無印良品”的で、とがった個性こそないけれど、誰にでも受け入れられるシンプルな雰囲気。軽スーパーハイトワゴンは販売台数が多いためユーザー層も幅広く、その分、多くの人に受け入れられる見た目が必要となる。そうした点から見ると、eKスペースのちょっとかわいらしいヘッドライトや、愛嬌あるフロントグリルなどは、若いファミリーユーザーから年配の人まで、老若男女にイヤな印象を与えないはずだ。

その上、ピンクやアイボリー、薄いブルーといった明るいカラーを中心に、モノトーンを6色、ルーフをブラウンやホワイトに塗り分けたツートーンを3色と、計9色が用意されるボディカラーも雰囲気がよく、エクステリアデザインにマッチしている。

強い個性こそないが、多くの人から好印象を抱かれるeKスペースのデザインは、無味無臭だが飽きの来ない骨太なスタイルともいえるだろう。仮に、もっと個性が欲しいという人は、派生モデルであるeKクロススペースを選べばいいだけだ。

そして、ふたつ目のポイントとなるのは、やはり軽スーパーハイトワゴンとしては外せないキャビンの広さと便利機能の充実ぶり。この点においても、eKスペースはしっかりツボを押さえている。

軽自動車はボディサイズの上限が決められていて、全長3400mm×全幅1480mmという制約の中で、いかに広い居住スペースを確保するかが各メーカーの腕の見せどころとなる。eKスペースはエンジンルームの前後長を短くした新しいパッケージングにより、広い居住空間を確保。ワゴンモデルの広さを示す指標のひとつ“前後席間距離”は、2位のホンダ「N-BOX」と僅差ながらクラストップを達成している。実際乗り込んでみても「これほどのスペースが必要なの?」と思うほど広い。リアシートを日常的に使うユーザーにとって、これは大きな魅力だろう。

もちろん広さだけでなく、便利機能においてもeKスペースはクラスをリードする。例えばスライドドアは、最大開口幅が650mmとクラスナンバーワンの大きさで、さらにオプションではあるものの電動スライド機構も用意。そのスライド機構には、足の動きをきっかけに、手を触れることなくドアを開閉できる仕掛けが組み込まれているが、それを運転席側と助手席側にそれぞれ用意し、開くだけでなく閉じることもできるのは、同クラスではeKスペース(とその兄弟モデル)だけだ。

日常のパートナーとして、どんなところを磨き込めばユーザーに喜んでもらえるか? eKスペースはそうした点をしっかりと踏まえたクルマ作りを行っている。

■走りもクラスをリードする完成度

最近の軽自動車は、ひと昔前のモデルに比べて走行安定性が大いに高まるなど、走りもあなどれない。こうした走りの実力の高さは、eKスペースの魅力を語る上で外せない3つ目のポイントだ。

今回、eKスペースを走らせていてまず驚いたのは、交差点を曲がる際の挙動。軽スーパーハイトワゴンのように背の高いクルマは、コーナリング時にクルマの傾きを上手に抑えるのが難しく、曲がる時にふらつく感覚を乗員に与える場合が多い。

しかしeKスペースは、車体が傾く量やそのスピードがしっかりコントロールされていて、コーナーを曲がっても唐突に傾くような挙動が生じず、その分、運転時の安心感や運転のしやすさにつながっている。また、高速走行時にハンドルを修正する機会が少ないことからも、直進安定性が高いことが分かる。

eKスペースがこれほどまでに走行時の安定感を作り込んできたのは、ターゲットユーザーとしてミニバンから買い替え組も狙っているためだ。ミニバンから乗り換えても「軽自動車なのに走りが安定している」と感じてもらおうと、開発陣はしっかり感を作り込んできたという。

そして4つ目のポイントとなるのが、走りの力強いターボ車をラインナップすること。筆者は普段から、軽自動車のパワーユニットとしてターボエンジンをオススメしている。なぜなら、発進加速や高速道路での合流時などでも走りに余裕があり、結果的に安全運転にも寄与するからだ。

しかし、兄弟車である日産のルークスがそうであるように、スーパーハイトワゴンの多くは、派手なルックスをまとうカスタム系モデルでなければターボエンジンを選択できない。しかしeKスペースはスタンダード仕様でありながら、しっかりとターボ車を選べる。しかもターボ車の価格は163万5700円〜と、ライバルよりもリーズナブル。これはとても魅力的だ。

■安全装備の充実ぶりは普通車を超えた!?

そして最後のポイントとなるのが、先進の運転支援デバイス。eKスペースの安全装備は、ぐうの音も出ないほどの性能を誇る。

カメラにレーダーを組み合わせて前方を監視する衝突被害軽減ブレーキは、三菱車の中で最高ランクの性能を達成している。中でも、前方を走行しているクルマの、さらに前を走るクルマ、つまり、2台前を走っているクルマの挙動まで検知し、ブレーキをかけるよう警告してくれる機能は秀逸で、いち早く前方の異常を察知して玉突き衝突を防いでくれる。こうした機能を搭載するモデルは普通車でも珍しい。

またオプションで、高速走行時にアクセルやブレーキを操作しなくても前走車に合わせて速度を自動調整する“アダプティブクルーズコントロール”を用意。渋滞中に完全停車した際にも停止状態を自動で保持してくれるなど、先進技術が惜しみなく投入されている。

以上、5つの点からeKスペースの魅力を分析してみた。軽スーパーハイトワゴンは人気ジャンルだけあって激戦区であり、ホンダのN-BOXやダイハツの「タント」、そしてスズキ「スペーシア」などライバル車の実力も高い。しかし、広くて実用的、その上、ターボ車購入に対する敷居の低さや先進安全装備の充実など、eKスペースは多くの要素でライバルをリードする。シンプルなスタイリングを含め、ひとつでも気に入ったポイントがあれば、積極的に選んで間違いないモデルだろう。

<SPECIFICATIONS>
☆G(2WD)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1780mm
車重:950kg
駆動方式:FF
エンジン:659cc 直列3気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:52馬力/6400回転
エンジン最大トルク:6.1kgf-m/3600回転
モーター最高出力:2.7馬力/1200回転
モーター最大トルク:4.1kgf-m/100回転
価格:154万2200円


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文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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