【食はエンターテインメントだ!】
鎌倉の静かな通りを歩いていると、ふとある一軒のお店に足が止まる。歴史ある酒屋の面影を残したその場所には、二つの店が隣り合わせで営業しています。
それはひらがなの柔らかい文字が躍る『角打なおらい』と『あやとり』。ここは、それぞれに異なる料理の道を歩んできた石黒さん夫婦が、一続きの空間を二つに分かち合って営む、少し不思議で、とても心地よい「止まり木」のような角打ちの店なのです。
◾️二つの暖簾、一つの想い
鎌倉駅から少し裏路地の方へ向かう鎌倉・大町エリア。もともとはこの場所、長く続いた「石川屋酒店」で、その跡地をどうするかという話が持ち上がったとき、夫の昂士さんがちょうど独立を考えていたタイミングと重なったそう。
「もともと酒屋だったこの建物の雰囲気が好きでしたし、日本の文化である『角打ち』を自分たちの手で形にしたいと思ったんです」と昂士さんは語ります。
一軒の店として営む選択肢もあったはずだが、二人はあえて「別の店」として分ける道を選びました。それは、妻の綾さんが磨いてきたフレンチやエスニックの感性と、昂士さんがそば屋や和食店などで培ってきた日本酒への探求心。お互いの「好き」を妥協することなく表現するためには、この境界線が必要だったから。
▲カウンターでお客様と対話する石黒さん夫婦。ふらりとやってきてお酒と会話を楽しむ。昔ながらのそんな風景がこの店にはある
「おすすめのお酒ちょうだい!」と酒屋時代のように気軽に敷居を跨いだように、この店はどちらもオープンだ。真ん中をガラス戸で仕切り、『角打なおらい』では酒が並ぶショーケースに、お酒のラックを積んだテーブルとカウンター。好きなお酒とつまみを買っては愉しむといった角打ちらしいラフさがあります。
一方で『あやとり』はカウンターに腰掛けて、綾さんの料理とお酒のペアリングを嗜む。可愛い女将さんがいる小料理屋といった雰囲気がいい。ランチは軽やかに、夜は少ししっとりと。なんとも心地いい空間と料理が提供されます。
そしてこの二つのお店、ランチ営業が終わるとしばし敷居が緩くなり、行き来が自由になる。この緩さ、ちょっと海(もしくは山)に行ってくる、ちょっと魚釣ってくるという自然と共存する鎌倉暮らしを垣間見せてくれます。


















