【BMW 118i試乗】3気筒でも上質。絶滅危惧のFRハッチに乗るなら今!

…といった書き出しを読むと、クルマ好きの圧倒的多数の方々は「何を今さら…」と困惑するでしょう。一方、日常的に1シリーズのステアリングホイールを握る実際のオーナー、例えば、リッチな奥様方や、はたまた、ブランドは好きだけどクルマそのものにはそれほど興味がない男性諸氏は、「だから何?」と思われるはず。

念のため確認しておきますと、FRのいいところはズバリ、「走りが上質になる」こと。

どんな高級車でも、クルマと地面とは、タイヤの一部で接しているだけ。その面積は、通常“ハガキ1枚分”。ブッ太いスポーツタイヤを履くクルマでも“ピザ1枚程度”といわれます。

そんな限られた面積のゴムが持てる摩擦力を使い、駆動力を地面に伝えて加速し、ブレーキ時には減速し、ステアリングを切れば曲がる…といった一連の作業をクルマはこなしているわけです。

1本のタイヤが持つ摩擦力には限りがありますから、できるだけ作業を分担させてやりたい。となると、“曲がる”を前輪に、“加速する”を後輪に振り分けられるFRは、その分、タイヤに優しいことになります。クルマとしては全体に「無理のない走りになる」と、いい換えてもいいでしょう。

BMW 118i スポーツ

さらに、ステアリングを切る際に、前輪は主にクルマの向きを変えるために使われ、駆動力は後輪が受け持ちます。つまり、前輪に駆動力の干渉がないので、いわゆる“雑味のない”ステアフィールを得られる。すっきりした気分でカーブを曲がれるんですね。

そんな“上質な走り”が自慢のFRモデルですが、もちろんマイナスポイントもあります。

エンジンを縦(前後)に置くのでノーズ=エンジンルームが長くなり、同じボディサイズの場合、結果的にキャビンに割ける割合が減る(後席スペースを取ろうとすると、ラゲッジスペース容量が厳しくなります)。

また、後輪に駆動力を送るためのプロペラシャフトが車体を前後に縦断するので、フロアに大きなトンネル(盛り上がり)が生じる。特にリアシート中央に座る乗員は、足のやり場に困ることになります。

「走りの上質さ」なんてものは、なかなか数値に表しにくいけれど、室内の広さ、リアシートの居住性の優劣は、すぐに分かります。ことに、車体寸法が限られ、販売価格が抑えられるコンパクトモデルにおいては、決定的な要因になりかねません。

それでもあえてFRを採用し、“駆け抜ける歓び”を守っているBMWは立派です。上質さという、なんともつかみがたいファクターを真剣に追い求めるからこそ、プレミアムブランドといえるのでしょう。

 ■新3気筒はBMWの名に恥じないスムーズさ

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