【ボルドー取材記】甘美なワインとロマンティックな物語

2016年9月、収穫直前のボルドーのソーテルヌ地区周辺を訪問しました。ソーテルヌはボルドー市街の南に位置し、貴腐ブドウでつくる甘口ワインで有名な産地です。

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貴腐ブドウは、貴腐菌(ボトリティス・シネレア)と呼ばれるカビの一種が付いたブドウです。カビというとマイナスのイメージがありますが、貴腐菌はブドウの果粒から水分を奪い、エキス分と甘みを濃縮させる働きをします。貴腐ブドウを絞ると、独特の風味の濃厚な果汁が得られ、素晴らしい甘口ワインになります。でも、ブドウの樹1本から得られるワインは、ソーテルヌだとたったグラス1杯分だとか! 貴重ですね。

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健全なブドウ(左上)にボトリティスが付着し、だんだんと水分が抜けて貴腐ブドウになっていく様子の写真です。右下が収穫時の状態です。

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収穫は貴腐ブドウの付いた粒を選って手で摘み取ります。収穫はシーズン中に何回も行ないますので、貴腐ワインは、普通のワインよりも手間がかかります。

ソーテルヌワインの原料になるブドウは、白ブドウのセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルの3つです。

最も多く使われるセミヨンは豊かなアロマを、ソーヴィニヨンはライムやグレープフルーツのようなフレッシュさ、アロマ、酸味をワインに与えます。病気に弱いデリケートなミュスカデルの栽培面積は少量ですが、キャンディのようなアロマをもたらします。

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「ソーテルヌ地区はガロンヌ川の近くにあり、朝に発生する川霧の湿気がブドウにボトリティスをもたらします。ボトリティスは、スモーキーなアロマ、スパイシーなノート、複雑味をワインに与えます」と、Château de Myrat(シャトー・ド・ミラ)のマダム、エリザベトさんは言います。

ただし、ボトリティスは毎年発生するとは限りません。例えば2009年は夏が暑く、ブドウはよく熟し、凝縮したものの、ボトリティスは発生しなかったそうです。

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ヴィンテージの違うワインを飲み比べました。基本的には、若いワインの方が色調が明るくて淡い傾向にありますが、年が古いからワインの色が濃くなるのではなく、年ごとに色の濃淡のキャラクターがあるそうです。

 

■ボルドーの甘口ワイン産地で最も有名なソーテルヌ

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ボルドーの甘口ワイン産地には、10のAOC(原産地呼称)があります。10の産地は2009年に「Sweet Bordeaux」というコミュニティを設立し、ボルドーの甘口ワインのプロモーション活動を行なっています。

Sweet Bordeaux ―10AOC

  • Bordeaux Supérieur
  • Premières Côtes de Bordeaux
  • Graves Supérieures
  • Cadillac
  • Loupiac
  • Saint-Croix-du-Mont
  • Cérons
  • Barsac
  • Côte de Bordeaux Saint-Macaire
  • Sauternes

10のAOCのうち最も有名なのがAOC Sauternes ―ソーテルヌです。隣接するAOC Barsac ―バルサックと合わせて27シャトーが格付けされています(1855年の格付)が、ソーテルヌ地区では約200の生産者がいるそうです。

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ソーテルヌで甘口貴腐ワインを生産できるコミューン(村)は、「Barsac」「Bommes」「Fargues」「Preignac」「Sauternes」と5つあります。

一定の基準を満たしてつくられた5つのコミューンの甘口ワインは、各コミューン名をラベルに表記できますが、より広義の「AOC Sauternes」を記載する生産者が多いそうです。というのも、やはり「ソーテルヌ」の方が知名度があり、ブランド力があるとわかっているからです。

ソーテルヌ&バルサックの格付け最高峰は「Château d’Yquem(シャトー・ディケム)」で、唯一の“プルミエ・クリュ・シュペリュール”です。稀少かつ超高価なお宝ワインで、私も口にしたことは、片手ほど。でも、日常の中でも楽しめるSweet Bordeauxだって、もちろんあります。

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▲Sweet Bordeaux 会長

会長も生産者のひとりで、10年前から現職にあります。力を入れて取り組んでいるのは、甘口のボルドーワインのイメージが古くなってきているのを新しいものに変えることだそうです。

ターゲットは若い人、特に女性です。フランスではワインの購入者の70%が女性だそうです。中国、香港を中心に海外でのプロモーションも活発に行ない、アメリカでも増えていますが、日本では伸び悩んでいるとのこと。でも、これからに期待したい、と仰っていました。

インターネットのサイトを立ち上げてアピールし、特にFBを重要視していますので、ぜひサイトをチェックしてみてください。

>> Sweet Bordeaux

 

■料理と甘口ワインの素敵なマリアージュを堪能

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