資金調達だけじゃない!クラウドファンディングの目的とメリット

■クラウドファンディングで得られるメリット

ーークラウドファンディングというと資金調達というイメージが強いのですが、それ以外にプロジェクトを起案する目的やメリットがあるのでしょうか?

沼田さん 我々のプラットフォームは「購入型」なので、「購入型」のクラウドファンディングについてお話します。クラウドファンディングでプロジェクトを起案する目的やメリットはいくつかありますが、大きくは以下の6つが考えらます。

1.資金調達
2.テストマーケティング
3.広報・PR
4.ユーザー・販路の確保
5.在庫リスクの軽減
6.製品のブラッシュアップ

便宜上6つに分類しましたが、明確に分かれているわけではなく、全部まとめてクラウドファンディングの目的であり、メリットだといえます。

ーー意外なメリットもありますが、まずは一番イメージしやすい資金調達について教えてください。

松崎さん ひと口に資金調達といっても、最大限の事業(起案するプロジェクトの実行)資金をまかなうのか、目標(設定金額)に届かずとも多少なりとも支援を得たいのかで、調達する資金の意味合いは異なります。

事業資金をまかなう場合は、融資を含めてさまざまな方法で資金を調達し、それでも足りない分を目標設定金額にし、出資してくれる人を募ります。まさにクラウドファンディングらしい、一番分かりやすい目的であり、メリットだと思います。

もう一つは、すでにプロジェクトを実行することは決まっているけど、もっと資金があればできることが多い、もしくは少しでも資金のサポートをしてもらいたい、といった場合があります。この場合は「資金調達」というよりも「支援」といった方がしっくりくるかもしれません。

逆に、すでに市場投入が決まっている製品のニーズがどれだけあるのかを探る場合は、必ずしも資金調達が目的でないこともあります。

▲海外ハードウェアメーカーの日本マーケット進出プロジェクト。マーケティング目的のため目標金額は低めに設定されているが、結果として支援総額1億円を達成

ーー資金調達が目的でなく、ニーズを探るということは、マーケティング的に使われているということでしょうか?

沼田さん そうですね。最近はクラウドファンディングをマーケティングに利用するケースが増えてきました。

例えば、事業展開するにあたり、資金調達額がひとつの目安になる場合。資金が集まらなかったら事業化せずにチームは解散するといった、新規事業のマーケティングテストとして使うケースもあります。この場合は資金調達の面もありますが、起案する事業は受け入れられるのか、市場があるのかどうなかのを見極める要素が強いかと思います。

松崎さん 同様に、プロダクトニーズの確認もありますね。分かりやすい例だと、海外製品を日本展開する時。ニーズがあれば、日本向けにカタログやアプリをローカライズして展開しましょう。ないのであれば日本では展開しないという判断を下せます。

また、初めて製品を作って売り出すのに、どれだけのロットを作ったらいいか分からない場合。支援者の数が明確になりますので、製造数の見込みが立てられます。これは製品仕様の話になるかもしれませんが、極端な例では、どちらがいいですか? というABテストも可能です。

▲海外製品の輸入RCカー。日本の電波法に適合させる費用は持ち出しで負担を決めているが、日本市場でのニーズをはかるべく起案。目標金額は15万円に対して3000%以上にもなることから、ニーズの高さをうかがい知ることができる

ーー広報・PRにクラウドファンディングを使うというのはどういうことでしょう?

沼田さん 新製品発表時に合わせてクラウドファンディングを開始すると、SNSでバスが起き、メディア取り上げにプラスした効果が見込めたりします。最近はクラウドファンディングを始める前に、事前に登録すると開始情報を送りますというティザー的な展開も増えてきています。

また、プロジェクトページには、製品アイデアが生まれた背景など、スペックだけでなくストーリーが語られていたりするので、さまざまなメディアに取材してもらったり、記事化してもらえたりしやすいというメリットが挙げられます。

クラウドファンディングサイトに登録しているユーザーにもメルマガ等で紹介されますが、どんどん登録人数も増えてきていますので、プロジェクトを行うこと自体がPRになります。さらに面白いものだと、早々に目標金額を達成したり、設定金額を大きく上回ったりします。その達成率や達成金額を前面に打ち出して、一般販売時の自社製品PRに使われることも多いです。

▲アイデアや面白い視点が詰まった製品はメディアでも取り上げやすい。ありそうでなかったもの、課題を解決するものなどは、求めている人が多い

松崎さん サイトに掲載されるプロジェクトの紹介自体も記事的要素を持っているので、自社製品の広告にもなりますしね。PRと共に、お金を払ってくれるユーザーさんが先に付くっていうところは非常に大きいところです。例えば、レストランが新規出店する際、難しいのがお客さんをどう集めるか。

その点、クラウドファンディングで「こういうコンセプトで新しいお店やろうとしているんですよ」とプロジェクトを立ち上げれば、興味を持ってくださったお客さんが先にお金を払ってくださるんですね。そうすると、お金で支援してもらえるだけでなく、認知してもらって、リターンのために来てもらえます。つまり、お客さんがついてくるんです。これは金融機関等での資金調達と比べ大きく違う点といえます。

▲保護猫カフェを中心に5階建ビルの複合施設を作るための改装工事資金を集めたプロジェクト。実現したいことと、想いをプロジェクトページに載せる。賛同する人が支援すればプロジェクトは成功し、店のPRにもなり、そこにお客さんも付く

ーーそれが、ユーザーの確保や販路の拡大にも繋がるということですね?

沼田さん そうですね。資金調達の手段は増えてきていますが、お客さんに直接モノを売る新たな販路は依然として開拓しにくいものです。

販路を持っている大企業であればいざ知らず、中小企業で「元々はOEMの製品を大企業向けにモノを作っていたから作るのは得意です! でも自社ブランドを立ち上げて一般の消費者の方に売ろうと思った時にどうやって売ればいいか分からない、どれだけ製造したらいいか分からない」といった場合には、クラウドファンディングが非常に有効な手段です。もちろん新しく立ち上がったハードウェアベンチャーや日本に進出してくる海外メーカーにも同じことがいえます。

ーー支援する人の数が分かるから、販路だけでなく在庫リスクの軽減につながるのですね

沼田さん 通常、商品開発から販売までの流れは、企画・開発し、たくさん在庫を作っておいて、大々的にマーケティング費を投じて発表し結果を待つ、というパターンです。

クラウドファンディングはそうではなく、プロトタイプ完成をもってプロジェクト起案するので、在庫をたくさん作っておく(持っておく)必要がありません。集まった分だけ作ればいいので、無駄な在庫を持たずに済むのです。

また中小・スタートアップ・海外メーカーさんは、常時営業がいないところが多く、日々発注を受けても発送するのにリソースを割けない場合があります。その点、完成して送る時だけまとめて発送作業をすればいいので、経済合理性が高いのです。

――では、製品のブラッシュアップがメリットということはどういうことでしょう?

松崎さん クラウドファンディングの大きな特徴のひとつに、支援者と直接コミュニケーションできるという点があります。意見を聞きつつより製品を見直していくことが可能です。結果、仕様変更になることもありますが、支援者側も、クラウドファンディングはそういうカルチャーだし、より良いものを作るなら、ということで許してくださいます。

ECで、すでに売られている製品のスペック変更や使用変更は御法度。クラウドファンディングでももちろん説明責任はありますが、ユーザー側のメリットが明らかに下がらなければ許容範囲。デザインの変更などはよくありますし、当初よりも製品がブラッシュアップされ、結果的にユーザーにとって使いやすいプロダクトに仕上げられるのもある種のメリット。支援者の方も一緒に作っていく当事者的な感覚を楽しめます。

――プロジェクトの起案する側には、さまざまなメリットがあるのは分かりました。では、支援する側のメリットは何でしょうか?

松崎さん 何といっても世にない新しいものが手に入るということですね。既存のECサイトでは買えませんし、所有欲をくすぐられます。メルマガの開封率が高いのも、クラウドファンディング利用者にはアーリーアダプターが多く、いち早く手に入れたいという思いが強いからかもしれません。早い方が割安で出資できる(アーリーバード)点も大きなメリットです。人気の製品は起案後、早々に早割がなくなります。

また、支援することでエンターテインメント感覚を味わえるという点も少なからずあるのではないでしょうか。All-or-nothingの場合、目標に達することができなければプロジェクトは遂行されません。支援したプロジェクトが目標を達成した時に「達成してよかった!」と思えるのは、スポーツで贔屓のチームを応援する感覚に近いのかもしれませんね。

※  ※  ※

クラウドファンディング市場の急拡大には、プロジェクトを起案する側と、支援する側それぞれにメリットが広く認知されてきたからかもしれません。

とはいえ、いい面ばかりではありません。連載3回目となる次回は、トラブルとデメリットについての話です。デメリットに関しては、プロジェクトを起案する側よりも、支援者の方に多くありますので、よくクラウドファンディングの特性を理解することが大切になります。

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<取材・文/澤村尚徳(&GP) 写真/恩田拓治>

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