アウトドア史に残る傑作品とその後継者たち【僕たちの好きなU.S.A. PRODUCTS】

▼SIERRA DESIGNS

■考え抜かれた素材やディテールでマウンテンパーカーを定義

1965年創業のシエラデザインズが、画期的なアウトドアウェアを誕生させたのは'68 年のことだ。約60:40の比率で横糸にコットン、縦糸にナイロンを混紡した「60/40クロス」を採用した「マウンテンパーカー」は、耐摩耗性と通気性を兼ね備え、発売直後から人気が爆発。日本でも75年の上陸後、アウトドアユースだけでなく、ファッションアイテムとしても注目された。50年以上経た現在もリリースが続き、不朽の名作となっている。

▲創業者のジョージ・マークスとボブ・スワンソンは、海で遭難した経験から高機能な装備の開発を決意

▲素材だけでなく、丸いレザークッキーなどのディテ ールでも、後のアウトドアウェアに影響を与えた

▲誕生当初から豊富なカラ ーバリエーションを用意。着心地のいいタウンウェアとして注目された

シエラデザインズ
「50周年記念マウンテン・パーカー」(4万5360円)

誕生50周年を祝う特別モデル。60/40クロスをはじめ、オリジナルの仕様を守りつつ、ボタンなどに50周年の文字を刻印。初期の雰囲気を再現した5色を用意する。

 

▼Danner

■素材にゴアテックスを採用してブーツの常識を革新

ワークブーツの製造に始まるダナーの歴史の中で、代表的なモデルのひとつが「ダナ ーライト」である。1979年に誕生したこのブーツは、それまで靴への使用が難しいとされていた防水透湿素材 “ゴアテックス” を世界で初めて採用した画期的な製品。軽量かつ防水性に優れる実用性の高さが注目され、幅広い層の支持を集めた。現在も“防水ブーツの代名詞”としてシリーズは継続し、同様の構造を採用した後継モデルも多数登場している。

▲“可能な範囲の中で最も優れた靴を作る”というポリシーを掲げ、1932年に創業。現在も高機能な靴を作り続けている

▲初期の広告。快適さや機能性を説明して、長く使えるブーツであることを訴求した

▲当時アメリカで使われていなかったビブラムソールもいち早く採用。 機能性を追求した

ダナー
「ダナーライト」(5万9400円)

誕生当初の基本仕様を守る定番。アッパーには防水性に優れたフルグレイレザーとゴアテックスブーティーを使用。グリップ力が高いビブラムソールは交換に対応する。

 

▼L.L.Bean

■氷を運ぶために生まれたシンプルかつ丈夫なキャンバスバッグ

L.L.Beanを代表するアイテムであるトートバッグは、実は氷を運ぶために作られたもの。1940年代のアメリカ・メイン州では、食物の貯蔵用に湖で切り出した氷を使う習慣があり、その運搬用に厚手の24オンスキャンバス地を使用したバッグが開発された。シンプルな作りながら、タフに使える工夫が随所に施されたこの名作は、今も世界中で幅広い用途に用いられている。

▲24オンスキャンバス地は、丈夫さに加えて氷が溶けてもすぐに水が染み出さない点も重宝された

L.L.Bean
「ボート・アンド・トートバッグ オープン・トップ(スモール)」(6372円)

誕生当時と同じ厚手の24オンスキャンバス地を使用し、メイン州の工場で手作りされている現行モデル。ハンドルの長さはレギュラーとロングの2種類から選べる。

▼STANLEY

■普遍的な機能とデザインで “孫の代まで使える”ボトルに

1913年に誕生したスタンレーは、100年を超える歴史の中でフードジャーやマグ、クーラーボックスなど、高機能な保温ウェアを数多く世に送り出してきた。真空断熱構造を採用したボトルは、その代表的なアイテム。保温力に加え、本体や底面の耐久性も高く、幅広いシーンで利用されてきた。クラシカルな中に普遍性を感じさせるデザインで、現在も人気を集めている。

スタンレー
「マスター真空ボトル1.3ℓ」(1万800円)

伝統の真空断熱構造を受け継ぎつつ、アルミ箔を加えた二重の金属箔構造を採用し、保温性能を高めた新モデル。ハンドル部には感触が良く滑りにくいシリコン素材を使用する。

▲耐久性を高め、錆び止め効果のあるグリーンの塗装は、ブランドのアイコン的なカラーとなった

 

▼LODGE

■丈夫な鋳鉄製の万能調理器具として西部開拓時代に活躍

1896年にテネシー州に創設された鋳鉄所から、ロッジの歴史は始まった。当初は家族経営の工場だったが、徐々に施設や鋳造法を改善。多彩なキャスト・アイアン(鋳鉄)製品を生み出した。象徴的な製品であるダッチオーブンは、西部開拓時代の生活や旅の中で愛用されていた調理器具。昔ながらの手法で作られたロッジの製品は、アウトドア調理の万能アイテムとして世界中で使われてきた。現在は日常使いにも便利な進化版も登場し、家庭からプロの調理現場まで幅広く利用されている。

▲丈夫で優れた蓄熱性を発揮する鋳鉄製の鍋は、アウトドアでラフに使えることで昔から重宝されていた

▲創業者ジョセフ・ロッジが設立したのは家族経営の小さな鋳造所。そこから多くの製品が生まれた

ロッジ
「カラーエナメルダッチオーヴン 9 3/4インチ レッド」(1万7820円)

重厚な鋳鉄製の鍋に、エナメルコーティングを施したモデル。手入れがしやすい上、熱伝導と保温性も高く、家庭でのさまざまな調理にも利用しやすい。IHにも対応する。

 

▼THERMAREST

■アウトドアでの睡眠の質を変えた軽く快適なマットレス

サーマレストのマットレスは、創業メンバーのひとりが使っていたクッションの空気漏れが誕生のきっかけだった。「オープンセルフォームを内蔵した袋にバルブがあれば内部の圧力を調節できる」。そんな発想を製品化すると、保温性があり寝心地も快適。すぐに世界中に広まった。現在もその改良版や寝袋などでアウトドアでの眠りを支えている。

▲初期の試作品で使い勝手の良さを確信。テストを繰り返して1年後の1972年に製品化にこぎつけた

▲ボーイング社のエンジニアだったジョン・バローズを中心に、3人のメンバーで1972年に創業した

サーマレスト
「ネオエアー Xライト マックス SV」(2万8080円)

軽量設計のモデルに素早く空気が入れられるバルブを組み合わせた3シーズン用マットレス。熱反射板を内蔵し、地面からの冷気を防ぎつつ、体熱を反射して温度を保つ。

 

▼MSR

■アルパインクライマーの活動を変えた分離型ストーブのパイオニア

現在ではテントやクックウェア、浄水器なども展開するMSRの名を世に知らしめた製品のひとつが、1973年に登場した「モデル9」だ。創業当初からクライミング用品の安全性を追求していた同社は、急性高山病の研究を元に登山用としては世界初の分離型ストーブを開発。軽さと高火力を両立し、多くの登山家から高い評価を得た。

▲本体と燃料ボトルを分離でき、安定して使える構造は、荷物の省スペース化を追求する登山家に絶賛された

▲MSRはラリー・ペンバーシーが'69年に設立。ピ ッケルやテントでも画期的な製品を生み出した

MSR
「ウィスパーライト インターナショナル」(1万6200円)

「モデル9」の思想を受け継ぐ小型ストーブの定番。火力が強く燃焼音が静かな点も特徴。直径が大きく滑り止めがある五徳で鍋が安定する。ホワイトガソリン、無鉛ガソリン、灯油を使用可能。

 

▼THE NORTH FACE

■建築家の理論を巧みに具現化した理想的なドーム型テント

1966年に創業したザ・ノース・フェイスが、建築家や思想家として活躍したバックミンスター・フラー博士と共に世界を驚かせたのが1975年のこと。最小の面積で最大の容積と強度を得られるドーム型テント「オーバルインテンション」を開発し、テントの常識を覆した。デザイン性や居住性にも優れるこのモデルをきっかけに、他社もド ーム型テントを開発。ザ・ノース・フェイスも進化した後継モデルを着々とリリースしている。

▲ドーム型の強度は'76年のイギリスとカナダによるパタゴニア遠征で唯一暴風雪に耐えたことで実証された

▲バックミンスター・フラー博士は、生物の卵が球形であることをヒントに、独自のドーム理論を提唱した

ザ・ノース・フェイス
「ジオドーム4」(19万4400円)

バックミンスター・フラー博士の思想を体現したドーム型テントの最新形。わずか6本のポールで半球以上の高さを形成し、広い居住空間を確保できる。4人用。

 

▼Coleman

■“真夜中の太陽”とまで呼ばれたランタンを100年かけて着実に進化させる

キャンプ用品を中心に幅広いアイテムを展開するコールマンの歴史を語る上で欠かせないのが、高性能なランタンである。そもそもガソリン式ランプの貸し事業からスタートした同社は、1914年に屋外で使える全天候型ガソリンランタン「アークランタン」を開発。太陽の光を頼りにしていた農村の生活を一変させ、“真夜中の太陽”とまで称された。後に軍用ストーブやキャンプ用ランタンも開発。現在はLEDを採用したモデルも手がけている。

▲アークランタンは、大きなガソリンタンクと大型グローブを採用。高い実用性が評価された

▲創業者のウィリアム・コフ ィン・コールマン。都市での電灯普及を見て、農村向けのランタンを開発した

▲形状や燃焼方式などが少しずつ改良されていった結果、膨大な種類のランタンが生まれた

コールマン
「クアッドマルチパネルランタン」(1万584円)

LEDパネルを4つ搭載し、それぞれを取り外せば懐中電灯などとして使用できる。本体にはUSBポートがあり、携帯電話などの充電にも対応。 IPX4対応の防水性能も備える

 

▼BUCK KNIVES

■確かな素材と絶妙なディテールで折りたたみナイフのベストセラーに

1902年にカンザス州で設立されたバックナイフは、独自の熱処理方法により頑丈で刃持ちがいいナイフを開発したことをきっかけに、評価を高めていった。64年に発売し、同社の代名詞的存在となった「110フォールディングハンター」は、ロックブレードを備えた世界初の折り畳みナイフ。こうした実用性と切れ味の良さは、現行モデルにも脈々と受け継がれている。

▲名品の誉れ高い110フォールディングハンタ ーは、現在も発売されるロングセラーモデルだ

▲無名の鍛冶屋だった創業者H.Hバックは高品質なナイフを開発し、世界的なブランドへと成長させた

バックナイフ
「818CF エイペックス」(8856円)

片手で素早くブレードを出せる構造を採用したポケットナイフ。ハンドル部にカーボンファイバーを使用。カラビナとクリップも備える。

 

▼GRAMICCI

■クライミングパンツを画期的なディテールで革新

グラミチは、ロッククライマーの聖地と呼ばれるカリフォルニア州のヨセミテで誕生。当時のクライミングウェアにはなかった、180°の自然な開脚を可能にした“ガゼットクロッチ”や片手で調整できる“ウェビングベルト”など画期的なディテールを開発し、1982年の発売以来、多くの人に支持されてきた。現在はタウン用も含め、多彩な製品を展開している。

グラミチ
「ギアショーツ」(9504円)

ガゼットクロッチやウェビングベルトに加え、大型のポケット、カラビナなどが装着できるパーツが付いた機能的なショーツ。ナイロン素材を採用し、水陸両用で使える。

本記事の内容はGoodsPress6月号44-47ページに掲載されています

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(文/高橋 智)

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