コーヒーチェーンが送り出すコンセプトショップ3選【特集「コーヒー空間学」】

■コーヒーと本の魅力が出会う場所

その場所に一歩足を踏み込むと、セピアでまとめられた空間が広がる。コーヒーのアロマの中に流れる静かなジャズ。その風景は、まるで古から時を刻んできた図書館のようだ。そう、池袋の近代的な商業施設の中に造られた『梟書茶房』は、大英図書館をイメージしたインテリアでまとめられている。

▲サイフォンは高温で抽出することができる。温かさの持続時間が長いのと同時に、冷めても酸味が立ちにくいブレンドにすることで、長時間ゆったり過ごせる

運営するのは、街中に人々の憩いの場になる店舗を持つドトールコーヒー。しかし、ここは特別だ。一般的なドトールのコーヒーは機械抽出だが、注文を受けてから一杯ずつサイフォンで淹れる。特別な「梟ブレンド」だ。高温で抽出して、冷めての美味しく飲める工夫が施されているのだ。つまり、ゆったりと本でも読みながら長時間過ごしてもらいたいというコンセプト。ソファや椅子も長居ができるデザイン。

▲フードも豊富で、スイーツから食事まで、ほかのドトールの店舗にはない、梟書茶房だけの料理を味わうことができる

そして天井から下げられたシャンデリアは、茶色い壁やテーブルに反射して優しい光を映す。それが訪れる人々の心を落ち着かせてくれる空間を作り出しているのだ。

▲珈琲賢人「菅野眞博」氏とブックマスター「柳下恭平」氏がチョイスした、ブレンドと本のセットも販売されている

もうひとつ特徴的なのは、表紙を隠した1231タイトルの文庫の書架が設けられていること。解説を読んで直感的に購入するのだ。何が出てくるかわからない。それもまた楽しみのひとつ。

コーヒーと本の意外な出会いを楽しもうではないか。

本と珈琲梟書茶房
住所:東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋4F
営業時間:10:30〜22:00(ラストオーダー21:30)
定休日:Esola休館日

 

■人と人が向き合う空間

『No.11』(ナンバー・イレブン)。この店名こそに意味がある。数字の1を人に見立て、互いに向き合う様子を表している。そこは対話の、出会いの場所、コーヒーを通じてコミュニケーションを結ぶ空間になることをコンセプトに演出されている。

▲ミッド・センチュリーを彷彿させる椅子やソファーが配置され、ゆったりと過ごせる

▲コーヒーはアイランドカウンターでハンドドリップして紙コップで提供。飲み切れなくても持ち帰れるようにとの配慮だ

イメージは50年代のアメリカ。室内にはモダンジャズが流れ、壁には当時のアルバムやミュージシャンのイラストが飾られる。その中に身を置くと、都会の喧騒の中でも心にホッとした一瞬が流れる。これこそがコーヒーと空間の調和が織り成す憩いの感情。忙しい毎日を過ごす現代人には、そんな時間が必要だ。

▲軽食から本格的な食事まで、時間帯や曜日によって提供されるものが変わるのも楽しみ

上島珈琲店No.11
住所:東京都港区新橋6-1-11 Daiwa御成門ビル
営業時間:7:00〜20:00(月〜金)、8:00〜18:00(土日祝)
定休日:不定休

 

■歴史が溶け込んだ時間を過ごす

古都、鎌倉。その歴史を象徴する鶴岡八幡宮に参ずる若宮大路。そこに建つ街並みと調和する建物の一角。実はこの場所は源頼朝の義弟、北条時房の屋敷跡。敷地内には、江戸後期から近代にかけて使用されていた井戸や鳥居、そして稲荷を再現し、この地の歴史的背景を物語る時の流れを再現している。

▲木肌が生きる部材は、温かみも感じる。そこで、香り高いコーヒーを飲むひと時を楽しめる

室内は木目を生かした和の造りにゆったりと82席を備えている。そこは和と洋そして時の流れが融合した空間だ。鎌倉散策の合間に、古都の歴史が溶け込んだ、シアトル生まれのスペシャリティーコーヒーを落ち着いて味わうことができるのだ。

▲店内には歴史発掘調査の際に出土した遺物の展示がなされ、外には稲荷舎や鳥居、井戸を再現し、参詣できるようになっている

タリーズコーヒー鎌倉鶴岡八幡宮前店
住所:神奈川県鎌倉市雪ノ下1-8
営業時間: 9:00〜20:00
定休日:無休

 


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(取材・文/松尾直俊)

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