標高別!ご来光ねらいの富士登山“必携装備”【特集「富士山とフェスと旅の便利道具」】

■ウエアは携行するのではなく、始めから着て登り、脱いだり重ねたりできるように

「快適に登るために必ず押さえておきたいのが “レイヤリング” によるウエア選び。富士登山の場合、汗を吸って乾きやすい肌着の “ベースレイヤー” 、その上に着る保温のための “ミドルレイヤー” 、そして、一番外側に着て、風や雨を防ぐ “アウターレイヤー” による重ね着が、ウエアの基本となります」

このように語るのは、登山ギアを扱うプロショップ・銀座 好日山荘の石坂修さん。

「富士山は、5合目でも標高が約2400m。中級山岳に匹敵する高さですから、夏の登山シーズンでも気温は10~15℃と涼しいんです。そのため、まずはベースレイヤーを身につけ、その上にミドルレイヤーのフリースやダウンを重ね着します。また、天気が良くても山の上は風が強いですから、上からアウターレイヤーとなる雨具をウインドブレーカー代わりに着て、10~20分登っていきます」

登山は、思いのほか運動量が大きいスポーツ。登り始めてしばらくすると、必然的に体温が上がっていく。

▲銀座 好日山荘 ストアマネージャー石坂修さん

「体が温まってきたら、ミドルレイヤーを “いつまでも着続けない” のが原則。ダウンやフリースが汗で濡れてしまうと、いざ寒くなってきた時に温かく感じなくなるからです。なので、汗ばむようになってきたら、我慢せずにダウンやフリースを脱ぎ、体温を調整しましょう。時々「スキーウエアは温かいし防水性もあるので、1枚で済みますよね?」というご質問を受けるのですが、体温調整が難しいので登山にはオススメしません。

暑くなればミドルレイヤーを脱ぐ。寒ければ逆に着る。さらに風がなければ、雨具も脱いでシャツだけで歩く、といった具合に、状況に応じて体温をコントロールしましょう」

つまり、5合目での登り始めに身に着けているウエアというのは、8合目や山頂の状況から逆算して選んだラインナップ。しかも、単に重ね着するだけでなく、状況に合わせ、それらを脱ぎ着することが肝心なのだ。

「登山の場合、装備すべてを自ら担いで登るわけで、体への負担などを考えると、持参できる装備には限界があります。そのためウエアは、携行するのではなく、始めから着て登り、脱いだり重ねたりするわけです」

とはいえ山頂に着くと、真冬に匹敵する寒さの中、朝日が昇るまで、じっと待つことになる。

「ご来光を拝む場合、深夜の山頂は、気温が0℃くらいまで下がります。ですからプラスαの装備として、グローブや耳の隠れる帽子、カイロなどをバックパック内に携行しておき、防寒対策を万全にしたいですね」

銀座 好日山荘

好日山荘は、全国に55店舗以上を展開する登山やアウトドア用品の専門ショップ。銀座店のストアマネジャー・石坂さんは、自ら登山を楽しみ、富士登山の経験も豊富。商品選びに関する的確なアドバイスに定評がある。

住所:東京都中央区銀座6-6-1 銀座風月堂ビルB1・B2
営業時間:月曜日〜金曜日(12:00~22:00)土日祝(11:00〜21:00)

 

■山頂でご来光を拝むための登山スケジュール例

富士山の山頂でご来光を拝む基本的な行程。8合目付近の山小屋で仮眠し、2日目の未明に再び、山頂へ向けて登山を開始する “半泊2日” のスケジュールで、休日は混み合うことも。山小屋でしっかり体を休めることと、山頂での万全な寒さ対策が重要だ。

【初日】

11:00頃:5合目より登頂開始

15:00過ぎ:8合目に到着。山小屋で休息・仮眠

【2日目】

0:00頃:8合目の山小屋を出発

3:00過ぎ:山頂に到着、ご来光を拝む

 

■標高が高くなるにつれて夏から冬へ。万全な装備で気温の変化に対応したい

【5合目付近のスタイル】

汗ばんだらミドルレイヤーを早めに脱ぎ体温をコントロール

好天時は、登り始めてしばらく経つと、ベースレイヤーとシャツの組み合わせでも十分。ベースレイヤーは、吸った汗が風に冷やされて体温を奪われないよう、吸汗速乾性の高いものを選ぶ。また手袋や帽子、アームカバーなどで、紫外線対策も忘れずに。

【8合目付近のスタイル】

雨・風・寒さ対策の一石三鳥。レインウエアをフル活用する

天気のいい日でも、8合目付近になると風が強くなり肌寒く感じる。そのため、雨はもちろん、防風、防寒対策にも有効なレインウエアをはおる。また、2日目の夜間登山の際は、気温が氷点下まで下がることも。寒い場合は、ダウンやフリースを着込む。

【山頂付近のスタイル】

深夜は真冬に匹敵する寒さ。小物類で防寒対策を万全に

早朝3時くらいに山頂へ到着。朝日が昇るのをじっと待つ。その時間帯の気温は0℃くらいまで冷え込むので、ご来光を待つ間、寒ければ持参したウエア類をすべて着込むように。また、ニット帽や手袋、ネックゲイター、カイロなどの防寒小物が役立つ。

 

>> 特集「富士山とフェスと旅の便利道具」

本記事の内容はGoodsPress7月号 34-35ページに掲載されています

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(取材・文・写真/アップ・ヴィレッジ イラスト/川崎由紀)

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