ブームの先陣を切ったRG250Γ!レーサーレプリカの系譜③<スズキ編>

■「GSX-R」の名は伊達じゃない!スズキの4ストレプリカ

▲1987年式「GSX-R250」(GJ72A)

スズキの4ストレプリカといえば「GSX-R」シリーズ。その血統は250ccクラスにも受け継がれていましたが、初代モデルの「GSX-R250」は比較的おとなしめのモデルでした。丸目2灯のヘッドライトはレーサーっぽさを感じますが、ハンドル位置は比較的高く、シートもタンデムを考慮した形状で乗りやすそう。ただし、エンジンは超ショートストロークな設計で45psを1万4500rpmで発揮するという高性能なものでした。当時のレプリカブームの中では地味な存在でしたが、今こんなモデルがあったら人気が出そうですね。

▲1989年式「GSX-R250R」(GJ73A)

初代モデルがおとなし過ぎたためか、1989年のモデルチェンジで一気に過激さが増します。車名も「GSX-R250R」と「R」が追加されました。自主規制上限値の最高出力こそそのままですが、吸気がストレートポート化され4連キャブに。フレームもアルミツインチューブとなり、乗車姿勢も一気に前傾となります。さらに、クロスミッションやシングルシートなどを装備したSPモデルも用意され、完全なるレーサーレプリカに生まれ変わりますが、今度は過激すぎたのか、一度もモデルチェンジをすることなく、姿を消してしまいました。

▲1989年式「GSX250S COBRA」(GJ73A)

ちなみに、このモデルにはカウルを取り去ったネイキッドモデルも存在しました。「GSX250S COBRA」という車名で登場し、そこそこの人気モデルでした。また、このエンジンはその後も「GSX250SSカタナ」や「Bandit250」というモデルにも搭載され、スズキの250ccクラスを支えるパワーユニットとなりました。

▲1984年式「GSX-R」(GK71A)

250ccクラスとは対照的に、登場時より本気度が高めだったのが400ccクラス。初期型の「RG250Γ」が発売された翌年に登場したのが「GSX-R」です。そう、現在でも使われているスズキのスポーツモデルの代名詞的な名称はここで登場しました。排気量を表す「400」という数字はありません。それは排気量を超えた速さを持つことをアピールするためでした。

フレームは軽量なアルミ製のダブルクレードルで、車重はクラス最軽量の152kg。水冷の並列4気筒エンジンは59psを発揮していました。400ccクラスの最高出力に59psという自主規制値が設けられたのも、このマシンがきっかけといわれています。なお、現在にいたっても152kgで59psというカタログスペックを超える400ccマシンは登場していないことからも、このマシンのスゴさが伝わります。

▲1986年式「GSX-R」(GK71F)

クラス最高のスペックを誇った「GSX-R」でしたが、わずか2年でフルモデルチェンジ。エンジンからフレームまで一新されます。エンジンは当時のスズキが推していた水油空冷システム「STACS」を搭載したものに。フレームもアルミのツインチューブとなりました。しかし、角目1灯のヘッドライトは不人気で、翌1987年には丸目2灯に改められます。

▲1988年式「GSX-R400」(GK73A)

外観のレーサーっぽさが一気に増したのが写真の1988年式から。エンジンは再び水冷となり、ライディングポジションも前傾度が高くなっています。この時代に盛り上がっていたSPレース向けの仕様も用意され、そちらはシングルシートやクロスミッション、専用サスペンションを装備していました。

▲1990年式「GSX-R400R」(GK76A)

そして、過激さが極限に達したのが1990年式。フレーム形状は再びエンジンを抱き込むようなダブルクレードル式となり、エンジンも新作で水冷なのに冷却フィンが付いているという独特の形状に。GSX-Rというとこの、エンジンの後ろで直角に曲がったような形状のフレームを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? 倒立フォークに水冷式のオイルクーラーまで備え、公道よりもサーキットを見据えているようなマシンでした。乗っていた人に言わせると、ヤバいくらいハンドル位置も低かったとか。そんな過激なマシンでしたが、1993年に自主規制値が引き下げられ53psに…。この頃からレプリカブーム自体も失速し、その後はモデルチェンジも行われることはありませんでした。

▲1985年式「GSX-R750」

「GSX-R400R」が水冷なのに冷却フィンのあるエンジンだったり、ダブルクレードル式フレームに戻ったりしたのは実は理由があります。それは「GSX-R750」があったから。1985年に発売され、179kgという今の感覚でも軽量な車体で世界に衝撃を与えたモデルです。この軽さを実現できたのは、軽量なアルミのダブルクレードルフレームを採用していたことと、エンジンが潤滑用のオイルを冷却にも使う油冷式だったこと。しかも、このマシンがデビューした年にル・マン24時間耐久レースで優勝したことで、GSX-Rシリーズのイメージは完全に“ダブルクレードルフレーム&油冷エンジン”になりました。400ccでも、そのイメージを踏襲する必要があったくらい、インパクトが大きかったわけです。

▲2011年式「GSX-R750」

ちなみに「GSX-R750」というモデルは現在もラインナップされています(輸出モデルのみ)。もちろん、現行モデルは水冷エンジンでアルミツインチューブのフレーム。1985年の初期型から、途絶えることなく歴史を刻んできたと考えると、現行モデルにも違った趣が感じられますね。

 


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文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

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