金属加工の技術を駆使した「muraco」流モノづくりとその世界観【ガレージブランド名品図鑑】

【ガレージブランド名品図鑑】

長年培った金属加工の技術を駆使し、今までのアウトドアブランドにはなかったギアの開発と、その魅力を引き出すmuraco。様々なブランドともコラボし、昨年には立川に旗艦店オープンも果たした。躍進を続けるmuracoの強みと展望を取材した!

maraco
金属加工の工場から2016年に誕生したアウトドアブランド。既成の概念にとらわれない新感覚のスタイルとギアを提案し続けている。

 

 

株式会社シンワ muraco 設計室
草野孝一さん

 

 

 

■今ある機械と設備でどう合理的に作っていくか

1974年から50年近く金属加工を営んでいるという株式会社シンワ。その新規事業として7年前にスタートしたのがmuracoだ。ガレージブランドと称すには少々憚られるほど洗練されたデザインと、確立されたコンセプト、統一感のあるカラーはまさに唯一無二。実際、発足当時から掲げ、目指しているのは「総合アウトドアブランド」だと設計室の草野さんは言う。

▲muracoのテントに使われる、ポールのジョイントパーツ。高精度な加工技術の賜物だ

「もともとは代表の村上がキャンプに行ったとき、使っていたチェアのフレームの部品が切削加工だったのを見て、ウチの機械でも作れるんじゃないかと気付いたのが始まりです。今まで続けていた金属加工業とは別軸の事業だからといって妥協はしない。いちブランドとして責任のあるモノづくりを続けながらテントのような大型ギアからコップひとつに至るまで、muracoの製品だけでキャンプに行けるようになる。そこを目標に自分たちの価値観を大事にしながら製品づくりをしています」

そんなmuracoのモノづくりを支えるのが、精密さが求められる金属加工の最前線で培った技術とノウハウだ。自社工場とそこで積み重ねられた経験値。そのふたつの強みをもっているからこそ、muracoのギアにはmuracoだから作り出せた独自性が生まれる。例えば、代表作である焚き火台やペグハンマーは、その形状もさることながら開発の経緯も一風変わっている。

▲加工を待つ円柱状の金属たち。ドリルで削り、工業機械の部品などに生まれ変わる

「自社工場にある機械の多くが、円柱状の金属の切削加工を目的としたもの。だから他社のアウトドアブランドみたいな板金の焚き火台は(自社の機械だけでは)作れないんですよ。でもだからこそ、円柱状の焚き火台やペグハンマーはなるべくしてあの形状になったところがあります。こんなデザインにしたらカッコいいよね、美しいよね、から発想がスタートするんじゃなく、今ある機械と設備でどう合理的に作っていくかを考える。そこがmuracoの製品づくりの特徴かもしれませんね」

彼らのギアたちに、ほかのブランドにはないどこかアーバンでインダストリアルな雰囲気が伺えるのは、自分たちの得意分野をフル活用している背景からかもしれない。

「muracoってアウトドアっぽくないよね、と言われることもあって(笑)。でもそんなブランドだからこそ慣習にとらわれない、インテリアとか雑貨みたいな生活に溶け込めるような使いやすいギアをお届けできたらと思っています」

▲本社兼工場の隣には直営店も併設。なかにはキズやヘコみなど、ワケありアイテムもあり、アウトレット価格で購入できる。思わぬ掘り出し物があるかも?

▲2022年にはブランド発信の拠点として東京都立川市に初の旗艦店「muraco TACHIKAWA」をオープン

 

 

【次ページ】muracoらしいアイテムはどうやって誕生するの?

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