【素朴なギモン】なぜ「ウタマロ石けん」はまだ今も売れ続けているのか?

ウタマロ石けんの歴史をたどると、そのきっかけは第二次世界大戦以前まで遡ります。

「第二次世界大戦以前の1920年、物資が安定せず、粗悪な商品が出回っていた中で『質のいい石けんを使ってほしい』と、初代社長である西本辰蔵氏が西本石鹸製造所(現在の東邦)を創業しました。同社の品質へのこだわりに、東京の紙問屋・宮井産商が注目し『洗濯石けんを作ってほしい』と声かけたのがウタマロ石けんの始まりです」(商品企画部・中山さん)

当時、日用品だった京花紙(今のトイレットペーパーや化粧紙のようなもの)の販売をしていた宮井産商は、お客様から生活必需品である洗濯石けんも取り扱ってほしいと要望を受けます。そこで全国の石けんメーカーを調べ上げ、東邦の石けんが最も品質が良いと判断して声をかけたそう。

そして1957(昭和32)年、ウタマロ石けんが誕生します。紙問屋という、石けんメーカーではない会社が誕生のきっかけだったんですね!

ちなみにこのユニークな“ウタマロ”という名は、宮井産商の社長が浮世絵を好きだったことから“日本一の洗濯石けんにしよう”と、日本を代表する浮世絵師の喜多川歌麿から名付けられたとのこと。

「誕生した当時はまだ、たらいと洗濯板を使って手洗いをしていた時代でもありました。発売後は関東以北でその名を広め、年間出荷数は約200万個に達し人気を得ていました」(商品企画部・中山さん)

しかしそんなウタマロ石けんにピンチが訪れます。

「1960年代に入り電気洗濯機が各家庭へ普及し始め、粉洗剤や液体洗剤が主流になり、売り上げも下がっていきました。年間出荷数は約100万個まで半減し、ウタマロ石けんは廃番寸前となったのです」(商品企画部・中山さん)

昭咁E0年代工場

昭和20年代の工場の様子

そこでウタマロ石けんの歴史は途切れてしまうのか…!? しかしそのピンチを救ったのは、ほかでもないファンの声でした。

「多くのお客様から『ウタマロ石けんをなくさないでほしい』という存続を求める声をたくさんいただきました。お話を聞くと、洗濯機だけでは落とし切れないガンコな汚れに、部分洗いとしてウタマロ石けんを活用されていたんです」(商品企画部・中山さん)

この出来事から東邦が商標を譲り受け、販売から製造まで手がけることに。西日本でも販売が開始され、ウタマロ石けんは全国規模の商品となり、今に至るのです。

さて、そのファンたちは、どんな汚れとの戦いにウタマロ石けんを使っているのでしょうか?

「主に小さなお子様の靴下の泥汚れや食べこぼし汚れ、ワイシャツのエリ・ソデ汚れ、口紅やファンデーションの化粧品汚れなど、通常の洗濯では落ちにくいガンコな汚れにお使いのようです。また、ある少年野球チームでは、いつも白くきれいなユニフォームを着ていた子どもがウタマロ石けんを使っていたことをきっかけに、チーム全員でご愛用いただくようになったというエピソードもあります」(商品企画部・中山さん)

その後、インターネットの普及によりクチコミは拡大。今では主婦だけでなく、スタイリストや日本舞踊の先生、お寺の住職さんが白い足袋を洗う際に使っているなど、ママからプロにまで支持を広げているウタマロ石けん。その後もクチコミで広がり続け、2015年度の年間出荷数はなんと約1000万個にものぼります。

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上から古い順に、1番下が最新版

現在はスーパーやドラッグストア、ホームセンターなどで販売されていますが、スポーツショップのレジ横に置いてあるのもよく見かけます。

「野球のユニフォームの泥汚れがまっ白になる、とご好評をいただく中で、野球アイテムと一緒に売っていただいています」(商品企画部・中山さん)

■その人気の理由は、飽くなきモノづくりへの探究心!

多くの支持を得ているのは、やはりよく汚れが落ちて白くなるから! その秘密は?

「油から作られる石けんは、原料となる脂肪酸の種類や配合で汚れ落ちの力は変わります。開発時、たくさんの種類の脂肪酸(石けんの原料となる油のこと)を試験し、固さと汚れ落としの性能を見るため、次から次へと石けんを試作しました。脂肪酸と一言で言っても、その組み合わせは無限大です。そんな中、何百回と試験を繰り返し、水に溶けやすく汚れになじみやすい、適度に柔らかく生地も傷めにくい、洗濯石けんとして適した組み合わせを見つけ出しました。

また、石けんの製法としては主に『中和法』と『けん化法』の2つの製法があります。ウタマロ石けんは中和法で作っているのですが、中和法の方が不純物の少ない純度の高い石けんを作ることができるからです。汚れ落ちを良くするために、極力純度の高い石けんを作るように心がけています。

そして、石けんを固める方法としては主に『機械練り』と『枠練り』の2つの方法があります。ウタマロ石けんは機械練りで作っているのですが、なぜかというと機械練りの方が石けんの結晶が細かく砕かれ、汚れになじみやすい石けんができるからです」(商品企画部・中山さん)

原料と製法にも徹底的にこだわるウタマロ石けん。実は、現在も進化し続けているのだとか。

「生活の中のガンコな汚れは様々で、お客様から『この汚れが落ちない』との声があれば、同じ汚れを作り実験と研究を重ね、時代の流れに合わせて改良し続けています」(商品企画部・中山さん)

そして誕生から55年の時を経て、2012年には新たなラインナップが登場!

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左から、色柄物やおしゃれ着に使える部分洗い用液体洗剤の「ウタマロリキッド」、1本で家中のお掃除に使える中性の「ウタマロクリーナー」、しつこい油汚れをスッキリ落とす食器洗い洗剤の「ウタマロキッチン」。

「洗浄力がありながら手肌にもやさしく、使いやすく、家事が楽しくなる洗剤を追求しました!」(商品企画部・中山さん)

根強い人気にはワケがある! 汚れ落ちに徹底的にこだわり進化し続ける「ウタマロ」シリーズ。素朴なギモンから始まりましたが、モノづくりの真髄を見せつけられた思いです!

東邦「ウタマロ石けん」>> http://www.e-utamaro.com/

 


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(文/&GP編集部)

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