「元々のODカラーの上にライトブルーを素人塗り」という設定に【達人のプラモ術<ジープ ウィリスMB>】

■1950年代という設定で

ちょっと話は横に逸れますが、戦後直後の日本はほんとにゼロからの再出発といった感じで、ペンキひとつ取っても品質の悪いモノしか残っていなかったんですね。

1951年になって、やっとメラミン樹脂・ビニル樹脂・エポキシ樹脂・ポリエステル樹脂などが開発されるようになり、本格的な合成樹脂塗が登場。1955年以降になると高度成長の波に乗り、塗料(ペンキ)の質も良くなっていくのですが、50年代のクルマをみると、赤や青といった鮮やかな色が少なく、グレーやクリームといった中間色系のカラーばかりでした。

今回も「そんな時代だよなぁ」と考えつつ、ウィリスMBを手に入れたオーナーが塗りかえのために入手したペンキが、これがまた微妙なブルーグレーで、なおかつODの上に直接塗っちゃった(素人あるある)もんだから、ますます色がくすんじゃった…。でもまぁいいや的な、50年代ならこんなクルマも湘南あたりで走っていたんじゃない?といった設定で塗装してみました。

 

■何というかビミョーなライトブルー…

オーナー的には、ミリタリーなODの衣を脱ぎ捨てて、爽やかなライトブルーのジープになるはず…だったのですが、いかんせん当時のペンキです。それも下塗りもなしでODの上からいきなり塗っちゃったワケです…。というワケで、何だか濁ったライトブルー仕様(あちこち下地のODも見えちゃってますけど)のジープに変身致しました。

今回、塗装に選んだ色は「Mr.カラー118番RLM76」。なんとドイツ空軍機下面色であります。微妙に灰色がかったくすんだ水色、当時こんな色があったなぁということで選んだ次第です。

調べてみたら、RAF(イギリス空軍)が使っていたフォローミージープ(※1)で似たようなブルーに塗られたウィリスMBがありました。

▲OD塗装を乾燥させたのちライトブルー(Mr.カラー118番RLM76)を塗り重ねていく。エアブラシでの塗装は意識的にムラになるように

▲またボディ上面は厚塗りしたペンキに見えるように濃い目に調色した塗料を4回塗り重ねている(左上フェンダーに注目)

▲フレームとエンジンについては、オーナーいわく「外から見えないから塗らない」ということから前後バンパーの他はODのまま

▲エンジンルームとエンジンもODの塗装を残している

(※1)フォローミージープ

航空機を所定の駐車場や滑走路に案内誘導をする車両。小型で運動性能に優れたジープが使われていたのでこう呼ばれる。視認しやすいように車体を派手なチェック柄に塗装、無線機搭載してジープの後部に「FOLLW ME」と描かれたプレートを貼って、航空機を誘導していた。

▲航空機の誘導に使われた派手なペイントが施されていたフォローミージープ

フォローミージープはプラモデルにもなっています

イタレリ
「1/35 ジープ フォローミー モデルセット」(3300円)

▲RAF(英国空軍)のブルーに塗られたフォローミージープ。渋い

 

■あえてムラを作り、いかにもペンキで塗りました風に

塗装はMr.カラーのRLM76をエアブラシで塗装。これはキレイに塗り上げちゃいけません。クルマの塗装なんかしたことのないオーナーがペンキで塗りました的なシロウト塗装の味を出さなくちゃいけないんですね。

そこで、ボディ上面は使用したRLM76を意識的に厚めに塗り重ねて、ペンキ塗りました風に。ホイールアーチの内側といった部分は、下地のODが透けている、あえて塗装がムラに見えるように仕上げています。

ピカピカの新車にも、やれた感じのボロクルマも表現できる。これだからプラモの塗装は面白いんです。

▲Mr.カラーのRLM76ドイツ空軍下面色を使い、キレイなライトブルーに塗ったはずが、なんかくすんだ水色になってしまったボディを再現。画像はパーツを仮組みした状態

 

■タイヤは黒くない

前回「ゴム製のタイヤは塗装できない」「モールドもダルなので、プラパーツのタイヤを使用する」と紹介しました。

タイヤは、ジープMBなどのソフトスキン(※2)では見せ場のひとつとなるで、しっかり仕上げたい部分です。塗装もしかりで、インストではツヤ消し黒で塗れと指定されています。タイヤワックスで磨き上げていれば確かに黒です。が、実のところタイヤってそんなに黒くないんですね。わずかに青味がかった濃いグレーといった感じです。使いこんだタイヤともなれば、くすんだグレーになります。

そこで今回の作例では、「Mr.カラー137番 タイヤブラック」(176円)で塗装することでゴムの質感を再現しています。

ゴムの黒、ペンキの黒、クルマのダッシュボード等で使われている樹脂素材の黒、最近ではカーボンの黒と言った具合に同じ黒でも質感が異なりますよね。それを塗り分けることでリアルな質感が再現できるワケです。

▲組み上げたタイヤを、Mr.カラー187番タイヤブラックで、エアブラシにて塗装

(※2)ソフトスキン

AFVおよび装甲戦闘車両とは異なり、武装をしていても装甲がなされていない軍用車両(トラックやジープ、オートバイ、トレーラー等)のこと。

 

■ホイール塗装の優れモノ

プラ製のタイヤはホイールを挟み込んで接着するパーツ分割なので、タイヤ部分とホイールはマスキングをして塗り分ける必要があります。

円形のマスキングは手間がかかります。特にODで塗装後にライトブルーを塗り重ねる必要があるため、2回マスキング工程を繰り返す必要があります(面倒くさい…)。

なので今回は、ハセガワ・トライツールの「カッティングテンプレート C」を使って、タイヤとホイールを塗り分けました。

まず組み上げたタイヤをタイヤブラックで塗装。そのあとテンプレートを重ねてホイール部分をOD、そしてライトブルーの順でエアブラシを使って塗装しています。

▲タイヤ部分をタイヤブラックで塗装した後、「カッティングテンプレートC」をマスキングに利用してホイールにODで塗装する。ちなみに筆塗りではテンプレートは使用できない

▲スペアを含めて5個のタイヤのホイール両面(10箇所)のホイールをODに、ゴム部分をMr.カラーのタイヤブラックに、シャープに塗り分けることができた

▲ODに塗装したホイールを、「カッティングテンプレートC」を使い同じ要領でライトブルーに塗装

▲ハセガワ・トライツール「カッティング テンプレート C【円形状定規】」(1650円) 0.5ミリ刻みで円をカットするためのテンプレート。塗装のマスキングツールとしても使用でき、円の塗り分けを簡単かつシャープに仕上げられる(基本エアブラシ塗装のみ)。ステンレス製なので汚れたらツールクルーナー等で塗料を落とすことが可能。

ということで今回はここまで。

次回はライトブルーに塗り上げたウィリスMBをウエザリング。錆やオイルの汚れを再現してきます。お楽しみに!

▲今回のキットに付属のサーフボードを乗せてみた。もちろん塗装して仕上げる

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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