【もうすぐ出ますよ!注目の日本車】コレは売れそう!流麗で上質なトヨタ「ハリアー」

■初代は“ライオン顔の紳士”が登場するCMが話題に

新型の解説に入る前に、まずはハリアーの歴史について振り返ってみたいと思います。

1997年に日本で誕生した初代ハリアーは、翌1998年、レクサスブランドの「RX」として北米市場などで販売を開始。強豪ひしめくプレミアムカーの世界において、多くの人々から高い支持を集めました。

当時、同クラスのSUVといえば、トヨタ「ハイラックスサーフ」や「ランドクルーザー」のように、オフロード性能を重視し、頑丈なフレーム構造を採用したクルマが主流。そのため、使い勝手やスタイルは魅力的でも、乗り心地を始めとする走行性能は、決して洗練されているとはいえませんでした。

それに対してハリアーは、ミドルクラスFFセダンである「カムリ」とプラットフォームを共有。エンジンやサスペンションも基本的にカムリのそれをベースとすることで、舗装路においてもセダンに匹敵する快適性を実現しました。

初代

また当時のSUVは、四角く、背の高いモデルが多かったのに対し、ハリアーは低く流れるようなシルエットを導入。都市での日常使いにフォーカスしたプレミアム・クロスオーバーSUVという新ジャンルを開拓したのです。

こうして、それまでにないSUV像を打ち出した初代は、もちろん日本市場でも大ヒット。“ライオン顔の紳士”が登場するCMや、“ワイルド・バット・フォーマル”というキャッチコピーを覚えている人も多いことでしょう。

続く2代目ハリアーは、2003年に登場。メインマーケットとなった北米のニーズを踏まえ、ボディサイズがひと回り拡大されたものの、初代譲りの流麗なエクステリアと上質なインテリアで、日本でも好評を博しました。

2代目

2005年には、3.3リッターのV6エンジンを軸とするハイブリット仕様を追加。前輪をエンジン+モーター、後輪をモーターのみで駆動させるトヨタ独自の4WDシステム“E-Four”との組み合わせも話題を集めました。

現行モデルである3代目は、振り返れば、紆余曲折の果てに誕生したモデルといえるでしょう。2005年、日本市場でもレクサスブランドの展開がスタートしたのに伴い、ハリアーのレクサス版だったRXは、2009年に3代目へとバトンタッチ。ところが、グレードを絞って継続販売されたハリアーも、コンスタントなセールスを記録します。この根強い人気により、ハリアーは“ディスコン”の憂き目を逃れ、次世代モデルの開発がスタートしたのです。

そして、2代目のデビューから10年が経た2013年、ようやく3代目となる現行ハリアーが登場します。RXと決別し、日本市場向けとして独自の内外装デザインが与えられた3代目は、北米市場を重視した2代目と比べてボディサイズが小さくなり、日本の道路環境にマッチしたクルマとなりました。

3代目

そうした配慮が実を結び、3代目は登場以来、累計で約30万台のセールスを記録。モデル末期である昨2019年も、販売台数で国産SUVの第5位につけるなど、人気に陰りは見られません。

■RAV4とは対照的に流麗なクーペフォルムを採用

そんなハリアーが2020年6月、ついに4代目へと進化します。新型でまず注目したいのは、トヨタが取り組むクルマづくりの構造改革“TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)”に基づくプラットフォームの刷新です。

新型ハリアーに採用されるのは、エンジンを横置きにレイアウトするトヨタ製プラットフォームの中で最も大きい、“GA-K”と呼ばれるもの。これは、走行性能などが高く評価されている現行「RAV4」と同じもので、新型ハリアーでも、ボディの高剛性化と低重心化、それに伴う軽快なフットワークの実現などが期待できます。

そんなGA-Kプラットフォームに搭載されるパワーユニットは、RAV4と同様、2.5リッターのハイブリッドと、2リッターの自然吸気エンジンの2種類。後者には、CVT特有のルーズな印象をほぼ解消し、ダイレクトに加速する“ダイレクトシフトCVT”を組み合わせています。また駆動方式は、ハイブリッド仕様がFFとE-Four、自然吸気ガソリンエンジン車にはFFと4WDが用意されます。

ハイブリッド E-Four(写真はRAV4のもの)

このように、プラットフォームやエンジンといった“大物”を共有する新型ハリアーとRAV4ですが、そのボディサイズからも、それぞれ異なる方向を目指していることがうかがえます。

新型ハリアーのボディサイズは、全長4740mm×全幅1855mm×全高1660mmで、ホイールベースは2690mm。対するRAV4のそれは、全長4600mm×全幅1855mm×全高1685mmで、ホイールベースは2690mmとなっています。全幅とホイールベースこそ共通ですが、新型ハリアーはRAV4より全長が140mm長く、全高は25mm低くなっています。

新型ハリアー

RAV4

この差は、新型ハリアーが「他のSUVと一線を画す、シンプルながらもエレガントさとたくましさが融合した流麗なクーペフォルム」を目指した結果といえます。その証拠に、新型ハリアーは流れるような美しいプロポーションが目を惹きます。

ディテールを見ていくと、新型ハリアーのフロントマスクはアッパーグリルからヘッドライトへと流れるラインが精悍で、シャープな印象に仕上がっています。薄くシャープな“シグネチャーランプ”が鋭い“目チカラ”を表現し、遠くからでもそれと分かる個性と先進性を強調します。

またボディサイドは、シンプルな構成でありながら、ボディ断面がダイナミックに変化。これにより、豊かな表情と常に動いているかのような強い動感を生み出しています。

リアスタイルは、細く、鋭く、横一文字に光るテールランプとストップランプが、新型ハリアーの存在感を際立たせています。

また、クーペのように絞り込まれたキャビンと、スポーツカーのように左右に張り出したホイールハウスとが相まって、大らか、かつ、たくましさを感じさせる後ろ姿となっています。

■上質な仕立てと快適さが際立つキャビン

新型ハリアーのインテリアは、馬の鞍(くら)をイメージしたデザインとなっています。幅が広いセンターコンソールと、それを挟み込むように配置されたインパネが、個性的な空間を演出。また、インパネから左右のドアトリムにかけての造形によって包み込まれるような安心感をプラスするなど、居心地のいいキャビンに仕立てられています。

新型ハリアーのインテリアはマテリアルにも凝っていて、厚い革を曲げた時に生じる自然なシルエットを再現し、触り心地にもこだわったレザー調素材や、“曲木(まげき)”の質感に着想を得たウッド調のパネルを採用。さらに、パイピングによるアクセントを随所に配置することで、上質感をプラスしています。

このほか、調光ガラスを用いた電動シェード付きのパノラマルーフを、トヨタ車として初採用。これにより、障子越しに差し込む陽光のように、柔らかな光が室内へと降り注ぎます。

内装色は、コントラストを抑えたブラウン、グレー、ブラックの3色が用意され、室内をシックな大人の空間へと演出しています。

さらに新型ハリアーは、快適装備も充実。コックピット中央上段の“特等席”には、ナビゲーション機能を搭載した12.3インチのタッチ式ワイド液晶パネルをレイアウト。これは、スマートフォン連携機能にも対応していて、多彩なオーディオソースを楽しめるほか、スマホアプリの操作なども可能です。また液晶パネルの下には、エアコンとオーディオのタッチ操作を実現した静電式ヒーターコントロールパネルを採用。操作性に優れるのはもちろん、インテリアに先進的な雰囲気をプラスしています。

もちろん最新モデルだけに、新型ハリアーは安心・安全に関する装備も充実しています。昼夜の歩行者や、昼間の自転車を検知できるプリクラッシュセーフティ機能などを網羅した“トヨタセーフティセンス”や、低速走行時における衝突を緩和し、被害軽減に寄与する“パーキングサポートブレーキ”も装備。そのほか、走行中の前後方向の映像を録画できる、ドラレコのように扱える“デジタルインナーミラー”など、トヨタ車初のアイデア装備も見逃せません。

先行したRAV4の内外装デザインはSUVならではの力強さやアクティブさが感じられ、装備やインテリアの仕立てもカジュアルな印象に満ちあふれるものでした。その点、新型ハリアーのデザインや装備類からは、実用性や数値第一ではなく、人の心を優雅に満たす“大人の余裕”みたいなものが感じられます。初代からヒットを連発するロングセラーであり、トヨタにとっても重要車種といえるハリアー。SUV人気の追い風を受け、4代目も再びヒット作となりそうです。


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文/上村浩紀

上村浩紀|『&GP』『GoodsPress』の元編集長。雑誌やWebメディアのプロデュース、各種コンテンツの編集・執筆を担当。注目するテーマは、クルマやデジタルギアといったモノから、スポーツや教育現場の話題まで多岐に渡る。コンテンツ制作会社「アップ・ヴィレッジ」代表。

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