【もうすぐ出ますよ!注目の日本車】スバル新型「WRX」はSUVルックで力強さをアピール

■新型WRX=ワイルドというイメージを訴求!?

WRXはスバルを代表するハイパフォーマンスカーだ。かつて同車は、コンパクトセダンの「インプレッサ」にハイパワーエンジンと速さのための4WD機構を組み合わせたエボリューションモデル的な位置づけで、車名も「インプレッサWRX」と名乗っていた。しかし2014年に登場し、2021年に生産を終了した第4世代より、インプレッサとは別のモデルとして独立。車名も単にWRXとなった。

そんなWRXが、フルモデルチェンジで次世代モデルへとバトンタッチされることとなったが、日本市場でのデビューに先立って世界初公開された北米仕様を見て驚いた。先代モデルのシャープなイメージを継承しつつ、より鋭さを増したヘッドライト、そして張り出し感を強めたフェンダーなどにより、躍動感が増していたのだ。

新型WRXのエクステリアにおける注目ポイントは以下のふたつ。

ひとつ目は、リアピラーがこれまでのスバルのセダンでは考えられなかったほど流麗になったこと。傾斜が強く、より寝かされたピラーによって、WRXのシルエットはコンベンショナルなセダンのそれから脱却し、よりクーペスタイルに近づいた。

もうひとつは、車体の下部や、フェンダーのタイヤ周囲の処理だ。“クラッディング”と呼ばれる無塗装の樹脂パーツをあしらっているのだが、これは一般的に、SUVらしさの演出するためのコーディネート。WRXはSUVではないものの、こうした処理にチャレンジしてきたのである。

ラリーへの参戦など、多少のオフロード感を備えてはいるものの、WRXはクロスオーバーSUVではない生粋のスポーツセダンだ。ではなぜ、スバルは新型WRXのスタイリングにSUVのようなアクセントを加えたのだろうか?

あくまで推測に過ぎないが、ひとつは力強さの演出だろう。WRXにとって重要なマーケットのひとつである北米市場では、クルマに力強さが求められる。かつてはマッスルカーのようなマッチョな演出がもてはやされたが、昨今のトレンドはSUVらしさにシフト。そこで新型WRXにも力強さの象徴として、ワイルドな雰囲気を盛り込んできたと思われる。

もうひとつは、従来の高性能セダン像からの脱却ではないだろうか。サーキットでの鋭い走りよりも、多少のラフロードまで含めた全天候型高性能車という新たなポジションを新型WRXは訴求したいのかもしれない。

かの地は、乗用車セールスのトップ3をピックアップトラックが占め、4位以下もランキング上位はSUVというお国柄。そこで人気を得ようと考えた時、自然とSUVの影響を受けたマーケティングとなるのは無理もない。

実際、現地法人のウェブサイトを見てみると、新型WRXの紹介に使われている写真は舗装路ではなく荒野で撮られたものが多く、大胆に土煙を上げながら走っているカットも少なくない。少なくとも北米市場では、新型WRX=ワイルドというイメージを訴求するのではないだろうか。

■現行レヴォーグと共通部分が多い新型WRX

そんな新型WRXは、今回のフルモデルチェンジで車体構造から刷新される。スバルによると、新型は「“SGP(スバルグローバルプラットフォーム)”と“フルインナーフレーム構造”によって、ボディの高剛性化を果たした」という。

SGPとフルインナーフレーム構造は、日本市場向けに開発されたステーションワゴンである、現行「レヴォーグ」にも導入されている技術。何を隠そう、新型WRXは実質的に現行レヴォーグのセダン版ともいえるモデル(従来モデルもそうだった)だけに、2台にはプラットフォームを始めとする各種メカニズムに共通部分が多いのだ。

そのため、2ピニオン方式の電動パワーステアリングや電動ブースターを組み合わせたブレーキなど、現行レヴォーグで初めて盛り込まれたスバルの新世代メカニズムも新型WRXに搭載されている。現行レヴォーグは走りの評価が極めて高いモデルだけに、新型WRXの戦闘力にも大いに期待が持てそうだ。

ちなみにインテリアも、縦型の大型タッチパネルが組み込まれたインパネなど現行レヴォーグと共通の要素が多数見られる。

また、前席にレカロ製シートが用意されるのは、先代WRXゆずりの部分といえるだろう。

■今回発表された新型はWRX S4の進化版

新型WRXのパワーユニットは、もちろんスバル伝統の水平対向エンジンだ。“FA24”型と呼ばれる2.4リッター4気筒ターボで、北米市場向けの「アウトバック」などに搭載されるユニットと基本設計は同じである。

“FA”型エンジンといえば、日本仕様では先代の「WRX S4」などに2リッターの“FA20”型が搭載されていたが、新型WRXのエンジンは、それとは排気量だけでなく設計も大きく異なる。また新型「BRZ」にも、新開発の2.4リッター“FA24”型エンジンが搭載されるが、新型WRXのエンジンはこれとも基本設計が異なっている。

ちなみに4WDシステムは、従来モデルと同様、前後の駆動トルクを電子制御でコントロールする“VTD-AWD”をCVT車に、ビスカスLSD付きセンターディファレンシャル方式AWDをMT車に採用する。

そんな北米向けの新型で気になったのがエンジンパワーだ。275馬力と高出力ではあるものの、WRXとして考えると正直ちょっと物足りない。

実は、今回発表された北米向けの新型WRXは、日本でいうWRX S4に相当するモデル。トランスミッションはCVTに加え、日本仕様の先代WRX S4には設定のなかった6速MTも用意される。とはいえ、北米を始めとする海外マーケットでは先代のWRX S4にもMT仕様が用意されていたため、今回公開された新型はその正常進化版と考えていいだろう。

つまり、今回公開された新型WRXは、確かにWRXではあるものの、最強モデル「WRX STI」の後継車ではないのである。では、よりハイパフォーマンスなWRX STIは果たして登場するのだろうか? 答えはもちろんイエスだ。WRX S4よりも遅れてのデビューとなりそうだが、先代WRX STIの308馬力を超えるパワーを身につけての市場投入に期待したい。

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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