「心の豊かさ」って、結局なんだろう。柳楽優弥が探検家となって問いかけるJTの新CMが、なぜ刺さるのか

テレビをつけっぱなしにしていたら、ふと手が止まった。冬の穏やかな海原を一隻の船が進んでいく。舵を握るのは、なにかを探し求めるような眼差しをした探検家。流れてくるナレーションがいい。

「誰もが、心豊かに生きたいと思う時代。私は、まだ見ぬ誰かの、まだ見ぬ心の豊かさを探すため、故郷を離れて、航海に出た」

JTが2026年4月2日より放映を開始した新CMシリーズ『キャプテン・モットの冒険 船出篇』だ。探検家を演じるのは、俳優・柳楽優弥さん。14歳でカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を史上最年少で受賞し、いまやNetflixドラマでも存在感を発揮する彼が、探検家として大海原に漕ぎ出す。

■最近、気になって仕方ないCMがある

広い海と青空、それだけのシンプルな画だが、なぜか見入ってしまう。

柳楽さん演じる探検家は、自分の「心の豊かさ」を探しているのではない。「まだ見ぬ誰かの、まだ見ぬ心の豊かさ」を探すために旅立つ。その設定が、この30秒CMを単なる企業広告以上のものにしている。

撮影は実際の船上で行われた。波と風の影響で状況が刻々と変わるなか、柳楽さんは環境を楽しむように演じたという。海上での堂々とした佇まい、たどり着いた島の森や洞窟を真剣な眼差しで突き進むシーン…「まるで本物の探検家のような存在感」と現場スタッフが語るほどの没入感だったそう。

楽曲は『A Piece Of Gold』。作曲・作詞ともにオリジナルで制作され、海への旅立ちと期待感を静かに後押ししているのが印象的だ。派手さを排した音楽と映像のトーンが、妙に落ち着いた気持ちにさせてくれる。

■「心の豊かさ」は、人それぞれでいい

このCMのコンセプトの核心は、「心の豊かさに正解はない」という主張だ。

JTはグループパーパスとして「心の豊かさを、もっと。」を掲げている。これまでも世の中に「心の豊かさとはなにか」を問いかけてきたが、今回の新シリーズでは特定のかたちを示さない。探検家がさまざまな人と出会い、それぞれの「心の豊かさ」を見つけていく—そういう旅の物語として描いている。

これが、刺さる理由だと思う。

「心の豊かさ」なんて言われても、というシニカルな反応もあるだろう。だが、40代の男性が「豊かさ」を感じる瞬間を正直に思い浮かべてみると、そこにあるのは意外と地味なものだったりしないか。

長年愛用してきた革財布の手触り。週末に手をかけて淹れる一杯のコーヒー。子どもと過ごす、なんでもない日曜日の昼下がり。出張先でたまたま入った小さな居酒屋で飲んだ、名前も知らない地酒。

誰かに自慢できるほどのものでもないし、SNSに投稿したくなるようなものでもない。でも、確かにそこには豊かさがある。CMが問いかけているのは、そういうパーソナルな「豊かさ」のことだ。

■柳楽さんが語る「心の豊かさ」が、どこか自分に重なる

出演にあたって柳楽さんが語ったインタビューが、またいい。

自分の「心の豊かさ」について聞かれた彼は、こう答えている。視野が広がる瞬間に出会うこと、オリジナルなものを見つけた瞬間の感覚、そして「聞いたことのないルーティンを持っている人に会って、刺激を受けたい」という好奇心。別に崇高なことではない。でも、その感覚は確かにわかる。

仕事の経験を積み、いろんなものを見て、それなりに「好き」と「嫌い」がはっきりしてきた年代の男として、「まだ知らない豊かさがある」という感覚は、むしろ前向きに響く。探検家がワクワクしながら船を出すように、まだ見ぬ何かに向かって動き出したくなる気持ち…柳楽さん演じるキャプテン・モットのそれが、スクリーン越しに伝わってくる。

■「モノ」にも宿る、心の豊かさ

「心の豊かさ」を構成するものは、体験だけではない。家族や友人との時間がある。積み重ねてきた経験がある。そして、愛着の湧くモノがある。

モノへのこだわりを持つ人間にとって、ひとつの道具が長い時間をかけて「育っていく」感覚は、立派な豊かさの一形態だ。使い込むほど手に馴染む万年筆、キャンプで何度も火を入れてきた鉄のスキレット、父親から受け継いだ腕時計。それらは単なる所有物ではなく、自分の時間と記憶が刻まれた存在になっていく。

CMが描く「まだ見ぬ心の豊かさ」は、新しい体験や出会いだけを指しているわけではないだろう。すでに手元にある、長年大切にしてきたものの中にも、まだ気づいていない豊かさが眠っているのかもしれない。

■「続き」が楽しみなCMシリーズ

今回放映の『船出篇』はあくまでもシリーズの出発点だ。続編となるCMは2026年夏頃から放映予定で、探検家がさまざまな「心の豊かさを持つ人々」と出会っていく展開が描かれるという。

「この世にはきっと、まだ見ぬ心の豊かさが、たくさんある」というナレーションが、シリーズ全体のテーマを貫く。どんな人物と、どんな豊かさに出会うのか——続編が気になる仕掛けになっている。

忙しい日々の中でふと立ち止まり、「自分にとっての豊かさって何だろう」と問い直す機会は、思いのほか少ない。このCMはそのきっかけを、説教がましくなく、静かに手渡してくれる。

手元の「お気に入り」を久々に取り出して、その質感を確かめてみたくなった人がいたとしたら、それがモノ好きにとっての「心の豊かさ」の答えのひとつかもしれない。

【CM概要】
タイトル:「キャプテン・モットの冒険」
船出篇キャスト:探検家役 柳楽優弥
放映開始:2026年4月2日(木)~(30秒版・15秒版あり)

>>『キャプテン・モットの冒険』特設サイト

YouTube :
「キャプテン・モットの冒険」船出篇15秒 
「キャプテン・モットの冒険」船出篇30秒 
柳楽優弥さんインタビュー動画①
柳楽優弥さんインタビュー動画②

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