【日産 リーフ試乗】未来のクルマの姿を実感!航続距離が伸びて実用性もアップ

■気になる航続距離はカタログ値の7掛けくらい

床下に搭載されるリチウムイオンバッテリーの容量は、従来の30kWhから40kWhにアップし、カタログ上の航続距離は280kmから400kmに延びました。それも、単にバッテリー搭載量を増やしたのではなく、内部構造も見直し、高効率化を押し進めた結果です。積まれるバッテリーのサイズ自体は変わらないといいますから、日産の技術陣、がんばりましたね!

価格は、ベーシックな「S」が315万360円。シート地がトリコットから織物(バイオPET)になり、本革巻きステアリングホイール(ステアリングヒーター付き)がおごられ、何より、ヒートポンプシステム(省電力暖房システム)が備わる「X」が351万3240円。さらに、LEDヘッドランプ、17インチアルミホイール、“プロパイロット パーキング”こと自動駐車システムを装備する「G」が399万600円。先代と比較すると、性能は上がった一方、価格は逆に下がっています。さらにリーフは、国や自治体からの補助金を受けられるエコカー減税の対象でもありますから、実際の購入時には、ザッと50万円ほどがメーカー希望小売価格から割引される、と考えられます。

さて、今回の試乗車は、最上級グレードのG。サンライトイエローのボディカラーに、ルーフがスーパーブラックにペイントされたツートーン仕様で、ちょっと洒落てます。エクステリアからは「EVならではの先進性!」…は、あまり感じられませんが、数売る大衆EVを目指している以上、かえって“飛んだ”デザインは採用しにくかったのでしょう。

運転席に座って、パワーオンのボタンを押し、メーターナセル内の“アドバンスドドライブアシストディスプレイ”で、充電状態を確認します。100%。表示される航続距離は、ECOモードで275km。Sモードで259km。

「アレッ!? 新型リーフの航続距離は400kmじゃないの?」と思ったのですが、この数値は、それまでの運転状況を考慮に入れた、実用燃費ならぬ実用電費から算出される数字なのだとか。ハードは走りを繰り返していると、電費の悪い数値で計算しますから、満充電時の航続距離も延びない、というわけです。ガソリン車の場合、カタログ燃費の「だいたい7掛け」が実用燃費に相当するといわれますが、電気自動車の航続距離も、その例に漏れないようです。

EVの特長である「スムーズな走り」「乗り心地のよさ」「操作の簡便性」などは、それこそクルマの動力源として、内燃機関と電気モーター、そして蒸気機関(!)が争っていたモータリゼーション黎明期からうたわれていたことで、同時に、限られた航続距離、バッテリーの劣化といった課題も、そのまま21世紀に持ち越されています。

試乗当日は、横浜にある日産のグローバル本社から、東京・お台場までの移動を中心に、48.4kmを走りました。その結果、バッテリー残量は75%。航続可能距離は、ECOモードで207km。Sモードで195kmとなりました。

たった1回の、それも短い距離を走っただけの経験で断言するのははばかられますが、バッテリー残量が減ってきた時の心理的な不安や、場合よっては、急速充電器がある場所まで残電力を使って移動しければならないことを考えると、新型リーフで心置きなく走れる距離というのは、200kmがひとつの目安になりましょう。

日本全国には、7108基の急速充電器と、2万727基の普通充電器が整備されているといいます(2017年3月末現在)。ガソリンスタンドの約3万箇所に迫る勢いですね! 新型リーフの場合、40分で80%の充電が可能です。

それでも、出先で充電するのは、思いのほか面倒なもの。急速充電器の設置場所を考慮してルートを検討し、道路の混み具合によっては、充電待ちのために思わぬ時間に食事やお茶を強要され、ひどい場合には、充電スポットに先客がいてさらに待たされる…なんてことも起こりかねません。

一方、何も考えずに、つまり途中で充電する必要なしに片道100kmを走れるとなると、東京を起点とするならば、箱根の温泉へ行ったり、甲府でぶどう狩りをしたり、はたまた宇都宮で餃子食べ歩いたり、なんてこともできるはず(月並みなプランですが)。通勤や決まったルートの営業まわり、日常使い、そして日帰りドライブなどに限っては、実用EVとして、2代目リーフの活躍の場はますます広がりそうです。

もうひとつの懸念材料、バッテリーの劣化については、現時点では確定的なことはいえません。日産としては「8年または走行距離16万km」までは、バッテリー容量を保証する、としています。

このように、ピュアEVモデルでは、どうしてもバッテリーと航続距離のハナシが先行しがちですが、実は日産リーフは、運転が楽しいクルマでもあります。重厚な乗り心地とは裏腹に、ハンドリングは存外シャープで、ステアリング操作に対する反応も機敏です。

85kWの定格出力を持つ電気モーターは、最高出力150馬力と最大トルク32.6kg-mを発生。1580kgの車重を、3.2リッターV6級の駆動力で引っ張ります。しかも、アクセルペダルを踏んだとたん、瞬時に最大トルクが引き出されるので、リーフの加速は痛快そのもの。

その上、新しいリーフでは、アクセルペダルだけで加減速をコントロールできる“e-ペダル”が採用されました。アクセルペダルを踏むと(当然ながら)加速し、ペダルを戻すと、回生ブレーキと油圧ブレーキを組み合わせたストッピングパワーが発生し、リーフを減速させます。減速の度合いは、一般的なブレーキングと同等(最大トルク0.2G)にセットされています。

急減速の際には、やはりブレーキペダルを踏む必要がありますが、穏やかにドライブしている限り、リーフの運転はアクセルペダルだけで用が済みます。e-ペダルは減速時のエネルギーを電気に変換し、回収する回生機能を強めていくと、あたかも強いエンジンブレーキが掛かったかのようになる特性を逆手に取ったもの。「不自然に感じられる」というネガをポジティブに捉えて、ペダル操作を定義し直した機能といえます。

ペダルを戻すとブレーキがかかるのだから「安全性が増した」と捉えるか、「運転の基本操作を複雑化(複数化)させるべきではない」と考えるか、議論が分かれるところです。個人的には「チャレンジングで面白い」と感じましたが、どこまで普及するのか。興味が尽きません。

そのほか、リーフの先進性をアピールする機能として、“プロパイロット”とプロパイロット パーキングが挙げられます。プロパイロットは、ミニバンの「セレナ」に先行して搭載され話題となった運転支援システム。高速道路や自動車専用道路では、単眼カメラが前方を監視し、アクセル、ブレーキ、そしてステアリング操作を自動で行ってくれます。といっても“自動運転”ではなく、あくまで“運転支援”の範囲ですので、運転者は注意を怠れません。

実際に試してみると…、前走車との車間距離保持はともかく、リーフの(自動)ステアリング操作には、あまり感心できませんでした。高速道路のジャンクションなどちょっと急なカーブに近づくと、若干の不安が生じます。プロパイロットの運転の仕方は、カーブの手前ギリギリ付近まで頑張り、いきなりガバッ! とハンドルを切るタイプ。うーむ…。

その点、例えばアウディ「A4」に搭載された類似機能では、運転の上手さに驚いた記憶があります。もしかしたらリーフのそれは、ドライバーがクルマに依存し過ぎないよう「あえて下手に設定した」…のかもしれません!? 繰り返しになりますが、安全運転の責任は、ドライバーの双肩にかかっているのです。

一方、プロパイロット パーキングは、プロパイロットに、自車の姿をあたかも真上から見下ろしているかのようにディスプレイに表示する“アラウンドビューモニター”を組み合わせた機能。ディスプレイで駐車スペース(枠)を指定し、シフトレバーの斜め前に設けられたボタンを押し続けると、前進、後退、ハンドル操作まで自動で行って、きっちり枠内に駐車してくれます。クルマの動作は慎重で、中には「これなら自分でやった方が早い!」と思ってしまう運転達者の人がいるかもしれませんが、そうした不満は、新しい技術が実用化された時の常。今後のさらなる進化に期待しましょう。

ちなみに、プロパイロット パーキングは、後ろ向き駐車、縦列駐車のほかに、フロントノーズに充電ケーブルを挿すEVらしく、前向き駐車も選択可能です。何はともあれ、目の前でハンドルがクルクルと勝手に(!?)回っている様子は、なかなかエンターテインメントで、リーフに乗るのが初めてという同乗者がいるなら、「この瞬間が“未来”だね!」と自慢することができます。もし、私が新型リーフのオーナーになったのなら、必ず自慢します!

ピュアEVの可能性を広げ、実用性がアップした日産リーフ。自宅に充電器を設置できるご家庭の方は、一度、検討してみてはいかがでしょうか?

<SPECIFICATIONS>
☆G
ボディサイズ:L4480×W1790×H1540mm
車重:1520kg
駆動方式:FF
最高出力:150馬力/3283〜9795回転
最大トルク:32.6kg-m/0〜3283回転
価格:399万600円

(文&写真/ダン・アオキ)


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