【マツダ CX-8試乗】「3列シート車でSUV」の新選択。プレミアムな走りは想像を超えた

■CX-8の3列目席は、プレミアムにふさわしい静粛性と乗り心地

フロントフェンダーからリアへと流れる抑揚の効いたライン、シルバーの加飾があしらわれたバータイプのフロントグリルなど、CX-8のエモーショナルで品格のあるフォルムは、ひと目見ただけでマツダのSUVと分かるたたずまい。一方、ディテールの処理と4900mmという全長を除くと、そのデザインは弟分に当たる「CX-5」に通じる方程式が活かされています。

このようなエクステリアから「CX-8はCX-5のストレッチ版なの?」と推測される方もいるのでは? でも、そうした回答を導き出すのはやや早計です。マツダは海外向けモデルとして、より大型の「CX-9」を用意しており、CX-8はCX-9の構造を元に、全幅などを縮小したモデル、というのが正解に近いと思います。

実際、2930mmというホイールベースはもちろん、プラットフォームや足まわりなども、CX-9をベースに最適化を図ったもの。決して、CX-5の設計にゆとりがないわけではありませんが、“プラス2名”分の荷重増加や、厳しさを増す安全面への対応を考えると、CX-9ベースの方がよりマージンを確保しやすかったのでしょう。

とはいえ、ドライバーズシートに収まると、メーターまわりや各操作系の配置など、眼前に広がる景色はCX-5と“ほぼ”共通。しかし、センターコンソール周辺の形状や、ダッシュボードにあしらわれる本木目パネル、そして、シートの感触などはCX-5とは異なり、フラッグシップSUVふさわしい質感やデザインへと改められています。この辺りの巧みさには「マツダやるなぁ…」と思わず“ニヤリ”としてしまいます。

そして、こうしたマツダの巧みさと“ニヤリ”は、走り出してからも続きます。

キーを受け取ったのは、最上位グレード「XD Lパッケージ」の4WDモデル。CX-8のエンジンは、2.2リッターディーゼルターボ“スカイアクティブ-D”のみの設定で、最高出力はCX-5に比べて15馬力アップの、190馬力となっています。一方、車両重量は約200kgほど増えているので、動力性能としてはCX-5とほぼ同等では? と想像していました。

しかし、エンジンを始動させて100mも進むと、その違いに再び“ニヤリ”としたのです。まず驚いたのは、その静粛性の高さ。“超高応答マルチホールピエゾインジェクター”や“新形状ピストン”、そして“急速多段燃焼”など、細部にわたる改良が図られたスカイアクティブ-Dは、出力の向上だけでなく、その滑らかさや、音量・音質においても、従来型を上回る完成度を感じさせてくれたのです。

ストップ&ゴーを繰り返す市街地を進むと、その上質な感触がさらに際立ちます。特に、しっとりとしていて息の長い加速感は、「スムーズ」としか表現できない筆者の語彙力のなさが申し訳なく感じるほど。ディーゼルの場合、最新エンジンであっても、滑らかという表現を使うことに躊躇する場合がありますが、粒感の細かいサウンドも含め、新しい2.2リッターのスカイアクティブ-Dは、迷うことなく滑らかといえるレベルに達しています。

この好印象は、高速道路にシーンを移しても変わりません。静粛性は高級ミニバンをはるかに凌駕するほど。特に、車体後方からの雑音がしっかりシャットアウトされており、フロントシートとサードシート間での会話も、声量を上げることなく楽におしゃべりできます。また、100km/h巡航時のエンジン回転数は2000回転弱といったところですが、80km/h程度から追い越しなどで100km/h前後まで加速しても、音量や音圧の変化をキャビン内で感じることはありませんでした。

乗り心地についても、プレミアムと呼ぶにふさわしい上質さを実現。高速道路の舗装の繫ぎ目などを通過しても、車内ではかすかに「トン」という音が聞こえる程度で、わだちなど大きなうねりを通過しても、車体が左右に揺すられることもありません。また、コーナーなどでボディがロールした直後も、不快な揺り返しがなく、極めて自然にスッと姿勢が戻ります。

しかも、この落ち着きある乗り心地が、フロントシートはもちろん、セカンドシートでもサードシートでも変わらない、というのが、CX-8の特筆すべき点。特に、リアタイヤよりも後方に配置されるサードシートの乗り心地といえば、一般的に、小刻みかつ上下に揺すられる印象がありますが、CX-8ではそうした不快さを感じることはありません。CX-8のサードシートは、身長170cmの乗員を想定して設計されたもので、スペースだけを見ればミニバンのそれには適いませんが、着座姿勢や乗り心地においては、ミニバンよりも十分なアドバンテージがある、といえるものでした。

SUVとミニバンのいいとこ取りをした、3列シート車としてはもはや突っ込みどころのないCX-8ですが、あえて重箱の隅を突くならば、2WD(FF)モデルと4WDモデルとでは、若干乗り味に違いがあったのが気になりました。

具体的には、4WDモデルの方がしっとり感や重厚さがより濃密、濃厚でした。「降雪地に出掛けることは少ないし、ミニバン代わりとして使うので4WDは不要」という人もいるかと思いますが、現時点においてCX-8の“上質さ”を余すところなく味わいたいなら、上位グレードの4WDモデルの方がベターだと思います。

ともあれ、SUVやミニバンを検討中ならば、ぜひ一度、CX-8をドライブしてみることをお勧めします。もちろんその際は、サードシートのチェックをお忘れなく。

<SPECIFICATIONS>
☆XD Lパッケージ(4WD)
ボディサイズ:L4900×W1840×H1730mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:2188cc 直列4気筒 ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:190馬力/4500回転
最大トルク:45.9kg-m/2000回転
価格:419万400円

(文&写真/村田尚之)


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