【ベンツ S450試乗】待望の復活!衰退していた直6エンジンが現代に復活した理由とは?

■ベンツはPHEV以外はハイブリッドと呼ばない!?

早速、S450に試乗してみると、M256エンジン+ISG、それに、9速AT(!)を組み合わせたパワーパックの高い完成度に舌を巻きます。モーターの加勢、過給器の引き継ぎ、はたまた、回生ブレーキの作動など、いずれもスムーズ至極。いささか感覚の鈍いドライバー(←ワタシのことです)には“ひとつの大排気量エンジン”としか思えません。

実はこの日「S560 4マチック ロング」とS450を比較試乗することができました。前者は、4リッターのV8ツインターボ(469馬力/84.6kg-m)、後者は新型ストレート6(367馬力/51.0kg-m<いずれも欧州参考値。ISGのアウトプットを含まない>)を積みます。

S560 4マチック ロング

S560 4マチック ロング

もちろん、クルマのキャラクターは若干異なりますが、普通に街中、高速道路をドライブする限り、走りの力強さ、パワーユニットの滑らかさでは甲乙つけがたい。M256エンジン+ISGの、シームレスな作動も驚きでしたが、その絶対的な動力性能にもビックリ!

テストコースでアクセルをベタ踏みし、フラットアウトで全力加速を試みると、軽くホイールスピンを披露して、血の気が引くようなすさまじい加速が始まります。新しいS450は、静止状態から100km/hまで、わずか5.6秒で加速していくのです!!

いうまもでなく、S450はドライブモードを備え、デフォルトで「コンフォート」が設定されます。コンフォートといえども、十二分に速い。強大なアウトプットを持て余さないためか、「エコ」とコンフォートとでは、懐かしの(!?)2速発進が採用されています。

試しに、1速発進となる「スポーツ」モードで運転してみると、エンジンの出力特性やシフトタイミングがスポーティに変更され、時に暴力的なまでの活発さが弾けます。正直、5分も経たないうちに「おなかいっぱい」。見かけも装備もダンナ仕様ながら、実は底知れぬパワーを秘めている。そんなSクラスの伝統を、新型S450もしっかりと受け継いでおりました。

もちろん、本業たる(!?)エコ走行も得意で、通常はアクセルペダルに軽く足を載せているだけで、十分な動力性能が提供されます。多段ATの恩恵もあって、アッという間にギヤがバトンタッチされ、街中でエンジン回転数が2000回転を超えることは、まれ。100km/h巡航時のエンジン回転数は、ほんの1250回転前後で、新型ストレート6は粛々と仕事を続けます。エコモードでは、条件に応じて燃料の噴射を止める機能も備わります。気になる燃費は、参考値ながら、12.5km/L(JC08モード)と発表されています(従来のV6モデルは、10.5km/Lです)。

ところで、これまで一般的な呼び方に従って、M256エンジン+ISGの組み合わせを“ハイブリッド”と記述していましたが、メルセデス・ベンツでは、外から給電する機能を持つPHEV(プラグイン・ハイブリッド)タイプのみを、ハイブリッドと称する決まりになっているのだとか。

そんな中、メルセデス・ベンツ日本のスタッフの人から、ちょっと面白い話を聞きました。「日本市場では、ハイブリッドのバッヂが付いていないと、売りにくいのでは?」との質問に「そうでもない」とのお答え。相対的に庶民派モデルの「Aクラス」や「Bクラス」でも、お客さまから「ハイブリッドはないのか?」と尋ねられることはほとんどないそうです。

むしろ「Sクラスの販売現場では、そう聞かれることがある」とのこと。いうまでもなく、カンパニーカー需要ですね。企業イメージを考えると、使用するクルマに、ハイブリッドのバッヂが欲しい。Sクラスの立ち位置が感じられるエピソードです。

メルセデス・ベンツが安易にハイブリッドと付けたがらない理由として、トヨタのそれとの差別化があると思います。昔のことをほじくりかえすと、初代プリウスが登場した際、メルセデス・ベンツを始めとする欧州車メーカーは、どこか冷笑的でしたからね。高速移動が多い彼の国々の人々にとって、高速巡航時には荷物にしかならないシステムを採用するのは、実情に合わないと考えたのでしょう。

当時は、水素を使った燃料電池車が、今にも実用化しそうな世相でした。プリウスと前後するようにデビューした初代Aクラスの二重フロアは、「水素タンクを収納するため」とウワサされたほどです。また、ディーゼルエンジンの進歩も劇的で、次世代パワーユニットが普及するまでの“つなぎ”として、確実視されていました。

あれから約20年。パワーソースの革新はなかなか進まず、今やクルマの存在そのものが岐路に立っています。そのため、業界の盟主たるメルセデス・ベンツは、電気自動車、PHEV、燃料電池車、ディーゼル車、そしてガソリンエンジン車と、全方位的な取り組みを進めおり、新しいS450も、そうした努力の一環なのです。無責任な外野としては、従来型エンジンのメカニズムを突き詰めた“複雑怪奇なパワーユニット”にして、「そもそもの開発のベクトルが合っているのか?」と一抹の不安を感じないでもありませんが、そうした“やりすぎ感”もまた、いかにもドイツ車ブランドの“作品”らしい。フラッグシップモデルに使われるのにふさわしい、渾身のパワーユニットです。

価格は、S450が1147万円から。19インチホイールを履き、上質なナッパレザー内装、13スピーカーのオーディオシステムなど、さらなる豪華装備が追加されたたS450エクスクルーシブが1363万円から。ボディを130mm延長したS450ロングが1473万円からとなります。

<SPECIFICATION>
☆S450(欧州仕様参考値)
ボディサイズ:L5125×W1899×H1493mm
車重:--kg
駆動方式:FR
エンジン:2999cc 直列6気筒 DOHC ターボ+電動スーパーチャージャー
トランスミッション:9AT
最高出力:367馬力/5500〜6100回転
最大トルク:51.0kg-m/1600〜4000回転
価格:1147万円

(文&写真/ダン・アオキ)


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