【日産 リーフe+試乗】1充電で458kmも走れる!EV選びの悩みを解消する本命が登場

■バッテリー容量アップで充電時間も大幅短縮

リーフe+の最大のポイントは、従来モデル(40kWh)に対し、62kWh と55%も容量が拡大された新型バッテリーの搭載だ。

大容量バッテリーの何よりのメリットは、航続距離の延長。従来モデルは、カタログ上のJC08モードで400km、より実際の走行環境に近いWLTCモードで322kmというのが、1充電当たりの走行可能距離だった。それがリーフe+では、それぞれ570km/458kmへと延びている。458kmという距離は、一般的なユーザーが年に1度か2度経験するであろうロングドライブにおいても、問題なくカバーできる距離であり、各所の急速充電器を活用すれば、さらなる遠距離移動も現実のものとなる。つまりリーフe+は、航続距離に不安があるとしてEVを敬遠していた人に対しても、次世代パワーユニットという選択肢を提供してくれるのだ。

しかも、新しいバッテリーの採用で、急速充電時の充電効率もアップした。EVに広く使われるリチウムイオンバッテリーは、全容量のうち、充電されていない割合=これから電流を受け入れられる比率が多ければ多いほど、(規定された範囲内で)急速充電時に大電流を受け入れられるという特性を持つ。つまり、満充電状態に近づくほど、充電スピードが落ちてしまうのだ。その点、大容量バッテリーを採用するリーフe+は、例えば、残量50%からの急速充電において、従来タイプに比べて30分間で充電できる電力量が40%も増えている。

また、新しいバッテリーは充電時に流せる電流が大きいため、高出力タイプの急速充電器に対応。バッテリー残量の警告灯が点灯してから容量80%まで急速充電する際の所要時間(70kW高出力タイプ使用時)は、従来タイプ(50kW充電器対応)が60分かかるのに対し、50分へと短縮している点も見逃せない。

ちなみに、普通充電においても、リーフe+は6kWタイプに標準対応。バッテリー残量警告灯が点灯してからの充電時間は、3kW充電器の場合24.5時間もかかるのに対し、6kW充電器では12.5時間で済む。このように航続距離の延長だけでなく、日常の利便性が高まった点も、リーフe+の進化といえるだろう。

■3.5リッターガソリンエンジン級の力強い加速

利便性の改善だけにとどまらず、リーフe+は走行性能も向上している。

モーターの最高出力は、従来モデル比45%アップの218馬力で、最大トルクは同6%アップの34.7kgf-mを発生する。34.7kgf-mといえば、3.5リッターの自然吸気ガソリンエンジンに相当する値であり、それだけでも加速の力強さが推測できる。

実際、サーキットで試乗してみたところ、コーナーを抜けた後の直線でアクセルペダルを全開にすると、すぐにホイールスピンを起こしてスタビリティコントロールが作動するほどのトルクフルな走りに驚いた。しかも、音や振動がなく、スーッと滑らかにスピードが伸びていく様はエンジン車とは異質で、ドライブフィールも爽快で心地良い。

従来モデルの場合、発進から50km/hまで加速したところで最大加速度が頭打ちとなり、その先は加速が鈍ったが、リーフe+では加速の伸びが70km/hくらいまでキープされる印象。例えば、流れの速いバイパスや高速道路の本線に合流する際などに、そのメリットを余すところなく実感できるだろう。また、80km/hから120km/hに加速する場合、リーフe+は従来モデルに対して13%も速くなっているというから、もし乗り比べる機会があれば、その違いを体感できるはずだ。

ちなみに、新設計されたバッテリーケースの採用で、リーフe+は車体剛性が従来モデルに比べて8%アップ。さらに、厚みの増したバッテリーを床下に搭載しつつ、最低地上高を確保するために、車高が5mmアップしているものの、逆に重心高は10mmダウンしている。実際、コーナリング時の安定感が高いことに驚いたが、重心高が10mm下がっていると聞いて納得した。

なお日産自動車によると、旋回中の車体の横方向の傾き=ロール角も、5%ほど小さくなっているという。

■選ぶ楽しみをプラスしたシリーズの真打ち

そんなリーフe+だが、しっかりツボを押さえた改良だなと感心させられたのは、バッテリーを大型化しつつも、日常の使い勝手を犠牲にしていないことだった。居住スペース、ラゲッジスペースともに、従来モデルから変更がなかったのは朗報である。ただし、バッテリーの車体下側への張り出し量が大きくなったため、最低地上高は15mm低くなっている。一般的には気にする数値ではないだろうが、例えば、車庫へのアプローチなど、自宅周辺の道路に大きな段差があるという人は、確認しておいた方がいいかもしれない。

ところで、リーフe+は中身が大幅にグレードアップした一方、見た目の変化は最低限に留められている。車高が5mm上がったことと、フロントバンパー下にブルーのスポイラーが追加された程度だ。そのほか、充電口のリッドを開けた際、“e+”のロゴが目に飛び込んでくるが、これはオーナーだけが見ることのできる“隠れオシャレ”的な差別化ポイントといえよう。

航続距離が伸び、充電効率が高まり、走行性能もアップしたリーフe+。改良ポイントを並べてみれば、それこそ“EVを買わない理由”はかなり解消されたといえる。そんな中、あえてウイークポイントを挙げるとすれば、それはバッテリー容量40kWhの従来モデルに対し、約50~70万円高い価格設定だろう。

もちろん、40kWhのバッテリーを積む従来モデルも引き続きラインナップされるので、クルマの使い方や懐事情に合わせ、クルマ選びならぬ“リーフ選び”をすればいいだけの話。つまり、新しいリーフe+は、リーフの性能を底上げしただけでなく、シリーズのバリエーションを広げ、より幅広いニーズに応えられるようにしたモデルなのである。

<SPECIFICATIONS>
☆e+ G
ボディサイズ:L4480×W1790×H1545mm
車重:1680kg
駆動方式:FF
最高出力:218馬力/4600〜5800回転
最大トルク:34.7kgf-m/500〜4000回転
価格:472万9320円

(文&写真/工藤貴宏)


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